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2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会
京都会館審査請求裁決書
裁決書

審査請求人別紙審査請求人目録(1)に記載のとおり

審査請求人ら代理人 弁護士 中島 晃
                 同 飯田 昭
                 同 藤井 豊
 他19名(別紙代理人目録に記載のとおり)

処分庁京都市建築主事 中山 雅永

 当審査会は,京都市建築審査会平成25年度第1号審査請求事件について,平成26年3月14日に公開口頭審査を行い,審理の結果,次のとおり裁決する。


主文

別紙審査請求人目録(1)に記載の審査請求人らのうち,別紙審査請求人目録(2)に記載の審査請求人らの請求をいずれも棄却し,その余の審査請求人らの請求をいずれも却下する。
理由

第1 当事者の求める裁決
1 審査請求人ら
2 処分庁

第2 当事者の主張
1 審査請求人
(I)審査請求期間について
(2) 審査請求人適格について
(3)本件処分取消事由1・憲法14条違反
(4) 本件処分取消事由2 ・特例許可制度を用いないことの違法
(5) 本件処分取消事由3 ・地区計画の範囲が~意的に定められた違法
(6) 本件処分取消事由4 ・勧告意見違反
(7) 本件処分取消事由5 ・その他条例等の違反

2 処分庁
(I)審査請求期間について
(2) 審査請求人適格について
(3)本件処分取消事由1・憲法14条違反について
(4) 本件処分取消事由2・特例許可制度を用いないことの違法について
(5) 本件処分取消事由3・地区計画の範囲が窓意的に定められた違法
(6) 本件処分取消事由4 ・勧告意見違反について
(7)本件処分取消事由5・その他条例等の違反

第3 証拠

第4 当審査会の判断
1 本案前の主張に対する判断
(1)審査請求期間について
(2) 審査請求人適格について

2 本案の請求に対する判断
(1)本件処分取消事由1・憲法14条違反について
(2) 本件処分取消事由2・特例許可制度を用いないことの違法について
(3) 本件処分取消事由3・地区計画の範囲が怒意的に定められた違法について
(4)本件処分取消事由4・勧告意見違反
(5) 本件処分取消事由5・その他条例違反について
(6) 小活
 以上によれば,審査請求人らの本件処分の取消を求める主張は,いずれも理由がない。
 なお,付言するに,新景観政策において,本件地区計画が許されるということは,他の地域においても,一定の条件を満たせば,建築物の高さを高度地区の制限と異なるものとした地区計画が許されることを意味する。建築物の高さ規制は,土地所有者にとって厳しい私権の制限であるが,景観維持のためには,その制限は厳しくしなければならない。その規制を緩めると,結局のところ,景観維持はおぼつかなくなる。その維持には,意識的な努力が必要であり,地方公共団体には,重要な役割が期待されるのである。この点で,新景観政策は,多くの支持を得てきたものである。京都市は,その政策を維持し,推進する以上は,自らが建築する建築物には,より厳しく律する必要がある。そうであれば,(可能な限りにおいて,自らが建築する建築物においては,例外的な扱いをすべきでないのはもちろん,新景観政策の理念を優先するということが求められる。この観点からすると本件処分について批判があることも理解できないではない。しかしながら,高さのある建築物が景観を遮ることは当然のことであるが,その建築物が景観と調和するかどうかについては,高さがあるというだけで直ちにこれと調和しないとはいえず,その形態や意匠と総合して判断されるべきであるところである。また,その建築物の公共性や必要性からある程度の景観を犠牲にしなければならない場合もあろう。新景観政策のもとでは,本件建物がどの程度の公共性や必要性を有するか,そして,景観との調和のために,その形態・意匠等においてどのような配慮がされたか等は十分に検討されるべきことがらである。建築審査会としては,建築物の形態・意匠が景観に調和するかどうかの判断をすべきでないと考えるが,京都市は,新景観政策を維持する以上は,その理念が,本件地区計画を契機に崩れることのないように,今後も十分に説明責任を果たす必要がある。

3 結論
以上により,審査請求人目録(2)に記載された審査請求人らから提起された本件審査請求は,いずれも理由がないので,審査法第40条第2項に基づき棄却することとし,審査請求人目録(2)に記載された審査請求人らを除くその余の審査請求人らから提起された本件審査請求は,いずれも不適法なものとして審査法第40条第1項により却下することとし,主文のとおり裁決する。

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京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

2014-05-22 旧京都会館の建築確認取り消し請求、市建築審が退ける-msnニュース
2013-12-06 旧京都会館建て替え:建築確認取り消し求め住民ら請求書 /京都-「毎日新聞」
2014-03-14 公開口頭審査のお知らせ

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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by 2011-kyoto | 2014-05-09 00:00 | 2014/05
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3
「反論書」-2のつづき

第3 新景観政策下においては本件敷地において地区計画の策定によって、高度地区の制限を緩和することは地区計画策定権限の逸脱・濫用であり、違法かつ無効であるため、本件建築確認は取り消されるべきことについて


1 特例許可要件の欠如

これまで述べて来た通り、本件地区計画の主目的は京都会館第1ホールの建替えを目的として高さ制限を15メートルから31メートルに緩和するためのものであるところ、新景観政策の生命線である高さ制限を緩和するための手続きとしての特例許可制度の要件を到底満たしていない。

先述した通り、七条警察署の建替えという「一定の公共性」を認め得る事例においても特例許可要件を満たさないとされたことからしても、京都会館第1ホールのような公演施設の建替えにおいて、景観審査会が京都大学附属病院のような高い公共性を認めることは到底想定できない。だからこそ、本件においては京都会館第1ホールの建設という特定の建物の建設を目的としているにもかかわらず、面的な居住環境の整備を図ることを目的とした地区計画という手法がとられたのである。


