2011-02-25 京都会館再整備検討委員会の「意見書」について・その9-「saiseiの京都日記」
京都会館再整備検討委員会の「意見書」について・その9
(その8からの続き)

 「他の類似施設利用へと流れている」ことを意見書の文面では否定的なニュアンスで語っているようですが、これも奇妙に思われます。もともと規模の大きいホールが京都くらいの規模の都市に一つしかない時代には、諸機能が未分化な多目的ホールで様々な用途に対応せざるを得なかったのは時代的な制約であり、経済の発展や文化的なニーズの多様化、高度化によって、未分化であってものが分化し、専用ホール化の道をたどるのは当然のことであって、それで京都コンサートホールのようなクラシック音楽専用ホールが登場すれば、クラシック音楽のコンサートがそちらへ流れるのもまた当然の成り行きで、それはまったく京都会館のせいではないし、むしろ京都市全体としては肯定的にとらえるべき現象です。

 京都会館単独で考えれば、クラシック音楽コンサートでの利用件数が減って、利用が活発でなくなる、という点では運営上のマイナスととらえられるかもしれませんが、それを京都会館の施設・設備の不備と考えて京都コンサートホール並みの音響性能を備えるように頑張る、などということは全く無用のことです。残響1.5秒をオーケストラ公演などによいといわれる残響2秒にする、などということも、もちろん無用です。それに、神戸国際会館こくさいホールなどと比べても、京都会館の稼働率は立派なものです。

 クラシック音楽対応という意味の機能については、京都会館は先端的な役割を終えたのであって、これを京都市全体としては京都コンサートホールに譲ったのだと考えるべきで、残された空間や設備をではどう使えば、京都市全体の劇場・ホールの生態系の中で、京都会館は京都会館としての新しいニッチ(生態学的地位)を得られるか、と考えて、その用途をしっかり見定めて改修計画を練る、というのがあるべき展開であろうと思います。

 このほか、検討委員会の意見書の中で興味深かったのは、「京都会館を利用するプロモーターへのアンケート調査から」の、「その他、自由意見」で、「第一ホールの舞台の問題は、建替え規模の大改修でなければ解決不能だろう。仮に改修したとしても、びわ湖ホールの舞台機構に並ぶとは思えないので、ポピュラーに特化し、反響版を外し、その分バトンを増加させるなどしてはどうか。」という意見です。

 これは実際に京都会館もびわ湖ホールもよく使っているプロモーターらしいリアルな認識で、結局そういうところに落ち着くほかはなかろう、という落としどころを示唆しています。私も「建替え規模の大改修」などあり得ない、という前提のもとで、こういう落としどころをむしろ今後の京都会館のあり方としてポジティブに考えて、最小限の改修を有効に方向づけてほしいと願っています。

 高さ規制にも、風致地区条例にも、高さを抑制して設計されたという現行でさえ、すでに不適格という建物を、さらにフライズを高くとって、京都市のパブリックコメント公募のリーフレットにあるような「世界的に著名なオペラやバレエの劇団の巡回公演」などに対応する必要はさらさらありません。これ以上馬鹿高い建築物など風致地区に作らないでいただきたい。

 そもそも京都市のパブリックコメントを求める際のリーフレットに書かれた上記の文言はいったい、どこから出てきたのでしょう?

 有識者・専門家・市民公募委員などによる再整備検討委員会の意見書のどこにも、「世界的に著名なオペラやバレエの劇団の巡回公演」に対応する舞台機構や設備が必要だ、というようなことは書かれていません。また、委員会の議事摘録にも出てきません。いったい、誰がこんなことを言い、こんな記述を公的なリーフレットに残したのでしょう?

