2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
第5 高度地区違反
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4のつづき
1、はじめに
本件建築計画が憲法14条に違反し、違法無効であることは第1で述べたところであるが、本件建築計画は次の通り、都市計画法上の高度地区制限にも適合していないため、本件建築確認は取消しを免れない。

2、地区計画の内容
本件建築計画では、建替後の京都会館第一ホールの高さは、最高部で約31mとなっている。
このような高さが許されるのは、本件敷地が都市計画法上15mの高度地区(都計法8条1項3号)に指定されていたのを、2012(平成24)年2月1日に計画決定された岡崎文化・交流地区地区計画により、建築物の高さの最高限度を31メートルとするように変更されたことによる。

3、地区計画の違法性
しかしながら、本件敷地にあっては、地区計画の策定によって建築物の高さの最高限度を緩和することは違法である。以下、理由を述べる。

(1)新景観政策の実施
京都市は2007(平成19)年9月1日、それまでの景観政策を大きく転換する「新景観政策」を施行して市街地について高さ規制を強化し、思い切った高さ・景観規制の強化を実施した。

すなわち、都市計画の変更により、高度地区の変更(高度地区の計画書の策定)(以下「同計画書」という。)を行い、「歴史的市街地」「山すそ部の住宅地」「市街地西部および南部の工業地域」の3エリアを中心に高さ規制を強化、あるいは新規に実施し、高さ規制の段階についても、従来の10/15/20/31/45mの5段階から10/12/15/20/25/31mの6段階に変更した。特に、歴史的市街地については、ほぼその全域で高さが引き下げられ、わけても都心部の幹線道路沿道については45mから31m、その内部地区については31m(マンションでは11階建て程度)から15m(同5階建て程度)に引き下げた。

このことは、新景観政策において、建築物の高さが都市景観に及ぼす影響が極めて重大であるとの認識を示し、これまでの景観政策が不十分であったとの反省の下に、市および市民が、将来の京都の景観を保全・再生するために、建築物の高さを低く抑えていくという決意を示したものと評価できる。

(2)特例許可制度
その上で、同計画書において、①すぐれた形態・意匠を有する建築物、②公共性の高い建築物などで、市長が当該建築物が存する地域の良好な景観の形成及び周囲の市街地の環境に支障がないと認めて許可したものは、その許可の範囲内において、同計画書の規定による建築物の高さの最高限度を超えることができるとする「許可による特例」の制度(特例許可制度)を認めた。

そして、特例許可制度の手続について、「京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例」(特例許可手続条例)を制定した。

この特例許可制度においては、建築主は市長との事前協議を義務づけられ(3条)、協議が整った時は、建築計画書および概要書を市長に提出しなければならない(4条)とされる。また、市長は建築計画の概要を公告して、3週間縦覧に供しなければならず(6条)、建築主は、建築計画にかかる建築物の敷地の周辺住民に周知させる説明会を開催しなければならない(7条)とされている。そして、建築計画について意見を有する者は意見書を提出することができ、建築主にはこれに対する応答義務が課せられている(8条)。

更に、市長の諮問機関として景観審査会が置かれ(13条)、景観審査会は、利害関係人に公開による意見の聴取を行うことができるとされる(19条)。

(3)本件敷地において、特例許可制度の手続を経ずに高さ規制を緩和することの違法性
 本件建築計画は、(2)記載の特例許可制度手続を経ることなく、地区計画の指定によって、従来の建築物等の高さの最高限度(15メートル)を緩和(31メートル)したことによるものである。

しかし、以下の理由から、本件において、高さ規制の緩和を京都市および平安神宮の所有地において地区計画によって行うことは、違法である。

 地区計画(都計法12条の4第1項1号)は、「建築物の建築形態、公共施設その他の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画」(同法12条の5第1項本文)として、都市の広域的な観点からの計画とは別に、それぞれの地域的特性を活かし、居住環境の整備を図ることを目的とした計画である。

