2011-12-10 京都会館と 建築家 前川國男の求めたもの-4 最終回 松隈洋--「ねっとわーく京都1月号」
京都会館と 建築家 前川國男の求めたもの-4 最終回 松隈洋
過去と未来をつなぐ試金石としての京都会館
「人が大勢寄るところですから、招き寄せる雰囲気がなければならない。そこで軒にカーブをつけて、抵抗を感じないですっと入れるような、日本の昔からの伝統的な大屋根が持っている、おおいかぶさるような抱き込むような感じを出したいと思ってやったわけです」(「うえの」1961年4月号) 

「結局ぼくは、合理主義建築というものの限界を見たような気がして、建築というものは、たとえば経済的な合理性ばかりを追求してもどうにもならないんだというようなことを身につまされて知ったわけだ。(中略)コルピュジエは近代建築というものはラショナリズム(合理主義)の建築だとはっきりといっていたけれども、ぼくはそのラショナリズムの建築というのはそのままでは日本ではやせた建築になっていくと思った。やせた、老いさらばえた建築を近代建築で合理化、正当化するのはまずいと思って、そのころやたらと大きな屋根のある建物を設計した」(「新建築」1984年1月号)

 「建築っていうのは、人生のはかなさに対する何らかの存在感をもとめたい、というところに本当の意味があるんじゃないか(中略)芸術というのも、そういう、いわば日常茶飯から始まるんであってね。そのことを抜きにして、たんにエステティック(美学的)にのみ語られるのはおかしいと思う(中略)もしも建築が芸術であるならば、建築家というのは、骨身を砕いて存在
感を求め続ける人間のことだ(中略)そこに多くの人たちとのコミュニケーションの絆がある」(「建築家の信条」1981年晶文社)

 「実際に事に当っているうちに、近代建築というものは、それ以前のね、石なり、木なりが主体の建築っていうものとはギャップがあるということを、だんだん痛烈に感じるようになったね。(中略)石というのは古くなればなるほどよくなるのに対して、鉄は逆だし、コンクリートは風化に耐えられない。だからね、美意識の上で、昔の建築と今の建築を同日に談ずることはできないと思うんだ(中略)近代建築というものの美しさ、ていうとおかしいけれど、そういうものに相当自信を持っていたっていうかな、たしかに自分のなかの心棒としてそれはあったんだけれども、いろいろと実際にぶつかってみるとね、これはだめなんじゃないかという気がしてね。近代建築の限界というかな、そういう疑いを持ち始めたのはそのころ(戦前)からだね、ほんとのところ」(村松貞次郎『日本近代建築の歴史」岩波現代文庫)

前川は、工業化以前の建築がもつ持続的なあり方、とのギャップを自覚しつつ、モダニズム建築を、それに少しでも近づける努力を自ら果たそうとしたのである。そして、前川の生涯とは、そうした未熟なモダニズム建築を日本という気候風土に定着させ、誰もが共有できる普遍的な存在へと育て上げることだったのだと思う。

 こうして、ようやく、京都会館に注ぎ込まれたものの全体像が理解できる。竣工から51年、その現在の姿は、何を伝えているのだろうか。モダニズム建築によって始められた工業化を前提とする建築の作られ方は、現代においても変わらない。おそらく、これからも変わることはないだろう。もしそうだとするならば、私たちは、これからの建築と都市の未来を考える手がかりを、モダニズム建築の生み出した風景と時間の蓄積から学び、共有していくことの中からしか、つかみ得ないのである。
木造文化に連なろうと試みた京都会館は、過去と未来をつなぎ、より良き生活環境を築くための、貴重な文化資源、地域資源としての意味を持ち始めているのではないだろうか。性急な再整備計画を超えて、より幅広い議論が尽くされることを望みたい。京都会館は京都の未来への試金石である。


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■京都会館と 建築家 前川國男の求めたもの-4 最終回 松隈洋--「ねっとわーく京都1月号」
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by 2011-kyoto | 2011-12-10 00:00 | 2011/12
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