2 新景観政策下においては総合設計制度を利用したとしても高さ制限の緩和には特例許可が必要であることとの整合性の欠如

新景観政策下においては、特例許可制度の創設により、総合設計制度活用物件に対する緩和規定が高度地区の但書から削除された。また、総合設計制度取扱要領(2007年9月1日改訂)からも高度地区の高さ制限の緩和規定が削除されている。したがって、仮に総合設計制度の許可を得た物件であっても、高度地区の高さ制限値を超過するためには、特例許可制度に基づき許可を得ることが求められる。つまり、大規模建築物の特例許可に関する制度は但書1項1号に一元化されたものと解釈できる(甲36)。

これは、総合設計制度を利用して高さ制限を超過した京都ホテル問題(高さ45m→60m)の経験をふまえ、新景観政策下においては、特定の建築物の建築に際しては、特例許可無くして高さ制限の例外を認めないという施策を明確化することにより、高さ制限の脱法的利用を防ごうとしたものである。

これに対し、地区計画制度は、特定の建築物の建設のためではなく、一定の広がりのある街区において、地域住民の圧倒的多数の合意の下に、良好で質の高いまちづくりを誘導するための計画であるから、特例許可制度の適用にかからしめる必要がないとされたものである。現に、京都市においては、本件の京都会館での地区計画の制定に至るまで、地区計画制度は、都市計画法・建築基準法に基づく用途地域制では不十分な高さや用途規制を地域住民の圧倒的多数の合意に基づいて強化し、良好な住環境を保全するための民主的な制度として使われてきたし、かつ、本件及びそれに次ぐ島津製作所の工場建て替えを除いては、現在でもそのように使われている(中京区笹屋町、同明倫学区、同姉小路界隈、下京区修徳学区、同四条通ほか多数)。

即ち、新景観政策下においては、特定の建築物の建設のために、新景観政策の生命線である高さ規制を緩和することはその政策の趣旨に著しく反するものである。

現に、本件地区計画を決定した第47回京都市都市計画審議会においても、出席した学識経験者等がこれに強く反対していたにもかかわらず、多数決で強行されたことは、本件地区計画が如何に非論理的な背景の中で制定されたかを示すものである。


3 本件地区計画のうち高さ制限を緩和する部分の違法・無効性

一条山再開発許可取消審査請求事件において、京都市開発審査会は、この問題を判断するにあたり、適切な基準を示した裁決を出している(甲37)。

即ち、同事案は開発許可取消を求めるものであるが、その要旨は、是正のための開発許可は、①できるだけ山の形を残す、②できるだけ緑を残す、③業者に不当な利益を与えない(クリーンハンドの原則)ことが必要であり、京都市の山の全面開発を認める再開発許可は、権限逸脱・濫用で違法とする明快なものであった。
これを本件事案にあてはめると、新景観政策の下においては、建物の高さ制限はその生命線であり、新景観政策策定とともに、特定の建築物に対する高さ制限の緩和策である総合設計制度を利用しての高さ制限の緩和手法は廃止され、特定の建築物の建築のために高さ制限を緩和する方法としては、厳格な要件のもとでの特例許可制度に限られることになった。

他方、地区計画制度は、京都市においては、用途地区制限の不十分な点について、これを強化して地域の住環境を保全することに使われてきたため、新景観政策策定時においても、特例許可制度の適用が除外されたものである。

ところが京都市は自己の所有する土地において、特定の建築物の建築のために、地区計画という手段を利用して高さ制限及び特例許可制度の脱法をはかったのが、本件京都会館問題に他ならない

   これは、如何に解釈しようとしても、新景観政策下においては、高さ制限及び特例許可制度を脱法するためにする地区計画策定権限の逸脱・濫用であり、違法・無効となるものと解せざるを得ない。


4 地区計画の違法性が建築確認取消事由となること

(1)地区計画の策定自体は、処分性が認められておらず、それ自体の取消を求めることはできないとされている。

   従って、権限の逸脱・濫用として違法・無効な高さ制限の緩和部分につき、これを争うためには、建築確認処分がなされた段階で、この取消を求めるしか方法がない。

(2)また、仮に、建築主事の審査権限は形式的・外形的なものにとどまるから地区計画が既に制定されている以上、地区計画に定める高さ制限(31m)に合致している以上建築確認を下ろさざるを得ないとの弁明については、横浜地裁平成17年2月23日判決(甲29)が指摘する通り、建築主事の権限の問題と、その違法性を審査する裁判所や違法・不当性を審査する建築審査会の審査権限の問題は別異に考えるべきものであり、失当である。即ち、建築審査会は、建築主事の権限が形式的・外形的なものにとどまるとしても、当該確認が実質的にみて違法・不当なものである場合には、その取消を裁決すべきことは、その違法・不当な処分を是正する役割を担っている制度趣旨からみて、明らかである。

以上

この項おわり

■京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3

2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
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京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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by 2011-kyoto | 2014-04-25 00:03 | 2014/04
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2

第2 地区計画制度の濫用

1 地区計画の範囲が恣意的に定められたこと

(1) 平成24年1月20日に行われた第47回京都市都市計画審議会において、岡崎地域活性化ビジョンの実現に向けた都市計画制限の見直し関連案件3件の京都市決定が審議された。
その結果、岡崎地区において、①用途地域の変更、②特別用途地区の決定、③地区計画の決定が承認された。

(2) この都市計画の変更について、京都市は次のように説明している。

「岡崎地域は,都心部と東山の山麓の間に位置しており,東山を背景として,優れたデザインの近代建築物群と岡崎公園の緑や琵琶湖疏水などの広々としたオープンスペースで構成されたスケールの大きい都市空間を形成しており,優れた都市景観・環境を有するとともに,美術館や京都会館,動物園,図書館などの多彩な文化交流施設により,京都最大の文化・交流ゾーンが形成されています。