また、地区計画は、地域住民のまちづくりについての発意を契機として、市と市民が協働して勉強会を開催するなどして地区の問題点・課題を探り、それをもとに市民がまちづくりの具体的な内容の提案・要望をまとめ、そこから市民と市が協働で「地区計画の案の検討素案」を作成し、市民が合意形成をはかって「地区計画の素案」を作成するものである。市はこれをもとに「地区計画の原案」を作成して公告・縦覧に供する。これに対する関係権利者からの意見を踏まえて、市は「地区計画の案」を作成し、これを再度公告・縦覧に供する。これに住民および利害関係人は意見を提出することができる。その後都市計画審議会で審議し、都市計画決定がなされ、条例化もなされる。

このように、地区計画は、地域住民の合意に基づいて、それぞれの地区の特性にふさわしい良好で質の高いまちづくりを誘導するための計画であり、「住民の合意」に基づいて作成されるべきものである。

実際のこれまでの京都市の制度運用においても、事実上、当該地区の敷地の所有者の大多数(7割ないし8割)の合意が必要とされており、地区計画の作成過程において、地域住民の大多数によって、まちづくりの方向性が十分に議論され、高さ等の規制緩和の必要性と合理性が十分に吟味される。

以上のとおり、地区計画においては、まちづくりの枠組みや具体的な規制内容について、地域住民の間で十分に議論がなされることにより、意見のすりあわせや利益調整がおこなわれることから、高さ規制についての特例許可制度を用いることが不要とされていたものである。

 しかしながら、本件敷地に関して、京都市が地区計画を指定する範囲は、地域住民が居住している地域を敢えて外して、京都市所有地および平安神宮の所有地に限定して指定していることから、京都市は地域住民の意見を聴取する機会を持たずとも地区計画を策定することができることになる。しかしながら、地域住民の居住している区域を敢えてはずして、地区計画を策定するという手法は、地域的特性を活かすという同制度の目的に明らかに反し、かつ、手続的にも地域住民の合意を経て制定されるというプロセスにも明らかに反している。

このような当該地区を所有する所有者(=京都市)の意のままに建築物の高さ等の規制の緩和が許される地区計画が特例許可制度の適用を受けることなく認められれば、新景観政策の生命線である高さ制限は意味をなさなくなり、新景観政策の趣旨を没却させることとなる。

 特に京都市は、現在、「新景観政策の進化」をめざしており、現状では、公共施設について、建築計画の概要の公告・縦覧や説明会の開催等は免除されているのを、公共施設についても必要とするよう手続の見直しを図ろうとしており、京都市の所有地や一人地区における地区計画による高さ規制の緩和は、このような新景観政策の進化の流れに明らかに逆行するものである。

 よって、本件敷地において、地区計画の指定による方法で建物の高さの最高限度を緩和することは手続法上許されないといわなければならないから、岡崎文化・交流地区地区計画のうち、高さの最高限度を定める部分は無効である。

 上記に加え、本件建築確認は、第4で述べた通り、イコモス20世紀遺産委員会、日本イコモス国内委員会、ドコモモジャパンなどの勧告意見にも違反しており、その違法・無効は顕著なものである。

4、結論
したがって、本件敷地における建築物の高さの最高限度は、当初の高度地区の指定通り15mに制限されているというべきであるから、本件建築計画は高度地区(都計法8条1項3号)に違反するため、建築基準法6条1項の「建築物の敷地に関する法律」に適合するものとは言えないことより、本件建築確認は取消しを免れない。
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6へつづく

京都会館建築確認処分取消審査請求書-5

2012-02-01 岡崎地域における都市計画の見直しについて-「京都市情報館」
新景観政策 リーフレット-「京都市情報館」
時を超え光り輝く京都の景観づくり - 京都市
2012-01-20 岡崎地域の高さ規制緩和を決定 京都市都計審、京都会館再整備へ-「京都新聞」
京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例施行規則
都市計画法
京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例
京都市景観審査会-「京都市情報館」
建築基準法

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
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京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:05 | 2013/12
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