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2012-10-13 日本イコモス国内委員会委員長と第14小委員会委員のみなさまへ-「京都会館を大切にする会」
日本イコモス国内委員会委員長と第14小委員会委員のみなさまへ
2012年10月13日付けで「京都会館を大切にする会」より日本イコモス国内委員会 委員長西村幸夫様宛に発送されました。
2012年10月13日

日本イコモス国内委員会 委員長 西村幸夫様
第14小委員会 委員長 苅谷勇雄様
 委員  宗田好史様
 委員  山名善之様

京都会館を大切にする会
代表 吉村篤一

拝啓、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

難しい状況のなか、京都会館再整備をより良い方向へと導くためにご尽力されていることに敬意を表します。既に了解済みであることは十分理解しておりますが、最後にもう一度だけ私たちの思いを述べさせて頂きます。

そもそも、本来は建物価値継承に関する議論を踏まえた上で基本計画を策定すべきところを、逆に「京都会館再整備基本計画(2011.6)」を前提として、更には基本設計と同時進行で「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」での議論となりました。そのため根本的な議論がなされず、あいまいなまま、議論の結果も設計に反映されないという状況です。

現在の基本設計案に辿り着くために、既に長い年月と多大なエネルギーが費やされていることは十分承知しております。しかしながら、そのことによって妥協の産物を生みだしては決してならないと考えます。回り道をしてでも原則論に立ち戻って本来のあるべき姿を純粋に目指さなければなりません。貴委員会が、今後次々と発生するであろう「リビング・ヘリテージとして20世紀建築の保存・継承」のあり方の手本となる指標を示して下さることを期待しております。そのために解釈論では無く、京都会館の保存・継承すべき価値を具体的かつ明確に示して頂くように強くお願い申し上げます。

私たちは現基本設計の大きな問題点は以下2点と考えています。

1)フライタワーの巨大な塊
全体バランスを著しく損ね、およそ前川國男の設計した建物とは言えないものとなるでしょう。岡崎地区という場所を考慮して水平を強調し、勾配屋根によって圧迫感を抑えるという設計意図を無にしてしまいます。
  これは、基本計画で示された過大な舞台寸法を見直さない限り、解決不可能です。

2)バルコニーの屋内化
京都会館の最大の特徴である中庭空間を一変させてしまいます。この中庭は、周辺環境に開かれ、市民に様々な居場所を提供する稀有な空間であり、このことはピロティ及びバルコニーによって増幅されています。このバルコニー空間は縁側と同様、内でも外でもないところに居心地の良さがあり、ここをガラスで覆ってしまえば、中庭と建物との接点が断ち切られ、かつ、魅力的な中間領域が失われてしまいます。

京都会館再整備の素敵な解決策によって、京都の、そして日本のまちづくりのピンチをチャンスへと転換するきっかけを貴委員会がつくり出して頂けるものと信じております。
「やっぱり前の方がよかった」という言葉はもう言いたくない、聞きたくないのです。

敬具

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■日本イコモス国内委員会委員長と第14小委員会委員のみなさまへ-「京都会館を大切にする会」

日本イコモス第14小委員会-リビング・ヘリテージとしての20世紀建築の保存・継承に関する課題検討
京都会館再整備計画に関する検討

京都会館を大切にする会
日本イコモス国内委員会

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