本都市計画等は,このような地域において,用地地域を変更するとともに,特別用途地区及び地区計画を定めることにより,平成23年3月に策定された「岡崎地域活性化ビジョン」に掲げる「優れた都市計画・環境の将来への保全継承」「世界に冠たる文化・交流ゾーンとしての機能強化」「更なる賑わいの創出」を図ろうとするものです。また,併せて,景観計画を変更し,同地域を「岡崎公園地区特別修景地域」に指定することにより,岡崎地域における広々とした空間の保全,継承を図ろうとするものです。」

すなわち、京都市は上記3件の変更・決定は「岡崎地域活性化ビジョン」を実施するための一体的な施策として位置づけている。


(3) 用途地域の変更については、甲33の右側に赤い枠取りで示された範囲(以下「旧住専地区」という。)において、「第二種中高層住居専用地域,建ぺい率:60%,容積率:200%」を「第二種住居地域,建ぺい率:60%,容積率:200%」に変更した。

これにより、同地域においては、これま 建築が許されなかったホテル、カラオケボックス、ボーリング場、スケート場、さらに10000m2以下であれば、マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場等、勝馬投票券発売所、場外車券売場等も建築が許されるようになった。また、飲食店も「2階以下、床面積1500㎡以下」しか認められなかったものが、10,000㎡以下にまで大きく拡大されることとなった。

このような用地地域の変更については、住民の意見を聞くことが要件とはされていないため、用途地区の変更により、後記のとおり許容される建築物が大幅に増えることは、十分周知されることはなかった。また、地域住民に対してこのような変更の計画についても、またその必要性についても、十分周知されることはなかった。


(4) 他方で、地区計画の変更については、甲34の青色の枠取りで示された範囲で行われた(なお、特別用途地区の指定範囲も同一である。)ため、甲Bに緑色の斜線で示された範囲(「地区計画対象外地区」という。)については、上記用途地区の変更の影響を受けるにもかかわらず、地区計画(および特別用途地区)の対象からは外されてしまった。

その結果、同じく用途地域が変更された区域であるにもかかわらず、平安神宮の敷地内だけは、地区整備計画により建物用途が制限されて、「1住宅(A地区については,その敷地が冷泉通に接するものに限る),2共同住宅,寄宿舎又は下宿(A地区については,その敷地が冷泉通に接するものに限る),3老人ホーム,保育所,身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの,4公衆浴場,5病院,6老人福祉センター,児童厚生施設その他これらに類するもの,7自動車教習場,8ボーリング場,スケート場,水泳場,スキー場,ゴルフ練習場及びバッティング練習場,9マージャン屋,ぱちんこ屋,射的場,勝馬投票券発売所,場外車券売場その他これらに類するもの,10カラオケボックスその他これに類するもの,11建築物に付属する自動車車庫で,地階を除く床面積の合計が600平方メートルを超えるもの」は建築することができないこととなった(甲35)。


(5) このように、旧住専地区は、従来同一の建築規制に服していたにもかかわらず、地区計画対象外地区が地区計画の対象とはならなかったために、当該地区の建築規制が大幅に緩和される事態となっている。
ところが、旧住専地区のうち地区計画対象外地区のみについて建築規制を緩和すべき合理的な理由はな
い。
すなわち、岡崎通の東側地区も、聖マリア教会・幼稚園のある地区も、平安神宮と一体となった界隈景観を作り出していることから、旧住専地区は、従来と同様、同一の建築規制に服するのが相当であることは、地域の実情からいって明らかだからである。

この点、冷泉通以南の岡崎通東側地区は従前から「第二種住居地域」であったことからこれにあわせたとの主張があるとすれば、それは誤りである。なぜなら冷泉通以南は平安神宮の東面と接していないから、地域性が異なるからである。

そうすると、本建築計画は、地区計画対象外地区をあえて外して策定されたものというほかないのである。


2 特例許可制度を用いないことの違法性について

(1) 特例許可制度を用いず、地区計画で高さ制限の緩和を認めることは、次の3つの点で、違法である。

第1点 地区計画では、具体的な建物が当該地域に建築される場合に生ずる地域住民相互の利害調整が十分に図られないこと。
第2点 地区計画と、特例許可制度とでは、検討の対象が異なること。
第3点 本件地区計画は、特定の現行の建物の高さの最高限度の緩和を内容としているところ、そのような提案の当否はまさに特例許可制度の領域であること。


(2) 第1点について

平成24年7月19日、京都弁護士会は、「西ノ京桑原町地区における地区計画において、建築物の高さ制限を緩和することに関する意見書」を作成し、地区計画が策定された場合を、特例許可制度の適用除外とすることは相当でないことから、京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)の計画書において、(適用除外)2(3)で、一定の要件を満たす地区計画区域内の建築物につき、同計画書の規定の適用除外が定められているが、これについては適用除外として認めるべきではなく、適用除外から削除すべきであるとの意見を出している。
そして、その理由について、以下のとおり述べている。

ア 新景観政策下においては、建築物の高さの最高限度を厳格化するとともに、その緩和については特例許可制度によるものとされていること

(ア) 京都市は2007(平成19)年9月、それまでの景観政策を大きく転換する「新景観政策」を施行して市街地について高さ規制を強化し、思い切ったダウンゾーニングを実施している。

すなわち、都市計画の変更により、高度地区の変更(高度地区の計画書の策定)(以下「同計画書」という。)を行い、「歴史的市街地」「山すそ部の住宅地」「市街地西部および南部の工業地域」の3エリアを中心に高さ規制を強化、あるいは新規に実施し、高さ規制の段階についても、従来の10/15/20/31/45メートルの5段階から10/12/15/20/25/31メートルの6段階に変更した。

