2014-03-22 傑作「鎌近」解体危機 15年度で幕 日本初の公立近代美術館-「東京新聞」
傑作「鎌近」解体危機 15年度で幕 日本初の公立近代美術館

日本初の公立近代美術館でモダニズム建築の傑作とされる神奈川県立近代美術館鎌倉館が二〇一五年度に閉館する見通しになった。建築・美術界からは閉館後の建物保存を求める声が上がっている。 (森本智之)

 「小さな箱」と呼ばれ白くシンプルな構造が親しまれてきた同館は一九五一年、鶴岡八幡宮の一角に土地を借りて開館した。老朽化が激しいが、国史跡である八幡宮の境内は文化財保護法により原則、大規模な工事はできない。このため県は改修工事を断念し、土地の賃貸契約の切れる再来年度末までの閉館を決めた。

 県立近代美術館はほかに二館あり美術館としての機能は残る。ただ、鎌倉館は近代建築としての評価の高さから、保存できるかが現在の焦点になっている。保存にも一定の改修が必要で、やはり文化財保護法がネックになるからだ。

 さらに八幡宮との契約では、土地は更地にして返還する約束になっている。このため保存には少なくとも国と八幡宮の双方の理解を得る必要があり、県の調整は難航している。

 保存を求める声は強く、昨秋には、日本建築家協会などが要望書を県に提出。ゆかりの建築家や美術史家らが参加したシンポジウムも開かれた。県生涯学習課は「一四年度中には方向性を決める」としている。

 神奈川県立近代美術館鎌倉館 鉄筋2階建て延べ約2400平方メートル。設計者の坂倉準三は巨匠ル・コルビュジェに師事し、新宿駅西口広場や神奈川県庁など多くの公共建築を手掛けた名建築家。1999年には近代建築の調査保存をする国際組織DOCOMOMO日本支部が「日本近代建築20選」に選んだ。施設が手狭なことなどから、84年に鎌倉別館、2003年に葉山館が増設された。収蔵品は3館併せて1万点以上。

 「『鎌近(かまきん)』といえば、別格の存在ですよ」。閉館の見通しとなった神奈川県立近代美術館鎌倉館について、美術評論家の藤田一人さんはこう評価する。

 近代美術の殿堂の東京国立近代美術館よりも一年早く開館。昔の名品を陳列する場所、という当時の美術館像を覆し、同時代の作品を紹介する美術館の新しいかたちを打ち出した。無名だった松本竣介や萬(よろず)鉄五郎に光を当て、日本ではじめてムンク、パウル・クレーの本格的な展示会を開いて大ブームを巻き起こしたことでも知られる。

 物資不足の建設時を反映してか広さは現在の平均的な美術館の四分の一程度しかないが、藤田さんは「小さい分、じっくり作品に向き合うことができる。外観もモダンでありながら、八幡宮の神聖な雰囲気とも調和する」と言う。

 ただこうした陰で、美術館にとって長い間、老朽化対策は重要な課題だった。学芸員時代から四十年以上勤務し、一九九二~二〇〇四年に館長を務めた酒井忠康さん(72)は「エレベーターがないから、作品はみんなで抱えて階段を上り下りした。事務所の雨漏りはしょっちゅうだったし、展示室に大きなオブジェを運び込む際には床が抜けないよう建物の図面を片手に配置を検討した」と振り返る。

 館長当時には、同館の運営委員長だった日本画の大家の故平山郁夫さんと文化庁を何度も訪れ、改修工事の直談判をしたが、文化財保護法を理由に認められなかったという。「平山さんなら、と思ったが、どうしても『まかりならん』ということだった」

 鎌倉館がいずれ閉館することはずっと覚悟していたという酒井さん。「小さくて古く、いろんな不備があったが、頭をひねり学芸員の工夫で展示を企画してきた。アナログな施設だが、私のような落ちこぼれにはホッとする」と冗談めかす一方、「美術館であってこその鎌近だった。(建物の保存が実現したとしても)閉館はやはり残念」と複雑な胸の内を明かした。

■傑作「鎌近」解体危機 15年度で幕 日本初の公立近代美術館-「東京新聞」

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by 2011-kyoto | 2014-03-24 18:30 | 2014/03
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