 或いは私たちの目に触れない委員会の議事録の中にはあったのでしょうか?私たちが少なくともウェブなどで簡単に見ることができるのは「摘録」だけなので、真実のところは分かりません。しかし、もし委員の発言の中にあって、パブリックコメントを求める際の土台となる提案に盛り込まれるほどに重要な発言として委員たちが同意したのであるなら、意見書にもその概要版にも当然この文言は含まれ、掲載されるべきです。ところがどこにもオペラだのバレエだのといった文言はありません。

 これは一体、だれの責任で、だれの意図をまぎれこませたものなのでしょう?ひょっとして市長さんや市の幹部の中に、「世界的に著名なオペラやバレエの劇団の巡回公演」に対応する施設・設備を備えた施設と、現在の京都会館の使用状況の延長上にポピュラー系音楽イベントなどを主体とする多用途ホールとしての最小限の機能を備えた施設との区別もつかないのに、欧米のオペラハウスなどに憧れて、京都会館の「再整備」でそういうものがつくれるのではないか、と儚い夢を見ておられる方でもいらっしゃって、事務局のほうで忖度してこんな文言をまぎれこませたのでしょうか?(これはまったくの憶測にすぎませんが・・笑・・・でも、ほかでこれに類したことを体験しているので、まんざらあり得ない妄想にも思えないので・・・)

 まじめな議論をされてあの「意見書」をまとめられた検討委員会のメンバーは、パブリックコメント公募につけられたこのリーフレットの文言を、どんな気持ちで読まれたのでしょうか?私がメンバーだったらこんな文言を読んだら怒って担当者に直ちに抗議しますよ。委員会ではこんなでたらめなことを言った人はいないはずだ!とね。

 さらに想像するに、12月24日の日経新聞に載った「京都に最大級オペラ劇場」という驚天動地の記事なども、こんな文言をリーフレットにまぎれこませた方々が無知な記者にリークしたのではないでしょうか。

記事にこうあります。

“京都市は同市左京区の文化施設「京都会館」を全面改修し、国内最大級のオペラハウスに衣替えする方針を固めた。”

“海外における京都の高い知名度をいかし世界的なオペラ公演を誘致、・・・”

“国内の代表的なオペラハウスの新国立劇場やびわ湖ホールと並ぶ規模になりそうだ。”

まったく正気の沙汰とは思えません。

それで「総事業費約100億円」だそうです。「新国立劇場やびわ湖ホールと並ぶ規模」の「国内最大級のオペラ劇場」が、あの敷地に、しかも100億円で建つ、と考えているところが無邪気というか、失笑せざるを得ませんが、「国内最大級のオペラ劇場」建設には不足でも、100億円という金額は市民にとっては気の遠くなるような金額です。そして、かりにその後の各社報道にあるようにうち半額が会館の命名権料でまかなえるとしても、もしこんな事業を強引に推し進めるというのが本当なら、半額は市民の税金が使われることになります。さらに、それだけではなく、その後毎年ずっと、膨大なメンテナンスのための費用が税金で賄われることになります。そして、それらの超高価な重装備は、ほとんど利用されないことが、他の地方の「国内最大級のオペラ劇場」の運営で実証済みです。

京都市にはどうかこの計画について、リーフレットにある上記のようないいかげんな点を見直していただき、用途を明確にしたうえで、意見書の中では、できる限り意見書A案の「地上躯体部分の増築なしの改修」に近い、改修が不可避な老朽化によるスタッフや公演者、観客等の安全性に関わる修繕や、限定した用途の範囲内で、実用に供するために不可避な、機能不全の最小限の手直しにとどめ、市民の経済的負担を最小限にして、建築史的な価値を維持し、市民に愛されるいまの会館のありようを維持していく方向性を明確にしていただきたいと思います。

(了)

■京都会館再整備検討委員会の「意見書」について・その9-「saiseiの京都日記」

■京都コンサートホール

■京都会館について-「sayseiの京都日記」
2011-02-28 「京都会館再整備」というしつらえられた土俵-「sayseiの京都日記」

関連リンク
2011-04-11 稼動率比較:京都会館と京都コンサートホール-「京都市情報館」
2011-01-24 京都会館再整備に関する市民意見の募集について-「京都市情報館」
2007-11-08 京都会館再整備の基本的な方向性に関する意見書-「京都市情報館」
2010-12-24 京都に最大級のオペラ劇場-「日本経済新聞」
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by 2011-kyoto | 2011-02-25 00:00 | 2011/02
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