特に、歴史的市街地については、ほぼその全域で高さが引き下げられ、わけても都心部の幹線道路沿道については45メートルから31メートル、その内部地区については31メートル(マンションでは11階建て程度)から15メートル(同5階建て程度)に引き下げた。

このことは、新景観政策において、建築物の高さが都市景観に及ぼす影響が極めて重大であるとの認識を示し、これまでの景観政策が不十分であったとの反省の下に、市および市民が、将来の京都の景観を保全再生するために、建築物の高さを低く抑えていくという決意を示したものと評価できる(詳細は、当会の2007年2月9日「京都市の新たな景観政策の素案 時を超え光り輝く京都の景観づくりについての意見書」を参照されたい。)。

(イ) その上で、同計画書において、①すぐれた形態・意匠を有する建築物、②公共性の高い建築物などで、市長が当該建築物が存する地域の良好な景観の形成及び周囲の市街地の環境に支障がないと認めて許可したものは、その許可の範囲内において、同計画書の規定による建築物の高さの最高限度を超えることができるとする「許可による特例」の制度(特例許可制度)を認めた。

(ウ) そして、特例許可制度の手続について、「京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例」(特例許可手続条例)を制定した。

この特例許可制度においては、建築主は市長との事前協議を義務づけられ(3条)、協議が整った時は、建築計画書および概要書を市長に提出しなければならない(4条)とされる。また、市長は建築計画の概要を公告して、3週間縦覧に供しなければならず(6条)、建築主は、建築計画にかかる建築物の敷地の周辺住民に周知させる説明会を開催しなければならない(7条)とされている。そして、建築計画について意見を有する者は意見書を提出することができ、建築主にはこれに対する応答義務が課せられている(8条)。

更に、市長の諮問機関として景観審査会が置かれ(13条)、景観審査会は、利害関係人に公開による意見の聴取を行うことができるとされる(19条)。

(エ) この特例許可制度により高さの最高限度を超えて建築物の新築が許可された例に、京都大学付属病院新築工事がある。

これに対する景観審査会では、高度地区による20メートル規制に合わせて新病棟を5階建てにした場合、高度医療を進めるために病院側が必要とする病床(約千床)を確保するには棟数が増え、敷地内に配置できないという必要性が示され、建築計画の内容が詳細に説明されるとともに、8階建てにした場合でも鴨川からの大文字の眺望が阻害されないというシミュレーション結果が示されて、許容性が慎重に検討されている。また、外観上もひさしの深い屋根を設けるなどの配慮を求めることなど、一定の調整が図られた。

このように、特例許可制度のもとでは、建築計画の詳細が市民に明らかになるとともに、特例を認める必要性と許容性が示されることにより、新景観政策との整合性や周辺住民の生活利益との利害調整が慎重に検討されている(なお、当会は2008年3月6日、京都大学付属病院新築工事についても、特例許可制度が安易に適用されることがないことを求めた意見書を京都市に提出しているところである。)。

(オ) また、現在においても、特例許可の適合要件は厳格に運用されている。

すなわち、京都市は、京都府の「京都府民ステーション(仮称)構想」に関する提言〈七条警察署跡地の利活用方策について〉に関し、高さ規制の緩和の可能性について言及し、「運転免許の更新窓口」「交番等の警察機能を備えた地域防犯関連施設」を設ける施設についても、施設全体が高い公共性を有するものとは言えず、また、高さ制限を超えないと公共機能が確保できないといった技術的・客観的理由も想定しがたいとして、特例許可制度による高さ制限の緩和許可は極めて困難であるとし、警察機能のような「一定の公共性」があると考えられる機能を有する施設が設けられるものであっても、「高い公共性」は認められないとして、高さ規制の緩和許可について厳格な態度をとっている。

(カ) このように、京都市は、これまでの景観政策が不十分であったとの反省の下に、市および市民が、将来の京都の景観を保全・再生するために、建築物の高さを低く抑えることを主眼とした新景観政策を実施してきたのである。

イ 地区計画が策定された場合を、特例許可制度の適用除外とすることは相当でないこと

(ア) 現行の京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)の計画書においては、特例許可制度の適用について除外事由が定められており、その一つとして、「都計法(都市計画法)第12条の4第1項第1号に規定する地区計画の区域のうち、同法第12条の5第2項第3号に規定する地区整備計画において、次に掲げるアからエ(「ア建築物等の用途の制限、イ壁面の位置の制限、ウ建築物等の高さの最高限度、エ建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限」)までの全ての制限(以下「高さ等の4つの制限」という。)が定められている区域内の建築物で、当該地区計画の内容に適合するもの」があげられている(以下この要件を満たす建築物を「例外建築物」という)。

このように、例外建築物について、特例許可制度によらずに高さ規制の緩和(高度地区の不適用)が認められているのは、地区計画が作成される場合においては、地区計画の策定過程において、地域住民の意見が地区計画に反映され、それにより、高さ等の4つの制限に関して、地域住民相互間で利害調整がなされることから、敢えて特例許可制度を用いる必要がないと考えられたものと解される。

すなわち、地区計画(都計法12条の4第1項1号)は、「一定の地区を対象に、その居住者の利用する道路・公園・広場といった施設(地区施設)の配置及び規模に関する事項や、建築物の形態・用途・敷地等に関する事項を総合的な計画として定め、開発行為や建築行為をこれに基づいて規制・誘導することにより、地区特性にふさわしい良好な市街地の整備を図ろうとするものであって、①地区のマスタープランとして、地区計画の目標や地区の整備、開発及び保全の方針を定める「地区計画の方針」と、②かかる「地区計画の方針」に従って、道路、公園、緑地などの配置や建築物等に関する制限などを定める「地区整備計画」とからなる。そして②では、?建築物の用途、?容積率、?建ぺい率、?壁面位置、?高さ、?形態・意匠などを定めることができる。
地区計画は、地域住民のまちづくりについての発意を契機として、市と市民が協働して勉強会を開催するなどして地区の問題点・課題を探り、それをもとに市民がまちづくりの具体的な内容の提案・要望をまとめ、そこから市民と市が協働で「地区計画の案の検討素案」を作成し、市民が合意形成をはかって「地区計画の素案」を作成する。市はこれをもとに「地区計画の原案」を作成して公告・縦覧に供する。これに対する関係権利者からの意見を踏まえて、市は「地区計画の案」を作成し、これを再度公告・縦覧に供する。これに住民および利害関係人は意見を提出することができる。その後都市計画審議会で審議し、都市計画決定がなされ、条例化もなされる。

