2014-10-17 【京都会館建替え問題】建築確認取消訴訟 住民側提出訴状-6
【京都会館建替え問題】建築確認取消訴訟 住民側提出訴状-6

第7 その他条例違反

1 本件建築計画は、以下の規範に違反する。

(1) 岡崎文化・交流地区地区計画違反

ア 京都会館第一ホールは、岡崎文化・交流地区地区計画区域のうち、B地区に存するところ、同地区の建築物等の形態・意匠は、「京都会館の近代性と伝統の融合を感じさせる風格と魅力ある建築物と調和する」ものでなければならない。

イ 京都会館の近代性と伝統

(ア) 京都市は、京都会館の建物価値承継について検討委員会に諮問し、同委員会は、平成24年4月23日、提言を示した(甲27)。

その中で同委員会は、京都会館の建物として承継すべき価値について、以下のとおり提言しているところ、その内容は京都会館の近代性と伝統を具体的に示すものである。

a 空間構成の継承

① ピロティによって中庭に導く「開かれた公共空間」の特質を守ること。

② 中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通まで見通せる空間の流動性を保つこと。

③ ホワイエ、ロビー空間を拡充しようとする際には、現建物の持つ全体の空間構成や外観意匠の価値を十分に尊重して行うべきである。


b 外観意匠の継承

① 現京都会館の外観意匠における特質は日本の建築的伝統との近さである。この印象は、大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられる。こうした立面構成の価値を維持継承できるようにしなければならない。

② 現京都会館の上記の特質をとりわけ明瞭に感じさせる中庭に面した外観については、特にこのことが求められる。

③ サッシ割りなど細部の形状について可能なかぎり原型を保つこと。

④ 第二ホールのホワイエはガラス面を透過して外観と一体化している部分であるから、その空間構成の継承に対しては十分な配慮を払うこと。陶壁画についてもその芸術性に敬意を払いつつ、継承に努めること。

⑤ 第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うこと。


c 景観構成要素としての意義の継承

① フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討および歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうこと。

② 景観シミュレーションを見ても、舞台内高さ27mを確保した基本設計のフライタワーが周辺の風致に与える影響に配慮することが必要であることは明らかである。いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うべきである。

③ 新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材についても、岡崎地域の風致を損なわないよう精緻な景観シミュレーションを行うなど最大限の配慮を払うこと。


(イ) 「DOCOMOMO Japan」の意見書

 20世紀の建築遺産の価値を認めその保存を訴えることを目的のひとつとする国際的な非政府組織の日本支部である「DOCOMOMO Japan」は、2012(平成24)年7月27日付で、「京都会館再整備本件建築計画に対する意見書」を作成し、京都市長外宛に執行している(甲17)。

 同意見書は、基本設計について、以下のとおりの問題点を指摘しているところ、このうち③④は、京都会館の近代性と伝統を具体的に指摘している。

① 過半の躯体を除去することによって、当初建築材料の残存率が極めて低くなること。

② 京都会館と共に形成されてきた東山の景観、とくにそのスカイラインが著しく変化すること。

③ ル・コルビュジエ、前川國男などの近代建築家にとって重要となるL型配置の結節点空間の視線の抜けが、第一ホールのホワイエの縮小によって、限定的なものになること。

④ 日本古来の建築に由来する深い庇による水平性の強調や、ピロティや中庭による内外空間の一体化といった、前川國男が試みた近代建築と日本建築の融合というこの建物の特徴が、中庭側の軒下空間を内部化することによって失われること。


(ウ) 前川國男の京都会館の設計

 前述のとおり、京都会館を設計した前川國男の設計説明書には、次の記載がある(『説明書』前川建築設計事務所蔵)。

 「環境との調和
東山一帯に囲まれた平面的な岡崎公園と、その水平的な性格を象徴するが如き疏水の流れ、それに既存の建物、公会堂、勧業館、美術館等の中層建物の高さなどを考え合わせる時、この場所に巨大マッスの高層建物を置く事は、公園地帯全域に対して不均衡を来すものと思われる。

