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2012-06-10 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(4)-「週刊京都民報」
2012-06-10 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 
石田潤一郎氏に聞く(4)


2012年6月10日
(3)のつづき

──提言では、京都会館の保存とは、どうあるべきと提起しているのでしょうか。

石田 京都会館が戦後建築のなかでも傑出した作品であり、やがては重要文化財に指定されうる存在であるととを疑う人は建築の世界では、ほとんどいません。「提言」では、これを前提にしています。その上で、基本的考え方として、「機能の向上や利便性から計画される改修であっても、歴史的な建物価値を最大限継承するため、市の『再整備基本計画』を幅広く解釈して柔軟に運用することが必要である」と述べています。
つまり、建物の歴史的価値を守らずして何のための「再整備」計画なのか、同計画にとらわれるべきではないと言っています。
──相当厳しい提起ですね。

石田 そうです。
私は文化財の保存、修復について、文化的価値と機能上の要求との単純な差し引きだけを考えてはいけないと考えます。
 文化財修復では「可逆性」という概念が強調されるようになっています。改造部分を元に戻そうと思ったら、戻せるような方法をとるべきだというのです。この視点から京都会館の改修、再整備を考えるなら、そのあり方は、現代の要請ありきではなく、その要請が変わったときには、改修以前に戻すという展開も十分視野に入れておく必要があるはずです。

 ほかの委員からも、同趣旨の発言が相次ぎました。
 道家駿太郎(日本建築家協会近畿支部京都会会長)は、「機能的に最小限の、どうしても必要なもの以外のことはせずに全体の保存を考えるべき」と述べました。
 中川理委員(京都工芸繊維大学教授)も「機能的な部分よりも建物価値の方が大きい」との主調。「機能として、多少不便であっても建物価値が施設としての価値につながる」と言ってることも重要だと思います。
──今後、「提言」はどう生かされていうのでしょうか。

石田 「提言」を市がどう生かすのか、これからが山場です。
橋本功委員(前川建築設計事務所所長)が「最終的にどのように実現するのか、その道筋を市には用意してもらいたい」「我々は見守っていく義務がある」と発言しました。私も含め、大多数の委員が同じ意見だと思います。京都会館をどう改善するのかには、市民の皆さんもぜひ深い関心を持って注視していただきたいと願っています。(おわり)

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■京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(4)-「週刊京都民報」

2012-06-22 検討委員会提言を受けた基本設計内容/景観シミュレーション-「京都市情報館」
2012-06-22京都会館再整備工事 入札公告について-「京都市情報館」

2012-06-03 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(3)-「週刊京都民報」
2012-05-26 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(2)-「京都民報web」
2012-05-17 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く -「京都民報web」
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by 2011-kyoto | 2012-06-30 08:00 | 2012/06
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