2012-09-26 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書-「京都会館を大切にする会」
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様へ「京都会館を大切にする会」より9月26日付けにて下記の意見書を送付いたしました。

京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書

2012年9月26日
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会
各位

京都会館を大切にする会
代表 吉村篤一

拝啓、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
私たちは京都会館再整備基本設計について、適切な保存改修となるよう運動をしながら、その経過を見守ってきましたが、残念ながら好ましい結果とはなりませんでした。

新聞報道等でもご存知かと思いますが、本年6月4日に京都会館の基本設計が公表された後、7月27日に、近代建築の保存を提唱する国際組織の日本支部であるDOCOMOMO Japanから鈴木博之代表名で、門川大作京都市長に別紙1のような「京都会館再整備基本設計に対する意見書」が提出されました。その結論部分は次のように記されています。

「今回発表された『京都会館再整備基本設計』には残念ながら継承されるべき建物価値は反映されておらず、新たな要求性能には応えたものの、結果として京都会館の歴史的価値を喪失する再整備基本設計となっています。

以上のことから、日本を代表する建築家である前川國男の設計によって1960年に建てられた戦後近代建築の傑作であり、近代建築と日本建築の融合を成し遂げたと近代建築史上に位置づけられ、京都の歴史的景観を構成する重要な建物である京都会館の歴史的、文化的価値を失わないためにも、2012年9月に予定されている「第一ホール解体」を中止し、『京都会館再整備基本設計』が京都会館の建物価値を継承するものになっているかを合理的方法に基づいて再検証する透明性のある委員会を設置し、計画及び基本設計の見直しを行うよう意見申し上げます。」


8月下旬には、ユネスコの諮問機関であり、世界遺産の登録の審査や監視活動を続けている国際記念物遺跡会議イコモス(ICOMOS,本部パリ)の「20世紀遺産に関する国際学術委員会(ISC20C)」において、厳格で独立した審議による評価が行われた結果、シェリダン・バーグ委員長名で、門川大作京都市長に別紙2のような「京都会館再整備基本設計に対する意見書」が提出されました。その要点は次のようになります。

「京都会館は前川國男の最も重要な作品です。このプロジェクトで彼は、近代建築運動の思想が具現化された新しい文化施設を、京都という町が今も昔もそうであるように、伝統的な歴史上のコンテキストに適合させながら作ることに成功しました。素晴らしい建築作品であり、敬意を払われ、遺されるべき文化遺産です。

ICOMOS ISC20Cは、京都会館に対する今回の改修計画を精査し、次のように懸念しています。この計画は、この非常に重要な遺産に対し、取り返しのつかない害を及ぼします。提案されている新しい舞台のサイズとデザインは、前川の設計思想と細部によって形成されている美と調和を損なうでしょう。(中略) 我々は最大級の敬意を持って、京都市に、現存する京都会館を変える現在の計画を再考し、劇場のプログラム的なニーズを満たしながらオリジナルの建築物の遺産価値を残せるような、よりよいデザインを見出すべく努力することを要求します。」


これを受けて、9月10日には、「日本イコモス国内委員会」からも別紙3のような「京都会館再整備計画に関する見解」が、西村幸夫委員長名で、京都市長宛に提出されました。そこには、次のように記されています。

「イコモス国内委員会として、国際学術委員会ISC20C委員から経緯を聴収するとともに京都市による京都会館再整備計画を省察し、以下のことを確認しました。

①京都会館は現在、国内法において文化財としての登録・指定がされていないものの、20世紀の日本を代表する建築作品のひとつであり、ある一定の文化財としての価値を有していること。

②京都会館は第一ホールを中心としてさまざまな機能上の問題が竣工当初から指摘されてきており、また、経年変化によりさまざまな物理的性状の問題も有していること。

③京都市は上記①および②の双方の問題の解決するために、慎重に検討を重ねてきたこと。

しかしながら、

④京都会館再整備基本設計において、20世紀建築のリビング・ヘリテージ(使われる建物としての継承)としての機能変化を含む改修などの変化に対して、継承すべき価値の判読が困難で、かつその資産のインテグリティ(完全性)の確保が合理的に示されていないこと。

⑤京都会館再整備基本設計における資産のインテグリティ(完全性)が保たれているかの検証と、その確保のための新たな要求性能の再検討がなされていないこと。

『京都会館の建物価値継承に係る検討委員会』提言の示す『近代建築を保存・継承する新たな道筋をつけること』に対する説明が不十分であること。

京都市は、①および②の点を止揚して、新たな京都会館のあり方を提案するのであれば、上記の④~⑥の疑問点に対処し、かつ、その解決策が京都会館の最小限の改変案であることを合理的に示すべきであると考えます。」


また、日本イコモス国内委員会は、第14小委員会「リビング・ヘリテージとしての20世紀建築保存・継承に関する課題検討(京都会館再整備計画に関する検討)」を急遽発足させています。

以上、いずれの書面も京都会館の建物価値が損なわれるので計画の見直しを求める内容となっています。

これらに対して京都市は、京都会館の建物価値継承に係る検討委員会で既に慎重に検討したうえで基本設計を取りまとめたので見直す意向がないことを示しています。

更に京都会館を大切にする会賛同人の長崎氏の質問状に対する京都市の回答書(別紙4)では「建物価値継承に係る検討委員会提言書の前後において、基本設計の内容に変更はありません」と明言しています。

こうした状況の変化を受けて、今何よりも大切なのは、貴検討委員会が京都市へ提出された「提言書」が基本設計に反映されていないものであること、そして、上記の各組織からの意見書や見解にもあるように基本設計が建物価値を損なうものであることを、貴検討委員会の貴重な議論が無に帰さないためにも、改めて京都市へ文書で伝えることだと考えます。

このような現在の状況を打開し、貴重な文化的価値を守るためにも、貴検討委員会の各位に対してご協力をお願いする次第です。何卒ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

敬具

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■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書-「京都会館を大切にする会」
◆京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員

石田潤一郎 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦) 副委員長に選任
伊藤久幸 財団法人新国立劇場運営財団技術部長
衛藤照夫 社団法人京都府建築士会会長
岡崎甚幸 武庫川女子大学生活環境学部建築学科教授、京都大学名誉教授 委員長に選任
澤邉吉信 岡崎自治連合会会長
道家駿太郎 社団法人日本建築家協会近畿支部京都会会長
中川理 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦)
橋本功 前川建築設計事務所所長


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京都会館を大切にする会
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by 2011-kyoto | 2012-09-26 00:00 | 2012/09
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