 このために、建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成をとった。

 この公園のもつ水平線的性格は建物のボリウムの流れのみでなくバルコニー手摺、外壁を構成するプレキャスト版等、全館意匠の細部にまで浸透せしめ附近全域及び周囲の風光との調和を図った。」

 すなわち、前川國男は、「環境との調和」・「附近全域及び周囲の風光との調和を図った」と明確に述べているように、京都会館の設計にあたり、京都会館を岡崎公園・疏水・公会堂・遠くの東山の山並み等、周辺の地域的特性といかに調和させるかに神経を研ぎ澄まし、特に配慮している。

(エ) 上記三者の意見から、京都会館の近代性と伝統は、①中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通まで見通せる空間の流動性と、②大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられる日本の建築的伝統との近さ、③建物の水平基調、すなわち「建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成」にあり、いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うことが必要であることがわかる。

(オ) ところが、本件建築計画は、上記①から③が満たされていない。
わけても、価値継承検討委員会の提言を受けて作成された本件建築計画において、基本的な部分(フライタワーの形状および高さ)について、基本設計に対して何ら変更が加えられていないことは、本件建築計画が京都会館の伝統に矛盾した建築物であることを如実に示すものである(すなわち、本件建築計画の立面図(甲2)と、価値継承検討委員会に提出された立面図を比較すると、建物の外観、特にフライタワーの形状に全く変更が加えられていないところ、景観比較写真(甲4)を見れば、従来の第1ホールが有していた、第2ホールとの連続性や東山をはじめとする近隣景観との調和が本件建築計画によって破壊されていることが明らかである。)。
したがって、本件建築計画は、岡崎文化・交流地区地区計画に違反する。


(2) 京都市風致地区条例違反

ア 本件敷地の景観保全に関しては、風致地区第5種地域であり、本年2月1日付告示により「岡崎公園地区特別修景地域(B地区)」に指定されている。

イ 京都市においては、風致地区の許可基準、特別修景地域における許可基準について、「京都市風致地区条例による許可基準と解釈の運用」に拠っている。

 これによれば、「岡崎公園地区特別修景地域」については、「形態意匠等の基準の強化及び付加」と題する第7条の第79号において、以下のとおり規定されている(なお、同基準は基準の適用除外や緩和も定めている(1条から4条。甲11・47頁以下)が、第7条は緩和ではなく、「形態意匠等の基準の強化及び付加」とされていることには注意を要する)。

 「岡崎公園地区では、既存樹木で構成される広々として緑豊かな通り景観や都市における自然的景観を維持するため、道路及び琵琶湖疏水に面した既存樹木を保全すること。

 また、京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)岡崎文化・交流地区地区計画の区域のうち、地区整備計画が定められた区域(C地区を除く。)の建築物は、当該地区計画において定められた建築物等の形態又は意匠の制限に適合するものであること。この場合においては、条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」

ウ 条例第5条第1項第1号ウ(カ)は、建築物等を新築する場合について、同項第2号イ(エ)・同項第3号ウ(カ)は、それぞれ建築物等を改築・増築する場合について、「建築物等の位置、形態及び意匠等が、それらが行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でなく、かつ、別に定める基準に適合することを求めている。

エ そして、「別に定める基準」については、施行規則が規定しているところ、建物の形態意匠については、第13条が主なところで以下のとおり規定している。

 第13条 条例第5条第1項第1号ウ(カ)、第2号イ(エ)及び第3号ウ(カ)に規定する別に定める基準は、次に掲げるものとする。

(1)  建築物の屋根及び軒に関する基準

ア 勾配を有する屋根で建築物が全て覆われていること。 

イ 屋根の形状が入り母屋屋根、寄せ棟屋根又は切り妻屋根のいずれかであること。

ウ 屋根の勾配(軒裏の勾配を含む。)が10分の3から10分の4.5までであること。(以下略)

エ 屋根が日本瓦、平板瓦、銅板その他これに類する金属板、平形彩色スレートその他これに類するもの又は太陽光発電装置その他これに類する太陽熱を給湯、暖房、冷房その他の用途に用いる装置(以下「太陽光発電装置等」という。)のパネルでふかれていること。(以下略)

オ (以下略)