このように、地区計画は、地域住民の合意に基づいて、それぞれの地区の特性にふさわしい良好で質の高いまちづくりを誘導するための計画であり、「住民の合意」に基づいて作成されるべきものである。
また、実際の制度運用においても、事実上、当該地区の敷地の所有者の大多数の合意が必要とされており、地区計画の作成過程において、地域住民の大多数によって、まちづくりの方向性が十分に議論され、高さ等の規制緩和の必要性と合理性が十分に吟味される。

以上のとおり、地区計画においては、まちづくりの枠組みや具体的な規制内容について、地域住民の間で十分に議論がなされることにより、意見のすりあわせや利害調整が行われることから、高さ規制については特例許可制度を用いることは不要であると考えられたものと思われる。

(イ) しかし、現行の都市計画法には、地区計画を定めることのできる街区の最小基準が法定されていないため、現行の地区計画制度では、現実には、地域住民による十分な論議や、利害調整を行うことなく、地区計画を定めることができる。

すなわち、京都会館建て替え問題に関係する岡崎地区の地区計画に続き、今般の島津製作所の所有地のみを対象とする本件地区計画は、利害関係を一にする一人もしくは少数者所有地(以下「少数者所有地」という。)において、特例許可制度によらずに高さ規制を緩和しようとしているものであって、(ア)で述べたような、地域の住民による意見のすりあわせや利害調整を図る過程を経ていない。

その結果、市の承認さえ得られれば、当該地区を所有する所有者の意のままに建築物の高さ等の規制の緩和が許されることになる。そして、このような手法を認めると、一定の敷地を購入し、これに対して地区計画を定めることにより、当該地区及び周辺地区の高さ規制の適用を受けずに高層建築物を建設することが可能となることから、事実上高度地区の指定は画餅に帰すこととなり、新景観政策の趣旨を没却させることとなる。
(ウ) 更に、「少数者所有地」は意図的に作出される場合もある。

すなわち、京都市は、岡崎地区の地区計画の策定に当たり、明らかに同一の地域性を有する街区(一の用途地域に指定されている街区)の中から、住民の存在する部分を排除し、京都市および平安神宮が所有する部分のみを切り分けて「少数者所有地」を作出し、京都市自身および平安神宮を住民とする地区計画を策定した。

新景観政策を施行した京都市自身がかかる潜脱行為を行うことについては、既に当会の2011年10月21日付意見書において、厳しく批判したところであるが、意図的に少数者所有地を作出することは、地域住民による意見のすりあわせと利害調整を企図する地区計画の制度と真っ向から矛盾する結果をもたらすことになるのは明らかである。

(エ) また、京都市においては、地区計画の策定の際の手続としては、都市計画法に規定されている以上に厳格な手続が定められておらず、地区計画の内容の縦覧及び意見の募集が必要とされているのみで、特例許可制度のように、建築主の説明義務や地域住民の意見表明とこれに対する建築主の応答義務も定められていない。

そうすると、少数者所有地について地区計画が定められる場合には、規制を緩和することにより利益を得る当該少数者が規制の緩和に反対することはありえないから、事実上、形式的な縦覧、意見公募の手続さえ踏めば、地域住民との利害調整を経ることなく地区計画を定めることが可能である。

(オ) 上記のとおり、現行の都市計画法が、地区計画を定めることのできる街区の最小基準を法定していない以上、地区計画が策定されれば、その過程において、必ず地域住民による十分な論議、および利害調整を経ることになるとは断じ得ない。したがって、地区計画が策定される場合には、特例許可制度の例外とするだけの内実を有しているということはできない。

そうだとすると、高さ等の4つの制限について定めた地区計画を策定した場合を、特例許可制度の適用を除外することに合理性は認められず、相当でないと言わざるを得ない。

上記意見について、申立人らは相当と認め、これら全部を援用する。

(5) 第2点について

また、地区計画と特例許可とでは、検討すべき対象が全く異なることからしても、地区計画の策定をもって特例許可の対象外とするのは相当ではない。

すなわち、地区計画においては、当該地区の将来像を地区整備計画として定めることができるが、そこにおいては、①地区施設(主として街区内の居住者等の利用に供される道路・公園・緑地・広場などの公共空地のこと)の配置および規模、②用途の制限、③容積率の最高限度または最低限度、④建ぺい率の最高限度、⑤敷地面積または建築面積の最低限度、⑥壁面の位置の制限、⑦壁面後退区域(壁面の位置の制限として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域のこと)における工作物の設置の制限、⑧高さの最高限度または最低限度、⑨形態・意匠の制限、垣・柵の構造の制限、⑩現に存する草地樹林地等の保全に関する事項が定められるのであり(都市計画法第12条の5第6項、施行令第7条の4、施行令第7条の6、施行令第7条の7)、当該地区における土地利用のあり方を、一般的・普遍的に定めるものである。

これに対して、特例許可制度は、当該特定の敷地において建築が予定されている具体的な建物建築計画が、当該地域に適合的であるかどうかを個別的・具体的に判断するものである。

