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2012-07-13 第3:監査の結果-1事実関係-(3)京都会館再整備に係る法的規制について
(3)京都会館再整備に係る法的規制について

ア 法的課題への対応

(ア) 法的課題
昭和35 年に建設された京都会館は,建築物の用途,建物高さ,風致地区の制限(建ぺい率,緑地率等)等,現行の法規制に適合していない現況があり,京都会館を再整備するに当たっては,その対応を図る必要があるとされていた。
一方,他の岡崎地域の施設においても現行の法規制に適合しない状況があり,京都の中心的な文化・交流ゾーンとして,高く評価されている岡崎地域の現状を維持しながら,岡崎地域に求められる都市機能の充実の方向を踏まえ,地区計画や特別用途地区の制定等,都市計画手法を活用し,岡崎地域全体の都市計画の変更が必要であるとされていた。

(イ) 都市計画制限等の見直し
このような状況の下,上記.エのとおり,岡崎ビジョンが策定され,平成23年7月,その実現に向け,「岡崎地域活性化ビジョンの実現に向けた『都市計画制限等の見直しの素案』」が作成され,市民意見の募集が行われた。その後,次のような見直しが実施されている。

京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)特別用途地区(岡崎文化芸術・交流拠点地区)の区域内における建築物の制限の緩和に関する条例の制定及び特別用途地区(岡崎文化芸術・交流拠点地区)の決定

京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)特別用途地区(岡崎文化芸術・交流拠点地区)の区域内における建築物の制限の緩和に関する条例を制定し(平成23 年12 月21 日公布。平成24 年2月1日施行),同区域内においては,第2種住居地域に原則建築してはならない建築物である劇場,映画館,演芸場若しくは観覧場,自動車車庫又は展示場について,これらを建築することができることとし(自動車車庫にあっては地階の部分をその用途に供するものに限る。),当該特別用途地区の区域を,京都会館の敷地を含む,左京区岡崎入江町,岡崎法勝寺町,岡崎成勝寺町,岡崎最勝寺町,岡崎西天王町,岡崎円勝寺町,聖護院円頓美町及び南禅寺草川町の各一部と定めた(平成24 年2月1日告示)。
これによって,京都会館の敷地に,上記の建築物を建築することができることとなった。

b 岡崎文化・交流地区地区計画の決定
当該地区については,平安神宮をはじめ,美術館,京都会館等の多彩な文化交流施設を有する京都最大の文化ゾーンであり,また,岡崎公園の緑,琵琶湖疏水等の広々としたオープンスペースで構成されたスケールの大きい都市空間を形成する優れた都市景観・環境を有する地区とされている。この優れた都市景観・環境を将来に保全継承するとともに,文化・交流ゾーンとしての機能強化,更なるにぎわいの創出を図ることを目標として,岡崎文化・交流地区地区計画(以下「岡崎地区計画」という。)が定められた(平成24年2月1日告示)。
岡崎地区計画では,京都会館の敷地がある区域をB地区とし,地区整備計画として,B地区に関し,次の事項が定められている。
(a) 建築物等の用途の制限
次に掲げる建築物は,建設することができない。
① 住宅
② 共同住宅,寄宿舎又は下宿
③ 老人ホーム,保育所,身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの
④ 公衆浴場,病院,老人福祉センター,児童厚生施設その他これらに類するもの
⑤ 自動車教習所
⑥ ボーリング場,スケート場,水泳場,スキー場,ゴルフ練習場及びバッティング練習場
⑦ マージャン屋,ぱちんこ屋,射的場,勝馬投票券発売所,場外車券売場その他これらに類するもの
⑧ カラオケボックスその他これに類するもの
⑨ 建築物に附属する自動車車庫で,地上の床面積の合計が600 平方メートルを超えるもの

(b) 建築物の敷地面積の最低限度
建築物を建築する際の敷地面積の最低限度を4,000 平方メートル(建築物の高さが15 メートル以下の場合は500 平方メートル)とする。
(c) 壁面の位置の制限
冷泉通から4メートル,神宮道・二条通から15 メートル,琵琶湖疏水から10 メートルとする。
(d) 建築物等の高さの最高限度(第一ホールに係る部分)31 メートルとする。
(e)建築物等の形態又は色彩その他意匠の制限
京都会館の近代性と伝統の融合を感じさせる風格と魅力ある建築物と調和することとする。