(2)  建築物の外壁に関する基準(略)

(3)  建築物に関するその他の基準

ア 階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の部分(以下「階段室等」という。)
が階段室等以外の部分の屋根面から突き出したものでないこと。

イ (以下略)

オ ここで、「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」という点であるが、上述のように、第7条は、あくまで「強化及び付加」であって「緩和」ではないのであるから、上記3箇条を適用しないというのは、それらによって守ろうとする風致景観を、それらの規定の全部を適用するということにはこだわらずに実現しようとする趣旨であって、単に上記3箇条に示す基準に満たないものでもよいというものではない。

 このことは、同条項について、「建築物が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和であったり、別に定める基準が要求する水準に満たないものであってもよい。」などとするものでないことから明らかである。

 したがって、たとい「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」としても、その意味は、「同条項の細目的な規定に必ずしも適合しなくても許容される場合がある」ということであって、勾配屋根を採用せず、あるいは、屋根から突出して屹立するような部分がある建物は、風致地区条例に違反するのであって、そのようなものまでも許容する趣旨ではない。
なぜなら、後述するように、勾配屋根とすること、塔屋を設けないことは、都市景観の維持に極めて重要だからである。

カ これを前提として本件建築計画を見るに、同設計は、そもそも(1)で見たとおり岡崎文化・交流地区地区計画に違反する上に、前述のとおり、建物西側(琵琶湖疏水側)に開口部が取られず、外壁面も垂直に屹立するフライタワーの設置を予定するものとなっている上に、同フライタワーは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである。

したがって、本件建築計画は、京都市風致地区条例に違反する。

キ 上記のとおり、「特別修景地域における地域別基準」に、本件敷地に「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」とあるのは、単にそれらの基準の適用を除外することだけを許容する規定ではない。

もし、単なる適用除外規定であるとすると、かかる規定は無効である。以下、理由を述べる。

 (ア) 勾配屋根とすること、塔屋など屋上に突出部分を設けないようにすることは、都市景観を維持する上で極めて重要である。

 このことは、①風致地区条例、眺望景観創生条例に基づく「別に定める基準」において、勾配屋根とすること、塔屋を設けないことが繰り返し出てくること(風致地区条例については、甲11・14頁~15頁。眺望景観創生条例については、甲12別表)、②価値継承検討委員会の提言においても、?「第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うこと。」、?「フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討および歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうこと」と指摘されていること、?前川國男も、「建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成をとった。この公園のもつ水平線的性格は建物のボリウムの流れのみでなくバルコニー手摺、外壁を構成するプレキャスト版等、全館意匠の細部にまで浸透せしめ附近全域及び周囲の風光との調和を図った。」として、勾配屋根を採用しフライタワーを屹立させなかったことからも明らかである。

 (イ) 告示によって、条例の趣旨を変更することは許されない。

 条例は、議会が制定するものであるのに対し、告示は、市長等の公の機関が決定するものであることから、告示はあくまで条例の趣旨・目的に照らし、条例の範囲内の内容に制限される。

 そうすると、上記告示は、京都市風致地区条例の趣旨・目的に反することは許されないから、上記告示は、上記キで述べたとおり、「同条項の細目的な規定に必ずしも適合しなくても許容される場合がある」という趣旨であって、勾配屋根を採用せず、あるいは、屋根から突出して屹立するような部分がある建物を許容する趣旨ではないと解すべきである。

 したがって、これが単に、風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)の規定の適用を除外するだけであるとすると、かかる告示は条例違反として無効である。なぜなら、市長に認められている告示制度に関する権限は、あくまでも条例の範囲内に限定されており、条例の趣旨・目的に反する告示を定めることは、市長の告示制定に関する権限の明らかな濫用・逸脱であって、違法となるといわなければならないからである。


(3) 京都市眺望景観創生条例違反

ア 京都市眺望景観創生条例第6条第1項によれば、市長は、眺望景観を保全し、及び創出するため建築物等の建築等を制限する必要がある区域を、その建築物等に係る行為の制限の内容に応じて、次に掲げる区域(以下「眺望景観保全地域」という。)に指定することができるとされ、同項2号で視点場から視対象を眺めるとき、眺望空間にある建築物等の形態及び意匠を制限する区域として「近景デザイン保全区域」を定めることができるとされている。