したがって、前者の手続で後者の手続を代替することは、制度論としても不当といわざるを得ない。

(6) 第3点について

加えて、本件のような地区計画の策定は、特例許可制度の潜脱であることがより明らかである。

  すなわち、本件地区計画においては、現に建物の建っているところを狙って高さ規制を緩和するものであるが、このような計画は地区の整備計画とはいえない。これでは、現に存在する建物を将来解体すべきかどうか、そこに同じ高さの建物を建てるべきかどうかという建物自体の将来性を地区計画で定めることになるが、それはまさに特例許可制度のよく審査しうるところである。

(7) まとめ

以上のとおり、一般的にいっても、例外建築物について特例許可制度の適用を除外することは特例許可制度の潜脱として違法であると解されるばかりか、本件の地区計画では、その潜脱が具体的に明らかであるから、本件において、地区計画により高さ制限を緩和することは違法である。


3 条例化によっても、上記違法性は阻却されないこと

本件地区計画は、条例化されている。

しかし、その過程において、特例許可制度の適用された場合と同様の地域との利害調節がなされた事実も、当該建物の建築計画についての地域との整合性が具体的に検討された事実も認められない。
したがって、本件地区計画が条例化されているとしても、上記違法性は阻却されない。

反論書3につづく

■京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2

2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1

平成25年度第1号審査請求事件
平成26年4月25日
京都市建築審査会 御中

反 論 書

請求人ら代理人
弁護士 中島 晃
   同 飯田 昭
   同 藤井 豊

第1 憲法14条違反

1 新景観政策の理念と目的

平成19年9月から施行された京都市の新景観政策は、歴史都市としての京都の良好な景観の保全と創造に向けて、京都市の市街地のほぼ全域で高さ制限を強化するものであり、具体的には、31~10メートルの6段階の高度地区を地域の特性に応じて設定し、中心部から三山の山すそなど周辺部へ行くにしたがって、建物の高さの上限をおさえるものとなっている。

本件地域の高さ制限についても、東山の山すその近くに位置することから、東山の眺望景観の保全等をはかるため、建物の高さの上限を15メートルとしたものである。

こうした高さ制限の強化を中心的な内容とする新景観政策の採用にあたっては、市民の間で、その賛否をめぐってさまざまな議論がなされ、市民的な論議を経たうえで決定されたことは記憶に新しいところであり、それは個々人の利害を超えて、50年後、100年後の将来を見すえたうえで、歴史都市にふさわしい京都の景観を生み出そうとするものであった。

それは、歴史都市としての京都の景観が「公共財産」であるという考え方にもとづくものにほかならない(甲39。平成19年3月7日京都新聞に掲載された高田光雄京都大学大学院工学研究科教授の発言参照)。


2、新景観政策導入の重要な契機となった京都市建築審査会の付言

 京都市が新景観政策の導入に向けて動き出すうえで、重要な契機となったのは、平成12年4月に、京都市建築審査会が審査請求に対する裁決のなかで、異例の「付言」をつけたことである。

  この審査請求の事案は、京都の都心部、中京区釜座町で、住民が自主的に高さ規制を強化して、建物の高さを6階までとする建築協定が締結されていたが、この地域に隣接した地上11階建て、個数24戸の巨大マンションが計画されたことから、周辺住民が町並み景観が破壊されることなどを理由に、建築確認の取消しを求めたものである。

 建築審査会は、裁決で住民の請求をしりぞけたものの、「付言」をつけて、そのなかで、住民が建築協定を締結して、景観・環境を守っている地域に隣接して、都市景観や町並み保全のための住民の努力を無意味にするような規模と形態のマンションが建築されることをきびしく批判し、これに対して行政が的確な対応、対策を打ち出すべき時期にきていると注文をつけた。

 建築審査会が市民の良好な景観の保全・形成に向けた努力を積極的に評価し、上述した「付言」をつけたことが新景観政策の導入につながったという経過は、本件においても銘記されてしかるべきである。


2 地区計画による高さ規制の緩和には一定のルールを要すべきこと

勿論、上述した新景観政策の採用にあたっては、同時に高さ制限を例外的に緩和するための手法として、個別の建築物の特例許可制度と一定の地域で独自のルールをつくる地区制度もあわせて定められていることはいうまでもない。

しかし、こうした高さ制限の例外的な緩和が、無原則的なしくずし的に認められるとすると、新景観政策にもとづく高さ制限の強化が事実上骨抜きになるおそれがあることは明らかである。

こうしたことから、新景観政策のもとで、地区計画による高さ制限の緩和が認められるとしても、きわめて例外的な場合に限定されるべきであって、たやすく認められるものとは考えられてこなかったのである。
現に、新景観政策施行後本件に至るまで、地区計画による高さ制限を緩和した事例が一件もなかったことは、このことを何よりも雄弁に物語るものである。

また、このように地区計画による高さ制限を緩和した事例がこれまで全くなかったことと相まって、京都市においても、地区計画による高さ制限の緩和がいかなる場合に認められるかについて、ガイドライン等を策定するなど、地区計画による高さ制限の例外的な緩和を誘導する措置を何ら講じてこなかった。


3 地区計画による高さ規制緩和が市民に利用されることもなかったこと

以上のような経過のもとで、一般の市民にとって、自己の所有する建物がある地域で地区計画を用いて高さ制限の緩和を図ることは、京都市において上述した例外的な緩和のためのガイドライン等も定められておらず、これを誘導するための措置も何ら講じられていないこと、また地区計画の策定には、地権者のほぼ全員の合意が必要であり、そのハードルは高いこと(上記高田光雄教授の発言)などからいって、その実現は非常に困難であって、事実上不可能に近いと考えられてきた。

