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2013-01-08 平成25年1月 くらし環境委員会(第17回)-01月08日-17号-「くらし環境委員会」
平成25年1月 くらし環境委員会(第17回)-01月08日-17号

○委員長(中野洋一) 
 本日は,京都府立大学大学院の宗田好史教授を本委員会の参考人としてお招きいたしております。
 先生,今日はお忙しい中,また御多用のところ,御出席いただきましてありがとうございます。当委員会では,年間テーマとして,文化首都京都ということで,その文化振興策,また,それに関わる取組等を,各都市,また委員会の議論を深めるなど,そういった取組を進めてきております。本日,併せて世界遺産条約40周年という風なところで,これから文化振興策,特に世界遺産をどう活用していくのか,どう活性化させていくのか,こういった部分についても議論を深めていきたいという風に思っているところでございます。といったこともございまして,今日,宗田教授にお越しいただいたところでございます。
◎ 参考人(宗田好史)
どうも皆さん,明けましておめでとうございます。御紹介いただきました京都府立大学の宗田でございます。今日は,委員長から御指示ありましたように,40周年記念事業を中心に幾つかのお話をさせていただきますが,まず,その成果と意義ということであります。それから,併せて,古都京都の文化財ということで,現在,宇治,大津をまたぎ17の文化遺産が登録されておりますが,京都市では,私の存じ上げているところでは,その追加登録に向けた動きをされています。この追加登録を目指しておられるということと,今回,この40周年記念事業を招致したことというのも決して無関係ではございませんので,そのことを含めてお話をし,さらに,今,委員長御指摘になりましたように,この世界文化遺産を京都のまちづくり,文化振興にどう活用するかということに関しまして,実際,今,京都市は,日本国内にある文化遺産,自然遺産を含めた自治体のトップと言ってもいいような,世界文化遺産地域連携会議ですとかを門川市長が務めておられると。それから,国際的には世界遺産都市機構というのがございまして,その会員でもありますし,それから,皆さんよく御存じの世界歴史都市連盟の議長国,議長市も務めております。そういうことを含めて,それがどう文化首都とつながっていくかというお話をさせていただこうと思います。

私どもイコモスの方で取り組んだイベントがありまして,これは,本会議の前の週末に,プレ会議としまして専門家のための会議を開きました。それからもう一つ,次のページにあります公開シンポジウムを開いたわけですが,このテーマは,合意形成に果たす地域社会の役割,それから,持続可能な文化遺産保護のための地域社会の役割ということで,そこに書きましたユッカ・ヨキレットさん,スーザン・デニアさん,パオラ・ファリーニ先生を呼んでという会議をしたんですが,この専門家のことを簡単に説明しますと,ユッカ・ヨキレットさんというのは,ユネスコのローマ・センターといいまして,世界中から専門家を呼んで文化遺産の修復のトレーニングをする組織がありますが,そこの所長,副所長を務められた方で,いわゆる歴史都市の保存ですとか文化財建造物の保存に関わって,どういう市民参加ができるかということを今回のテーマで本会議の中でも御報告された方です。

 スーザン・デニアさんというのは,イギリスのナショナル・トラストですとか,それからイコモス・イギリスの事務局長を務めておられますが,ユネスコの世界遺産委員会の評価委員会の委員長で,それぞれ遺産の評価をイコモスの専門家が担当して世界遺産委員会に報告することをしますが,その最終の文章をまとめる方です。

 ですから,この2人が将来京都の追加登録うんぬんに関しても深く関わってくることは間違いないわけでありまして,よく世界中から招かれているお二人であります。京都が今後世界遺産の追加登録もありますし,それから,モニタリングと言いまして,10年置きに今どういう状況でそれが守られているかということをユネスコに報告する義務があるんですが,その仕事をしていく上でも評価をしてくださる方なので,実態をよく見ていただこうということであります。当然地元から京町家再生研究会の小島さんですとか,宇治の萬福寺で開催したものですから,お茶屋さん,通圓の通円亮太郎さんに来ていただくということをしました。
 もう時間がなくて申し訳ないんですが,この四つの変化というのが我々文化遺産の世界では言われています。文化財の定義,社会における文化財の役割,文化財の意味,それから,そのための管理方法です。昔は記念物だけでよかった。鳥居だけでよかった,平安神宮だけでよかった。しかし,今は景観,岡崎の文化的景観という。昔は本願寺だけでよかった。今は京都の町家街区という。それから,建造物だけでよかったのが市街地全体,遺跡だけでよかったのが歴史的環境という,全体のことであります。今,その文化財の定義が広がってくると,その文化財の管理の方法も,指定から今は選定とか登録とかというのに広がっていきますが,さっき言った文化財行政の分権化,その地域性をどう重視した地域に合った形を残すかということを,今,京都でもやっていますから,その京都を彩る建造物,庭園というのが話題になる。これは正に地域性の重視。それから,部分的保存が統合的な,遺跡中心で緊急保護的に守るのがより戦略的に,技術的問題が哲学的というように広がってきました。この中で,社会における文化財の役割というのが,昔は平安神宮を造って国民的な統合をする,皇国史観だ,天皇のために死ねよと,こう教えていた。今はそうじゃなくて,日本は文化的な多様な国なんだと。京都というのは,幅広い文化を持っている,その文化のリソースであって,そこから新しい創造的な活動が生まれてくる場所だということを言いたいわけですね。だから,当然,国家じゃなくて地方自治体の責任は重くなる。だから,大学の先生が威張って権威主義的にこの文化財を教えるんじゃなくて,民主化とか市民参加が必要になる。だから,文化財の専門家というのは,歴史を知ってりゃいいというんじゃなくて,ファシリテーター,まちづくりのコーディネーターというのが必要となる。多様な学問分野だとか経営能力がというような大きな,これは決して私が作ったものではなくて,EU,ヨーロッパ連合の文化財行政が作っている英語のスライドを,今,翻訳してここで使っているだけですが,正にぴったし京都にはまる。だから,景観まちづくりセンターもある,だから,いろんな文化財の市民活動があるという状況になっていまして,そのヨーロッパの歴史都市で起こっていることが,丁度日本の意義にも関わってくる。