 そして、同条例8条1項2号によれば、近景デザイン保全区域にあっては、視点場から視認することができる建築物等の形態及び意匠は、優れた眺望景観を阻害しないものとして別に定める基準に適合するものでなければならないとされる。

イ これを受けて、平成23年京都市告示第478号(京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定等)別表23-1は、本件敷地のうち、琵琶湖疏水の疏水境からの水平距離が30メートルの範囲について、近景デザイン保全区域に指定しており、建築物等の形態意匠についての基準は以下に示すとおりである。

【種別】
水辺の眺め

【対象地】
23-1 琵琶湖疏水

【視点場の位置または範囲】
川端通から疏水記念館前までの琵琶湖疏水に架かる橋(秋月橋、熊野橋、徳成橋、冷泉橋、二条橋、慶流橋及び広道橋)

【眺望景観保全地域の区域の種別】
近景デザイン保全区域(約16.0ヘクタール)

【眺望景観保全地域の区域の範囲】
川端通から疏水記念館までの琵琶湖疏水の疏水界又は当該疏水沿いの道路の境界線からの水平距離が20メートル又は30メートル以内の別図23に示す範囲

【基準】
1 建築物等は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成される良好な景観を阻害してはならない。

2 建築物等は、次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1)  建築物の屋根は、勾配屋根又は屋上緑化等により良好な屋上の景観に配慮されたものとすること。
(2)  塔屋を設けないこと。
(3)  建築物等の各部は、河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和し、良好な水辺の眺めを形成するものとすること。
(4)  建築物等の外壁、屋根等の色彩は、禁止色を用いないこととし、河川沿いの樹木等や東山の山並みとの調和に配慮したものとすること。
(5)  良好な水辺の眺めの保全及び形成に支障となる建築設備、工作物等を設けないこと。


ウ 上記基準に違反する点

(ア) 上記基準1について

 上記基準1は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成させる良好な景観を阻害してはならないと定める。

 本件建築計画では、本件建物について、建物西側には開口部がなく、外壁面も垂直に高くそびえたつ舞台フライが設置されることになっており、当該舞台フライは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである。

 本件建築計画における舞台フライは、勾配屋根によって琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等と調和していた現状の良好な景観を大きく変えるものであり、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成させる良好な景観を阻害することは明らかである。
すなわち、本件建築計画は、上記基準1及び2(2)に違反する。

(イ) 上記基準2(1)について

 旧京都会館第一ホールは、当初よりホール部分の屋根が勾配屋根とされ、最も高い部分(27.5メートル)が疏水側(西側)地上からは見えにくいように設計されており、圧迫感を感じさせにくい構造となっていた。
しかも、旧京都会館第一ホールは、庇に近づくにつれて屋根の幅を狭める巧みな設計により、疏水側(西側)からは第一ホールの屋根と第二ホールの屋根がほぼ一直線上の同程度の高さ(約18メートル)に見えるなど連坦する第二ホールの屋根ともみごとな調和を見せており、京都会館の他の建物及び近隣の建物とも調和が保たれていた。

 これに対し、本件建築計画は、現状の勾配屋根を陸屋根に変更するものであるうえ、上記イのとおり、高さ30メートルの突出した舞台フライの部分を有する長大な箱形建築物が立ち上がることになり、疎水沿いからの景観は一変する。

 もちろん上記基準2(1)は、陸屋根であっても屋上緑化等によって良好な屋上の景観に配慮できる場合もあることを想定している。

 しかしながら、本件建築計画は外観上極めて重大な変化をきたすものであり、良好な屋上の景観に配慮されたものでないことは明らかである。

 したがって、本件建築計画は、上記基準2(1)に違反する。

(ウ) 上記基準2(2)について

 上記基準2(2)では、塔屋を設けないことが基準として定められている。
その趣旨は、建物から突出する形状の構築物は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等や東山の山並みと調和せず、良好な景観を阻害するものであることから、これを許さないとするところにある。
この点、本件建築計画では、本件建物には、外壁面に垂直に高くそびえたつ舞台フライが設置されることになっている。当該舞台フライは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものであることから、かかる舞台フライは、その大きさ、形状に照らして、勾配屋根によって、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等及び東山の山並みと調和していた現状の良好な景観を大きく阻害する。
そうすると、本件建築計画における舞台フライは、「塔屋を設けないこと」とした上記基準2(2)に違反する。