   こうした状況のもとで、京都市は自ら都市計画決定をなしうる権限を有していることから、その有する都市計画権限を利用して、地区計画による高さ制限の緩和を図ることは、一般の市民に対しては高さ制限による不利益や犠牲を強いる一方で、行政だけが例外的な緩和による恩恵や特典を享受するものであって、著しく不公平、不平等とのそしりをまぬがれないものがある。

この点に関して、京都市の都市計画審議会の委員の一人である小伊藤亜希子大阪市立大学准教授(住居学)が「規制で不利益を被る人も多いはず。その中で市民合意を得て進めている政策を、市が安易に破るべきではない。これがきっかけでルールが崩れないか心配だ」と述べているのは当然のことといえよう(甲38。平成24年8月15日京都新聞「特例の公平・公正、議論を」と題する論説参照)。


4 本件地区計画による高さ規制緩和がルール無きままに進められたこと

ところが、京都市は地区計画による高さ制限緩和のガイドラインを策定せず、またこうした例外的な緩和を誘導するための措置を全く講じていないという状況のもとで、突然として、京都会館第1ホールという自己が有する施設の建て替えにあたって、高さ制限の例外的な緩和をはかるために、その有する都市計画決定権限を利用して、本件地域での地区計画による高さ制限の緩和に踏み切ったのである。

これは、一般の市民には高さ制限による不利益や犠牲をおしつけながら、京都市が自らの地位と権限を利用して、お手盛りで自分だけは特別扱いによる恩恵と便宜を享受しとうというものであって、一般の市民よりも、行政の都合を優先したものとのそしりをまぬがれず、明らかに不公平、不平等であるといわなければならない。

以上から、京都市は、一般の市民と比較して、地区計画決定に関して、はるかに有利な地位にあることを利用して、京都会館の建て替えという行政の都合と便宜をはかるために、高さ制限の緩和を図ったものと見る以外にはないといわなければならない。

さきに引用した京都新聞の論説が、これを「ご都合主義」と批判していることはまことにもっともなことというべきである。


5 結論

以上のとおりであるから、京都市が自ら有する地位と権限を利用して、京都会館という自己の有する施設の建て替えに関して、地区計画による高さ制限の緩和という特別の恩恵ないし便益を享受したものであることは明らかであり、これは上述した不利益や犠牲を甘受している一般の市民と比較して、著しく不公平、不平等な取り扱いであるといわなければならない。

したがって、この点に関して、いずれも京都市内において地権者たる地位を有する京都市と他の地権者との関係において、憲法14条に定める平等原則違反があることは明らかである。

反論書2につづく

■京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1

2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-1
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-2
2014-04-25 京都会館建築確認処分取消審査請求書「反論書」-3

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6のつづき
2、上記各規範違反も、建築確認の取消事由となること
京都市における建築確認申請においては、上記各規範への適合性が確認されなければ申請を受け付けない扱いになっており、これが認められなければ建築確認がなされることはない。
そうすると、京都市における建築確認審査においては、建築物の上記各規範への適合性が求められているというべきであるから、これが認められない建築物に対して建築確認がなされた場合には、当該確認は違法であるとして取り消されなければならない。
よって、本件建築計画に上記各規範違反が認められる以上、同計画に対する建築確認は、これを理由として取り消されなければならない。
第7 結論
以上のとおり、本件建築計画は違法であり、建築確認は取り消されなければならない。

京都会館の再整備に始まった地区計画制度を濫用した京都市の「新景観政策」に逆行する動きに対して、多くの京都市民が疑問を感じている。一部の企業や大学が関与する事業についてのみ高度規制の緩和を進めようとする恣意的な行政運営に対し、不公平感、不信感を強めている。

また、上記日本イコモス国内委員会からの2013年6月15日付け意見書からも明らかなように、京都市は、京都会館をリビングヘリテージとして残すため、京都会館の建物価値について具体的に明示し、これを元に再整備計画を仕切り直すよう、国内外の権威ある団体から強く求められている(なお、京都市は、ホームページにおいて同意見書を公表せず、市民にその存在を隠したまま、再整備を進めようとしている)。
京都市建築審査会においては、こうした京都市民、国内外の団体からの期待に応え、京都市における本件建築計画の見直しの端緒を開く、慎重かつ充実した審理及び判断がなされるよう、請求人らは切望するものである。

以上
この項終わり

■京都会館建築確認処分取消審査請求書-7

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

新景観政策 リーフレット-「京都市情報館」
時を超え光り輝く京都の景観づくり - 京都市
2013-06-15 京都市長宛ての意見書(日本ICOMS第14小委員会)-「JAPAN ICOMOS INFORMATION no.3/2013」
京都市建築審査会

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5のつづき
第6 その他条例違反
1、本件建築計画は、以下の規範に違反する。
(1) 岡崎文化・交流地区地区計画違反
 京都会館第一ホールは、岡崎文化・交流地区地区計画区域のうち、B地区に存するところ、同地区の建築物等の形態・意匠は、「京都会館の近代性と伝統の融合を感じさせる風格と魅力ある建築物と調和する」ものでなければならない。

イ 京都会館の近代性と伝統
(ア) 京都市は、京都会館の建物価値承継について検討委員会に諮問し、同委員会は、平成24年4月23日、提言を示した(甲27)。

その中で同委員会は、京都会館の建物として承継すべき価値について、以下のとおり提言しているところ、その内容は京都会館の近代性と伝統を具体的に示すものである。

a 空間構成の継承
① ピロティによって中庭に導く「開かれた公共空間」の特質を守ること。
② 中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通まで見通せる空間の流動性を保つこと。
③ ホワイエ、ロビー空間を拡充しようとする際には、現建物の持つ全体の空間構成や外観意匠の価値を十分に尊重して行うべきである。

b 外観意匠の継承
① 現京都会館の外観意匠における特質は日本の建築的伝統との近さである。この印象は、大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられる。こうした立面構成の価値を維持継承できるようにしなければならない。

