2012-09-12 合意形成のプロセスー近年の保存運動から-松隈洋
(一部資料のページが欠落しておりましたので、全ページアップし直しました。お詫びして再掲いたします。2012/12/03)
合意形成のプロセスー近年の保存運動から
松隈洋(京都工芸繊維大学教授)

日本建築学会大会[東海]2012年9月14日

はじめに
その建築のもつ価値や意味が広く共有され、そのことによって、建築ができるだけ長く、できるだけ良いコンディションで維持され、人々に親しまれながら共に歴史を刻み、その役割と生命をまっとうすること。おそらく、時代が切実に求めるものを受けとめながら、精魂を込めて建てられた建築が望む幸せなあり方とは、そのような状態のことを指すのではないだろうか。

しかし、激変を続ける現代の日本において、そうした幸福な建築は、果たしてどれほど存在しているのだろう。今、私たちはこの厳然とした事実の前に立たされている。ことに、2000年代に入り2002年に制定された「都市再生特別措置法」によって、大都市における拠点的な再開発事業が急激に加速する中、単体としての建築の価値や意味を顧みる回路はほとんど見失われつつあるのではないだろうか。その証拠に、この法律によって近年あいついで姿を消した近代建築を列記してみると、「東京中央郵便局」(1931年、吉田鉄郎)、「歌舞伎座」(1924年/1950年、岡田信一郎/吉田五十八)、「親和銀行東京支店」(1963年、白井晟一)、「蛇の目ミシン本社ビル」(1965年、前川國男)、「京橋3丁目ピル」(1978年、村野藤吾)、「大阪ビルディング」(1925年、渡辺節)、「大阪中央郵便局」(1939年、吉田鉄郎)などが挙げられる。いずれも、長く街並みを形づくってきた人々に馴染みのある建物だ。

おそらく、このまま推移すれば、文化財の扱いを受けた木造やレンガ造の遺構などわずかな例外を除いて、近代建築は人知れずすべて消え去ってしまうだろう。
それは、結果的に、私たちの生きる時代の生活空間そのものを形づくってきた建築を共有の文化として持つことができない、ということを意味する。だからこそ、今一度、そのような事態を回避し、過去と未来をつなぐ建築文化を守り育てるために何が求められるのか、について、もう少し意識的な議論を始める必要があるのではなかろうか。そして、先回りして言ってしまえば、それは、とりもなおさず、建築界が、建築をめぐって社会との間でどのようなコミュニケーションを交わし、その蓄積によってどのような信頼関係を築くことができるのか、にかかっているのだと思う。
そこで、、ここでは、そうした問題意識を前提にしながら、図らずも、筆者が「京都会館再整備検討委員会」(2005~2007 年)にただ一人の建築専門家として加わって以来、深くかかわることになった「京都会館」(1960年、前川國男)の再整備計画に伴う取り壊し問題の保存運動から見えてきたものについて、その経緯と問題点、建築界のかかわりなど、広く求められるものとは何かという視点で書き留めておきたい。
• 「京都会館」保存問題についての主な言説リスト
(2011 年4 月~2012 年8 月)

・中川理「建築季評:空間全体が保存の対象」『読売新聞』2011年4月4日

野宮珠里(記者)「京都会館「オペラ上演」改修計画名建築個性殺すな」『毎日新聞』2011年5月4日
石田潤一郎「私論公論:京都会館改修やり直しのきく保存再生を」『京都新聞』 2011年6月3日
森田一弥「京都会館改修、広く議論を」『京都新聞』2011年7月29日
松隈洋「地方発:京都会館改築への疑問「近代建築の到達点」を葬るな」『毎日新聞』 2011年9月
27日

・松隈洋「京都会館と建築家・前川國男の求めたもの」 ①~④『ねっとわーく京都』 2011年10月号~2012年1月号 
神田剛(記者)「モダニズム建築の危機」『朝日新聞』2011年12月9日
馬場璋造「所論諸論:京都会館改修に思う」『日刊建設工業新聞』 2011年12月15日
・大野正美(記者)「窓論説委員室から・使われ続ける建物」『朝日新聞』2011年12月16日
高橋晴久(記者)「文化の都にぎわいに陰り」『京都新聞』 2012年1月13日
松隈洋「所論緒論:京都会館は誰のものか」『日刊建設工業新聞』 2012年2月24日
松隈洋「再読関西近代建築:京都会館」『建築と社会』 2012年2月号
特集「有名建築その後:京都会館前川建築をガラスで覆う」『日経アーキテクチュア』 2012年4月25日号
・「京都会館検討委員会具例の「提言」の真相-石田潤一郎同委員会副委員長に聞く1~4『京都民報』2012年5月2027日6月310日

d0226819_15143848.jpg
d0226819_15151726.jpg

d0226819_15152883.jpg
d0226819_15153792.jpg
d0226819_1515469.jpg
d0226819_15155924.jpg
d0226819_1516789.jpg
d0226819_15161562.jpg
d0226819_15162354.jpg
d0226819_15163260.jpg

■合意形成のプロセスー近年の保存運動から-松隈洋
2012-09-12 日本建築学会大会[東海]開催のご案内-「日本建築学会」

2007-11-08 京都会館再整備検討委員会-「京都市情報館」

松隈洋関連記事
[PR]
by 2011-kyoto | 2012-11-05 00:00 | 2012/09
<< 2012-11-05 歴史的都... 2012-11-04 「世界遺... >>