 この中で,例えば京都は産業遺産をどう取り扱うか。琵琶湖疏水だけでいいのか,それが本当に言いたいのか,創造都市ということを語るときに琵琶湖疏水が産業遺産なのか,もうちょっと考え方はあるんじゃないか。岡崎の京都会館が問題になる。戦後建築と言ったときに,岡崎の京都会館だけなのか,それはドコモモの先生たちが叫んでいるだけだろう,もう少し幅広く捉える戦後建築,戦後の京都ということを世界に向けて発信するとしたら何なのという議論,こういうようないろんな議論が広がってくるわけですね。

 これは読んでいただければいいんですが,20世紀と今の日本では違う。鉄道,高速道路を造っていた時代とこの新景観政策を実施した後では,明らかに都市モデルが違う。景観保護,景観整備を選択したことで,失うものもあったかもしれない。しかし,手に入れたものが多い。今更高速道路,高層ビルを造るという時代じゃないだろうと。だから,正にその未来への視点を持ったときに,我々が過去の文化遺産をどう理解するかということは,市民的な議論ももちろん重要ですし,今の市民の皆さんがどこに何を求めているかということを理解することが必要になります。

 これはスライド,資料に入れていないんですが,是非御理解いただきたいのは,これが京都市の観光のデータです。よくお見せするものです。1975年まで増えていたのが,25年間ずっと停滞して4,000万人を超えられなかった。それが2001年以降急速に増えて5,000万人になっているわけですね。これは有名な話なんですが,今,京都に来る観光客は中高年ばかりです。これは下から10代,20代と上がってきますが,70年代には20代があんなに多かったのが,今,40代以上,50代,60代がこれだけ膨らんでいる。大問題はこれです。女性が多いんです。美しい,正しいというスライドを先ほどお見せしましたが,何で京都が美しくなきゃいかんかといったら,京都に来るお客さんの7割が女性,それも中年なんですね。その方たちが健康を求める,正しさを求めるという状況になっている。そういう中で,京都の美しさ,京都の文化というのをどう訴えていくかということは非常に大きいです。その女性の感覚でいくと,この21世紀の日本人像,新しい物を欲しがらないほどに成熟した,たくさんの物を欲しがらないほどに豊かになった。自分のため,愛する人のためだけでなく,みんなのために尽くしたいほど幸せになった。こういう大きな価値観の転換が起こっているんです。これはもう東京型の開発モデルではない。京都型のモデルというのが絶対あるはずなんですね。そこに暮らしと環境をどう考えていくかという大きな課題があって,正にこのくらし環境委員会で文化遺産を扱っていただくと言うか,文化遺産を考えていただくと非常にありがたいことであります。多分ここに,つまりほかの委員会の悪口を言うつもりはないですけど,実はここに意外と京都の未来を開いていく鍵があって,ここから京都経済が新しく変わっていくということがあるかもしれないと思うんですね。

 ですから,とても1回でお話できるような内容ではありませんでしたが,世界遺産を取り巻く状況が今変わっているということと,それが専門家を含めて世界遺産委員会の各国の代表部の意見で,それはやがて創造都市に行き着く,それはやがて経済発展に行き着く方向が見えてきている。京都は景観政策もやっている,観光政策もやっている。実にいいポジションにいる。だからこそ日本一になれるということがはっきり見えたと。それを是非これから京都の戦略にしていくということが重要ではないかと思っております。
 すいません,御清聴ありがとうございました。時間をオーバーして大変申し訳ありませんでした。どうもありがとうございました。御清聴ありがとうございました。

■平成25年1月 くらし環境委員会(第17回)-01月08日-17号-「くらし環境委員会」
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