京都市風致地区条例に基づく特別修景地域の指定の一部改正及び京都市風致地区条例に基づく特別修景地域内において適用する許可基準の緩和又は強化の全部改正
京都市風致地区条例(以下「風致地区条例」という。)に基づく特別修景地域の指定を一部改正し,京都会館の敷地を含む約30.4 ヘクタールを岡崎公園地区特別修景地域に指定するとともに(平成24 年2月1日告示),風致地区条例に基づく特別修景地域内において適用する許可基準の緩和又は強化を全部改正し,特別修景地域内に適用する許可基準を定めた(平成24 年2月1日告示)。
岡崎公園地区特別修景地域に関する当該許可基準のうち,京都会館の敷地に関するものは,次のとおりである。
(a) 高さの基準の適用除外
岡崎地区計画の区域のうち,地区整備計画により,建築物等の高さの最高限度が定められているものについては,風致地区条例第5条第1項第1号ウ(ア)及び同項第3号ウ(ア)に規定する基準(高さに関する基準)を適用しない。
(b) 建ぺい率の基準の適用除外
街区(道路境界線又は琵琶湖疏水の最上段の擁壁の裾に囲まれた範囲をいう。以下同じ。)内における建築面積の合計の敷地面積に対する割合が,10分の4以下であると認められる場合は,風致地区条例第5条第1項第1号ウ(イ)及び同項第3号ウ(イ)の基準(建ぺい率に関する基準)を適用しない。

(c) 緑地の規模等の強化
① 道路周辺の緑化に配慮すること。
② 主たる建築物を新築又は増築(当該建築面積が既存の建築面積を超える場合に限る。)する場合にあっては,風致地区条例第5条第1項第1号ウ(エ)及び同項第3号ウ(エ)に規定する緑地の規模の基準を10分の3とする。ただし,街区内における緑地(木竹が保全され,又は適切な植栽が行われる土地並びにそれと一体となって良好な景観を形成している草本類,地被類などの植物で被われている空地及び庭園内の園路,庭石,水面などの区域をいう。)の面積の敷地面積に対する割合が10分の3.5以上あると認められる場合は,この基準を適用しない。

(d) 形態意匠等の基準の強化及び付加
建築物その他の工作物の位置,規模,形態及び意匠並びに緑地の位置及び形態は,風致地区条例第5条第1項各号に定める基準のほか,①岡崎公園地区では,既存樹木で構成される広々として緑豊かな通り景観や都市における自然的景観を維持するため,道路及び琵琶湖疏水に面した既存樹木を保全すること。②岡崎地区計画の区域のうち,地区整備計画が定められた区域の建築物は,岡崎地区計画において定められた建築物等の形態又は意匠の制限に適合するものであること。この場合においては,風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ),同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準(位置,規模,形態及び意匠に関する基準)を適用しない。

(ウ) 高度地区による建築物の高さの規制とその適用除外
上記⑴アのとおり,京都会館の敷地は, 15m第2種高度地区に指定されている。
都市計画高度地区計画書には,制限の緩和,許可による特例のほか,適用除外の制度があり,地区計画の区域のうち,地区整備計画において,次に掲げる全ての制限が定められている区域内の建築物で,当該地区計画の内容に適合するものについては,当該計画書の規定を適用しないこととされている。
a 建築物等の用途の制限
b 壁面の位置の制限
c 建築物等の高さの最高限度
d 建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限
上記(イ)bのとおり,岡崎地区計画では,上記a,b,c及びdが定められており,京都会館の敷地のうち第一ホールに関する部分については,建築物等の高さの最高限度が31 メートルとされている。
したがって,京都会館の建築工事計画が岡崎地区計画の内容に適合して行われるならば,15m第2種高度地区の制限の適用が除外され,岡崎地区計画の定める建築物等の高さの最高限度の範囲内で建築物を建築することができる。

(エ) 眺望景観条例による制限とその適用除外
上記⑴アのとおり,京都会館の敷地は,その一部が近景デザイン保全区域に,その全部が遠景デザイン保全区域に指定されている。
近景デザイン保全区域にあっては視点場から視認することができる建築物等の形態及び意匠,遠景デザイン保全区域にあっては視点場から視認することができる建築物等の外壁,屋根等の色彩について,優れた眺望景観を阻害しないものとして市長が定める基準に適合するものでなければならないとされている(眺望景観条例第8条第1項第2号及び第3号)。

当該市長が定める基準のうち,建築物等の形態及び意匠並びに建築物等の外壁及び屋根等の色彩の基準(以下「形態意匠基準」という。)にあっては,美観地区,美観形成地区,風致地区又は建造物修景地区内にある建築物等で,当該各地区において定められた形態意匠基準に適合し,かつ,市長が優れた眺望景観を阻害しないと認めるものについては,適用しないことができるとされている(平成19 年9月1日告示第207 号「京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定等」(平成23 年3月28 日全部改正))。

