人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2011-02-20 京都会館の改修・改築~「再整備」にいくらかかるか~その3-「sayseiの京都日記」
京都会館の改修・改築~「再整備」にいくらかかるか~その3

(その2からの続きです)

 きょう挙げたのは、単に私の否定するオペラ、バレエ用の「重装備」、つまり舞台機構・設備関係だけの初期投資とメンテナンス費用だけです。日経新聞は「100億円」と書いていましたが、この想定では「国内最大級のオペラ劇場」への改築も改修も不可能ですから、明らかに舞台周りの機構や諸設備の改修・増設、あるいは多少の客席いじり程度にしか間に合いません。

 それでも、その100億で間に合うと思ったら大間違いで、それは単に改修時の初期投資だけであって、そんな重装備をすれば、その後毎年ずっと、その維持管理のためだけに、何億円もの人件費やメンテナンス費用が必要になるのです。つまり毎年何億円もの税金を私たち市民が、へたをすればこの会館の、年に2回だか3回だか使われるかどうかも分からないような重装備のためだけに、子供、孫の代まで上乗せされて支払い続けなければならなくなる、ということです。

 何が何でも作りたい人たちは、こういう不都合な情報は隠したがるものです。「いや隠してないよ。まだはっきり幾らと言えないから、不正確な情報を公開してないだけです」なんて言い訳が通用すると考えられる世界なんでしょうかね、行政というのは。

 100億円の建設費という日経新聞の記事やその後これをフォローするような色々な報道の断片をみていると、そのうちの50億円を半導体大手のロームという会社が実質的に出すような記事が幾つか見当たりました。

 正確に言うと、文化会館の命名権(ネーミングライツ)を、50年契約で、ロームが52億5千万円で買う。市はこの命名権売却で得た資金を施設の改修費の一部にあてる、ということです。

 京都会館が老朽化して、建築的にみて改修が不可避である、とフェアな専門家集団が判断するのであれば、私はその改修に決して反対ではありません。そして、その費用を命名権の買い取りという名目であれ何であれ、実質的に民間の篤志的な企業が負担してくれることは本当に市民のためにありがたいことだと思います。

 けれども、ここで手放しで喜んでもいられないのは、かりに経費の半分がそれによって負担されても、のこる50億円はやはり税金でまかなわれるのですから、それがどのような「改修」のために使われるのかを明確にすべきなのに、いま市が提示しているリーフレット京都会館再整備検討委員会の「意見書」でも、矛盾する要素がそのままになっていて方向付けが明確でなく、さらにそれぞれの方向性についていくらの費用がかかるのか、つまり市民の税金をいくら使うのか、その金額さえ提示されていない、という点は何も変わっていないこと、さらに、初期建設投資が50億であれ100億であれ、それは改修時に必要なコスト、というだけであって、その後その施設、設備のために毎年何億の支出が、つまり市民の税金が必要なのか、ということが、少しも提示されていないことが一番問題です。

 つまり、100億とか50億という建設費だけでも、「えっ、そんなに税金を使うの?もっとほかに切実な使い道があるはずでしょう!」と驚く方もあれば、「なんだ、たったそれくらいなら、長い将来の文化振興のために使えばいいじゃない」と思われる方もあるでしょう。でも、それはまだ問題の序の口なのです。

 その先に、年々、へたをすると子供、孫の代まで税金を垂れ流し続けなくてはならない、市民にとって「たったそれくらい」では済まない問題が横たわっています。つまり100億であれ50億であれ、それは「虎の尾」に過ぎないのです。これを気軽に踏めば、もっとずっと恐ろしい虎の本来が牙を剥いて市民の懐を襲うことになりかねないのです。

 本体の虎を隠して、尾だけ出してみせ、これを市民が誤って踏むのを待つなんて、京都市さん、これって詐欺商法に似ていませんか?私たち市民も、50億の美談でウハウハ喜んだり感心したりばかりはしていられないようです。

 時には「ただほど高いものはない」という陥穽にはまることだってあるかもしれません。ロームさんは50億出しても、計画の中身に口を出させるような愚かなまねは決してなさらないでしょうが、よく大口出資者の意向で、なんてことで、市民の利害を無視した恣意的な方向づけを正当化するようなことも行政にはありがちなので、今回はともかく、市民はこの種のことには十分に注意する必要があります。

 今回は重装備という過剰設備の問題に限って、初期投資とメンテナンス費用の問題に触れました。でもこれはまだ問題のほんの一端に過ぎません。もっと大きな問題はそういう会館全体の維持運営にどれくらいのコストがかかるのか、そして、会館の事業がそれに値するのか、という、市民にとってのコストパフォーマンスの問題です。

  これは稿をあらためて書くことにしましょう。

(了)


■京都会館の改修・改築~「再整備」にいくらかかるか~その3-「sayseiの京都日記」
■京都会館について-「sayseiの京都日記」

関連リンク
2011-09-26 京都会館・ローム命名権契約の実態-「京都市議・とがし豊/子育て市議奮戦記」
2011-09-13 門川市長記者会見(2011年9月13日)-「京都市情報館」
2011-02-24 門川市長記者会見(2011年2月7日)-「京都市情報館」
2011-02-16 平成23年度予算について-「京都市情報館」
2011-07-31 京都市政報告書-「京都市情報館」
2011-04-11 稼動率比較:公の施設の指定管理者による管理運営状況について-「京都市情報館」
2011-01-24 京都会館再整備に関する市民意見の募集について-「京都市情報館」
by 2011-kyoto | 2011-02-20 00:00 | 2011/02
<< 2011-02-21 【トップ... 2011-02-18 新・京都... >>