(エ) 小括

すなわち、本件建築計画は、上記基準1及び2(2)に違反する。


(オ) 上記基準2(3)(5)について

 本件建築計画における建物西側の建物フライの大部分は、琵琶湖疏水の疏水界からの水平距離が30メートル(ただし、どの範囲が該当するかについては、本件建築計画の建物平面図にも明示されていないことから、詳細は不明である。)以内の近景デザイン保全区域内にあるところ、その大きさ、形状に照らせば、勾配屋根によって、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等及び東山の山並みと調和していた現状の良好な景観を大きく変えるものである。

 したがって、本件建築計画における建物西側の建物フライは、「河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和」し「良好な水辺の眺めを形成するもの」とはいえず、「良好な水辺の眺めの保全及び形成に支障となる」ことが明らかである。

 よって、本件建築計画は、上記基準2(3)(5)に違反する。


(カ) まとめ

 以上より、本件建築計画は、平成23年京都市告示第478号(京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定等)23-1に示された形態意匠についての基準1、2(2)(3)(5)に違反することから、京都市眺望景観創生条例に違反するものである。



エ 条例に基づく基準の適用除外事由にあたらないこと

(ア) 平成23年3月28日付京都市告示第478号は、2項において、次のとおり規定する。

 「条例第8条第1項各号に規定する別に定める標高,建築物等の形態及び意匠並びに建築物等の外壁及び屋根等の色彩の基準は,別表(い)欄の対象地ごとに条例第6条第1項により規定する同表(ろ)欄に掲げる区域に応じ,同表(は)欄に掲げるとおりとする。ただし,建築物等の形態及び意匠並びに建築物等の外壁及び屋根等の色彩の基準(以下「形態意匠基準」という。)にあっては,美観地区,美観形成地区,風致地区又は建造物修景地区内にある建築物等で,当該各地区において定められた形態意匠基準に適合し,かつ,市長が優れた眺望景観を阻害しないと認めるものについては,適用しないことができる。」

(イ) しかし、上述したように、本件建築計画は、風致地区において定められた形態意匠基準に適合しないから、上記告示の対象とはならず近景デザイン保全区域に適用される建築物等の形態意匠についての基準が適用される。

(ウ) なお、本件建築計画は、①勾配屋根となっていないこと、②建物西側(琵琶湖疏水側)に開口部が取られず、外壁面も垂直に屹立するフライタワーの設置を予定するものとなっている上に、同フライタワーは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものであって、かかるフライタワーは、その大きさ、形状に照らして、勾配屋根によって、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等及び東山の山並みと調和していた現状の良好な景観を大きく阻害するものであることから、市長がこれを「優れた眺望景観を阻害しないと認める」ことは許されない。

 したがって、いずれの観点からも、近景デザイン保全区域に適用される建築物等の形態意匠についての基準が適用されることに疑いの余地はない。


2 上記各規範違反も、建築確認の取消事由となること

 京都市における建築確認申請においては、上記各規範への適合性が確認されなければ申請を受け付けない扱いになっており、これが認められなければ建築確認がなされることはない。
そうすると、京都市における建築確認審査においては、建築物の上記各規範への適合性が求められているというべきであるから、これが認められない建築物に対して建築確認がなされた場合には、当該確認は違法であるとして取り消されなければならない。

 よって、本件建築計画に上記各規範違反が認められる以上、同計画に対する建築確認は、これを理由として取り消されなければならない。

■【京都会館建替え問題】建築確認取消訴訟 住民側提出訴状-6


【京都会館建替え問題】建築確認取消訴訟 訴状-1
【京都会館建替え問題】建築確認取消訴訟 訴状-2
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京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
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by 2011-kyoto | 2014-10-17 00:06 | 2014/10
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