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2013-05-31 山ノ内浄水場、来月撤去 京大教授「増田作品」
山ノ内浄水場、来月撤去 京大教授「増田作品」

京都大教授を務めた建築家の増田友也(1914-81年)が設計した京都市右京区の山ノ内浄水場が、6月に取り壊される。水道事業の経営効率化で今年3月に廃止され、跡地に誘致した大学が校地として整備するためだが、機能性を備えながらも独自の建築論に基づく造形が失われることに、専門家から惜しむ声が上がっている。

 増田は京都帝国大工学部建築学科を卒業。数々の著書で独自の建築論を展開する一方、京大総合体育館や京都市の蹴上浄水場、徳島県鳴門市の市庁舎など多くの公共施設の設計を手掛けた。京都工芸繊維大の松隈洋教授(近代建築史)によると「東の丹下(健三)、西の増田」ともいわれ、関西の建築界に多大な影響を与えた。

 山ノ内浄水場は66年に完成した。特徴は、ろ過操作廊や管理棟の天井。コンクリートを折り曲げたような形で、建物の側面はガラス張りになっている。「折板構造によって建物の強度を高め、柱を減らしたことで開放空間を可能にした」と松隈教授は指摘する。独特の曲線を描く巨大な洗浄水槽は、おおらかでユーモラスでもある。

 跡地に新キャンパスを整備する京都学園大(亀岡市)は「建物を一部残すことも検討したが、学生の安全を考え撤去を選んだ」と説明する。周辺住民への説明会を経て6月中に取り壊す方針という。

 松隈教授は近著2013-03-27 力強く懐かしいモダニズムの逸品を振り返る。『残すべき建築』-「Book News」" target="_blank">「残すべき建築」(誠文堂新光社)で、歌舞伎座や同潤会上野下アパートなどとともに山ノ内浄水場を取り上げた。「当初の役目を終えても普遍的な価値が備わっている。市民が増田作品との対話を楽しむために建物を生かす道を選んでほしかった」と残念がる。

 廃止決定後、市民の見学が相次ぎ、2011年度には43件の申し込みがあったという。増田の孫弟子に当たり、都市計画を手掛ける市民空間きょうと代表の山田章博さん(53)=左京区=は取り壊しを前に企画された昨年秋の見学ツアーで案内役を務めた。「なくなる直前に関心が高まっても遅い。価値ある建物を普段から見いだす土壌を培っていきたい」と話している。

■山ノ内浄水場、来月撤去 京大教授「増田作品」-「京都新聞」

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2013-03-27 力強く懐かしいモダニズムの逸品を振り返る。『残すべき建築』-「Book News」
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2011-06-27 モダニズム建築物から見る山ノ内浄水場-「京都市情報館」

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by 2011-kyoto | 2013-06-09 05:30 | 2013/05
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