京都会館の敷地は,上記⑴アのとおり風致地区第5種地域に,また,上記(イ)cのとおり岡崎公園地区特別修景地域に指定されており,当該特別修景地域における形態意匠基準は,風致地区条例第5条第1項各号に定める基準のほか,岡崎地区計画において定められた建築物等の形態又は意匠の制限に適合するものであることとされている(この場合,風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ),同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準(位置,規模,形態及び意匠に関する基準)は適用されない。)。

岡崎地区計画において,京都会館の敷地がある区域に関する建築物等の形態又は意匠の制限は,上記(イ)b(e)のとおり,「京都会館の近代性と伝統の融合を感じさせる風格と魅力ある建築物と調和すること。」とされている。したがって,京都会館の建築工事計画が岡崎地区計画に定める建築物等の形態又は意匠の制限に適合すれば,風致地区において定められた形態意匠基準にも適合することになり,市長が優れた眺望景観を阻害しないと認めるものに適合すれば,眺望景観条例の形態意匠基準を適用しないことができるようになる。
イ 文化財保護関係法令

(ア) 建築物の歴史的・文化的価値に着目して,その保存及び活用を規定する法令としては,文化財保護法及び同法第182条第2項の規定に基づく地方公共団体の条例が挙げられる(市の区域内に存する有形文化財においては,京都市文化財保護条例及び京都府文化財保護条例がこれに該当する。)。
文化財保護法では,文化財の定義の一つとして,「建造物(中略)その他の有形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの」が掲げられており(同法第2条第1項第1号),文化財のうち上記の各法令による指定又は登録を受けたものについては,法令及び行政機関の指示に従い当該文化財を管理する義務(文化財保護法第31条第1項,京都市文化財保護条例第8条第1項等),文化財の現状を変更しようとする場合において行政機関の許可を受ける義務(同法第43条第1項,同条例第18条第1項等)その他の文化財の保存及び活用に係る義務が課せられている。また,これらの義務の違反に対して刑事罰が科せられる場合もある(重要文化財を損壊し,又は無許可で現状変更した場合など)。

(イ) しかし,京都会館については,文化財保護法,京都市文化財保護条例及び京都府文化財保護条例の各法令に基づくいずれの種類の文化財への指定及び登録もなされていない。
よって,第一ホールを解体することについて,文化財保護法,京都市文化財保護条例及び京都府文化財保護条例の規定の適用はない。
ウ 都市計画関係法令の手続

(ア) 京都会館の再整備に当たり必要となる主な法令上の手続は,次のとおりであり,市において所定の手続を進めていくこととされている。

a 解体に係るもの
建築基準法第15条第1項の規定に基づく京都府知事への建築工事届の届出(建築工事届及び建築統計)
建設工事に係る資源の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)第10条第1項の規定に基づく市長への届出(解体工事の届出)

b 建築に係るもの
風致地区条例第2条第3項の規定に基づく市長への協議(建築物等の新築等の協議)
眺望景観条例第11条第1項の規定に基づく市長への届出(建築物等の建築等に関する届出。本件においては,⒜の協議をもって届出があったものとみなされる。)
京都市中高層建築物等の建築等に係る住環境の保全及び形成に関する条例第11条第1項の規定に基づく標識の設置(建築計画の周知)及び同条第3項の規定に基づく市長への届出(標識を設置した旨及び建築計画の概要の届出)
建築基準法第18条第2項の規定に基づく建築主事への計画の通知(建築確認)及び同法第56条の2第1項ただし書の規定に基づく市長への許可申請(日影規制の例外許可)
京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例第3条第1項の規定に基づく市長への協議(建築等の計画に係る協議)
(イ) なお,上記の各法令のうち,その違反に対する建築物の除却,原状回復等の措置命令又はこれに類似する措置の要請の規定は,解体に係る法令には定められておらず,建築に係る法令には次のとおり定められている。
a 眺望景観条例
違反建築物等に対する違反を是正するために必要な措置を採ることの命令(第16条第1項)
b 建築基準法
違反建築物に対する違反を是正するための措置の要請(第18条第23項)
c 京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例
違反建築物に対する違反を是正するための措置の要請(第12条第2項)

■第3:監査の結果-1事実関係-(3)京都会館再整備に係る法的規制について

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