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2012-01-24 2012年の都市・建築・言葉 アンケートより RAD(川勝真一)-「10+1 Web site」
特集:2011-2012年の都市・建築・言葉

2──2011年で印象に残った、都市や建築を語るうえでの人・建築作品・言葉・発言・書物・映像・メデイア・出来事などを挙げ、それについてコメントしてください。
[川勝真一]A2
震災とそれ以降の出来事とすこし距離をとって、とはいえ密接に関係もしていると思われる私個人にとって身近な出来事として、京都会館の改修問題がある。ここでの問題というのは改修それ自体ではなく、改修へと至る経緯そのものが問題として取り上げられている。その意味で「A1」の話しとも連動している。つまり今回の京都会館をめぐっては、大規模なオペラができるだけの改修が本当に必要かどうかを、その根拠や、その決定のプロセスが透明性を持って明示されたうえで私たちの問題として考えられるかどうかが最大の焦点である。

80億円近い改修費と確実に増加するであろう施設維持費(現状で明確な試算は算出されていない)には、税金があてられることになるだろうし、そうした費用が増えることで地道に活動をつつけている若いアーティストの活動環境が悪化することも考えられる。得をするのは一部の利権者だけという、どこかで見たようないつものパターンになってしまうのか? この構図は、建築家と建築への信用を貶めた「ハコモノ」と言われる公共建築のあり方と同じだ。建築家が社会的な信用を取り戻し、都市や街をつくっていく主体となりたいのなら、長い目を持っていまある計画への疑問や妥当性、その先に生み出される状況を考える必要がある。今回の京都会館を巡る取り組みはそのようなものとして理解されるべきだと思っている。

そして、京都会館での取り組みそのものを、公共性を開いていくためのケーススタディとして、その不透明な部分へいかにアプローチできるのかを学んでいかなくてはならない。原発問題しかり、当然のようにこの問題は、日本の至るところに存在している。それを理解したうえで、合理的かつ透明性を持って議論されれば、建設時の理念を都市の資産として引き継ぎつつ、少ない予算での改修の手が見出されるはずだ。


■2012年の都市・建築・言葉 アンケートより RAD(川勝真一)-「10+1 Web site」

2011-2012年の都市・建築・言葉 アンケート
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