2011-06-03 京都会館改修 やり直しきく保存再生を-石田潤一郎-「京都新聞」
私論公論 京都会館改修 やり直しきく保存再生を 石田潤一郎

 その際、心に刻んでおきたいことがある。それは過去、つまり文化財的価値と、現在、つまり機能上の要求との単純な差し引きだけを考えてはいけないということだ。 

 まず、ある時点の「現代的要請」というのが必ずしも絶対的な要求ではないということである。長崎のグラバー園を訪れた人は多いと思うが、異人館をめぐっていくエスカレータによってかなりの観光客がすっかり気分をそがれたのではないだろうか。
 
 もう一点は、要求に対応する方法は着実に進歩するということである。端的な例が構造補強の技法だ。れんが造り建築の耐震性能を向上させようとするとき、1970年代には、鉄筋コンクリートの壁で裏打ちをするという方法が主流だった。
 まちがいなく堅牢になるが、室内側の当初のデザインは完全に消滅してしまう。インテリアを傷めない技法が次々と開発されている今日から見ると、初期の補強事例はいかにも惜しい。
 こうしたことから、文化財修復では「可逆性」という概念が強調されるようになっている。つまり、改造部分を元に戻そうと思ったら戻せるような方法をとるべきだというのである。 

 こうしたことを踏まえて、今、議論されている京都会館の改修について考えてみよう。京都会館が戦後建築のなかでも傑出した作品であり、やがては重要文化財に指定され得る存在であることを疑う人は建築の世界ではほとんどいない。
 したがって、その改修は現代の要請ありきではなく、その要請が変わったときには、改修以前に戻すという展開も十分視野に入れておく必要があるはずである。柔らかい保存の次は柔らかい再生に目を向けるべきなのだ。


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■2011-06-03 京都会館改修 やり直しきく保存再生を-石田潤一郎-「京都新聞」 
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by 2011-kyoto | 2011-06-03 00:00 | 2011/06
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