2011-05-04 ニュースUP:京都会館「オペラ上演」改修計画=京都支局・野宮珠里-「毎日新聞」
ニュースUP:京都会館「オペラ上演」改修計画=京都支局・野宮珠里
◇名建築、個性殺すな


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 <おおさか発・プラスアルファ>
 ◇名建築、個性殺すな
 公共文化ホールの先駆けで、京都市左京区の岡崎地域に1960年に開館した京都会館の改修計画が波紋を呼んでいる。市が約90億円を投じ、「世界水準のオペラ」上演を目指す方針を明らかにしたからだ。市はこの「昭和の名建築」の大改修も辞さない構えだが、もっと建物の個性を生かした未来像を描くべきではないだろうか。
 ■90億円を投じ
 「岡崎地域を舞台芸術の本場とし、京都会館で世界水準のオペラを上演する」
 構想の始まりは突然だった。昨年12月13日に開かれた京都市の岡崎地域活性化ビジョン検討委員会で、市が提出したビジョン案の中間まとめ案にこんな文言が盛り込まれていたのだ。委員を務める伝統文化プロデューサーら有識者の間には、ちょっとした戸惑いが広がった。
 「オペラと聞くと文化的なイメージがあり、一瞬惑わされるが、私たちの暮らしとどれだけ密接に関連したものか疑問。考えを深めるべきだ」。委員からは厳しい意見が出された。地元の京都オペラ協会も「こんなに大きなホールは使わないだろう」と首をかしげる。これに対し、市は「会館の機能を最大限に向上させる分かりやすい例としての表現。オペラというものを一番高い目標として書かせていただいている」と理解を求めた。
 誰もが疑問を持つ大きな理由がもう一つある。JRで京都からわずか10分の大津市に滋賀県立芸術劇場「びわ湖ホール」があるからだ。約245億円の巨費を投じて98年に開館した西日本のオペラの殿堂として知られる。外観も何となくシドニーのオペラハウスを思わせる。そのびわ湖ホールですら、大ホール(1848席)でのオペラ上演は年間5回程度。ただでさえ少ないパイを、京都市はお隣の大津と取り合う覚悟なのだろうか。

 ■「びわ湖」と競合
 取材で「びわ湖のような劇場を造るのか」と尋ねると、平竹耕三・市文化芸術都市推進室長(当時)は「そういう考えは全然ない。『オペラ』は一番ハードルの高い施設を示す象徴だ」との説明を繰り返した。「90億円」という費用はここで飛び出した。思わず「この不景気なご時世に」と問うと、平竹室長も「そう言われるのが一番つらい」と少しトーンダウンさせ、「国の制度や民間の協賛を追求して税金での負担を減らすようにしたい」と話した。
 そんな京都市が2月、「なるほど」とため息が出るような発表をした。半導体メーカーの「ローム」(本社・京都市)が京都会館のネーミングライツ(命名権)を市から52億5000万円で買い取るという。期間は50年。公募なしの異例の契約だった。費用は改修の一部に充てる見通しだ。門川大作市長は「オペラ上演も可能な施設に改修したい」と言及した。
 ロームの佐藤研一郎名誉会長は若い頃にピアニストを目指し、若手音楽家の支援に力を注いでいることで知られる。91年に設立したロームミュージックファンデーションの事業費は年々増え、10年度は10億円を超える予定。この他、会社本体も多数の音楽事業に協賛し、「ロームが手を引けばクラシック業界がつぶれる」と言われるほどだ。
 そのロームは「小澤征爾音楽塾」のオペラ・プロジェクトも支援。現在はびわ湖ホールでも公演しているが、「京都会館がリニューアルすれば、びわ湖から京都へ移るのは確実」と見る関係者も少なくない。「世界水準のオペラ」とはこのプロジェクトのことでは、と勘ぐりたくもなる。

 ■地域と一体の価値
 第1ホールのステージ拡張や舞台機能向上のため設ける高さ30メートル超の「フライタワー」など、改修の基本計画は近く発表される予定。岡崎地域は15メートルの高さ制限があるが、市は都市計画の変更も視野に入れており、会館の構造は大きく変わるかもしれない。
 かつての京都会館再整備検討委のメンバーの一人で、京都会館の保存を訴えてきた京都工芸繊維大教授の松隈洋さん(近代建築史、建築設計論)は「経過が不透明」と批判。「岡崎地域の景観をいじって、高密度化・高度利用の方向へアクセルを踏み込むか否かの分水嶺(ぶんすいれい)となる」と警鐘を鳴らす。
 会館の現状を知ろうと、2月、歌手のイルカさんのコンサートへ行った。階段の木の手すりに大きなひびが入り、カラフルな壁画もあちこち欠けている。メンテナンスの悪さが気になったが、シンプルな演出は舞台の狭さを感じさせなかった。音楽大学で声楽を学んだ立場から見ても、反響板の工夫などで音響は改善できると感じた。
 市の内部資料によると、耐震性強化やバリアフリー化など最低限の改修で外観を維持するなら48億円で済む。年数回のオペラ上演のために大金を投じるより、東山の眺望が素晴らしい屋上や中庭など、京都会館にしかない個性を生かした活用を考えることが、伝統を重んじる京都にはふさわしい気がする。

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 ◇京都会館と岡崎地域
 京都会館は、戦後復興の象徴として市民の強い要望で1960年に開館した複合施設。日本の近代建築のパイオニア、前川國男(1905~86)が設計した。2015席の第1ホール、939席の第2ホール、大小の会議室を備えた会議棟からなる。近代性と歴史性が両立し、周囲の景観と調和した優れた建築として60年度に日本建築学会賞(作品賞)を受賞。今回の改修計画に対し、日本建築学会などが保存要望書を提出している。
 会館がある岡崎地域は1895年、平安遷都1100年記念事業として内国勧業博覧会が行われた場所。平安神宮や美術館などの近代建築群が琵琶湖疏水や東山の自然と溶け合って独特の景観を生み、国土交通省の「都市景観100選」にも選ばれている。

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毎日新聞 2011年5月4日 大阪朝刊


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by 2011-kyoto | 2011-05-04 00:00 | 2011/05
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