② 現京都会館の上記の特質をとりわけ明瞭に感じさせる中庭に面した外観については、特にこのことが求められる。

③ サッシ割りなど細部の形状について可能なかぎり原型を保つこと。

④ 第二ホールのホワイエはガラス面を透過して外観と一体化している部分であるから、その空間構成の継承に対しては十分な配慮を払うこと。陶壁画についてもその芸術性に敬意を払いつつ、継承に努めること。

⑤ 第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うこと。

c 景観構成要素としての意義の継承
① フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討および歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうこと。

② 景観シミュレーションを見ても、舞台内高さ27mを確保した基本設計のフライタワーが周辺の風致に与える影響に配慮することが必要であることは明らかである。いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うべきである。

③ 新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材についても、岡崎地域の風致を損なわないよう精緻な景観シミュレーションを行うなど最大限の配慮を払うこと。

(イ) 「DOCOMOMO Japan」の意見書 
20世紀の建築遺産の価値を認めその保存を訴えることを目的のひとつとする国際的な非政府組織の日本支部である「DOCOMOMO Japan」は、2012(平成24)年7月27日付で、「京都会館再整備本件建築計画に対する意見書」を作成し、京都市長外宛に執行している(甲17)。

同意見書は、基本設計について、以下のとおりの問題点を指摘しているところ、このうち③④は、京都会館の近代性と伝統を具体的に指摘している。

① 過半の躯体を除去することによって、当初建築材料の残存率が極めて低くなること。

② 京都会館と共に形成されてきた東山の景観、とくにそのスカイラインが著しく変化すること。

③ ル・コルビュジエ、前川國男などの近代建築家にとって重要となるL型配置の結節点空間の視線の抜けが、第一ホールのホワイエの縮小によって、限定的なものになること。

④ 日本古来の建築に由来する深い庇による水平性の強調や、ピロティや中庭による内外空間の一体化といった、前川國男が試みた近代建築と日本建築の融合というこの建物の特徴が、中庭側の軒下空間を内部化することによって失われること。

(ウ) 前川國男の京都会館の設計
前述のとおり、京都会館を設計した前川國男の設計説明書には、次の記載がある(『説明書』前川建築設計事務所蔵)。

「環境との調和
東山一帯に囲まれた平面的な岡崎公園と、その水平的な性格を象徴するが如き疏水の流れ、それに既存の建物、公会堂、勧業館、美術館等の中層建物の高さなどを考え合わせる時、この場所に巨大マッスの高層建物を置く事は、公園地帯全域に対して不均衡を来すものと思われる。

このために、建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成をとった。

この公園のもつ水平線的性格は建物のボリウムの流れのみでなくバルコニー手摺、外壁を構成するプレキャスト版等、全館意匠の細部にまで浸透せしめ附近全域及び周囲の風光との調和を図った。」
すなわち、前川國男は、「環境との調和」・「附近全域及び周囲の風光との調和を図った」と明確に述べているように、京都会館の設計にあたり、京都会館を岡崎公園・疏水・公会堂・遠くの東山の山並み等、周辺の地域的特性といかに調和させるかに神経を研ぎ澄まし、特に配慮している。

(エ) 上記三者の意見から、京都会館の近代性と伝統は、①中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通まで見通せる空間の流動性と、②大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられる日本の建築的伝統との近さ、③建物の水平基調、すなわち「建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成」にあり、いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うことが必要であることがわかる。

(オ) ところが、本件建築計画は、上記①から③が満たされていない。
わけても、価値継承検討委員会の提言を受けて作成された本件建築計画において、基本的な部分(フライタワーの形状および高さ)について、基本設計に対して何ら変更が加えられていないことは、本件建築計画が京都会館の伝統に矛盾した建築物であることを如実に示すものである(すなわち、本件建築計画の立面図(甲2)と、価値継承検討委員会に提出された立面図を比較すると、建物の外観、特にフライタワーの形状に全く変更が加えられていないところ、景観比較写真(甲4)を見れば、従来の第1ホールが有していた、第2ホールとの連続性や東山をはじめとする近隣景観との調和が本件建築計画によって破壊されていることが明らかである。)。

したがって、本件建築計画は、岡崎文化・交流地区地区計画に違反する。

(2) 京都市風致地区条例違反
 本件敷地の景観保全に関しては、風致地区第5種地域であり、本年2月1日付告示により「岡崎公園地区特別修景地域(B地区)」に指定されている。

 京都市においては、風致地区の許可基準、特別修景地域における許可基準について、「京都市風致地区条例による許可基準と解釈の運用」に拠っている。

これによれば、「岡崎公園地区特別修景地域」については、「形態意匠等の基準の強化及び付加」と題する第7条の第79号において、以下のとおり規定されている(なお、同基準は基準の適用除外や緩和も定めている(1条から4条。甲11・47頁以下)が、第7条は緩和ではなく、「形態意匠等の基準の強化及び付加」とされていることには注意を要する)。

「岡崎公園地区では、既存樹木で構成される広々として緑豊かな通り景観や都市における自然的景観を維持するため、道路及び琵琶湖疏水に面した既存樹木を保全すること。

また、京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)岡崎文化・交流地区地区計画の区域のうち、地区整備計画が定められた区域(C地区を除く。)の建築物は、当該地区計画において定められた建築物等の形態又は意匠の制限に適合するものであること。この場合においては、条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」

 条例第5条第1項第1号ウ(カ)は、建築物等を新築する場合について、同項第2号イ(エ)・同項第3号ウ(カ)は、それぞれ建築物等を改築・増築する場合について、「建築物等の位置、形態及び意匠等が、それらが行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和でなく、かつ、別に定める基準に適合することを求めている。

そして、「別に定める基準」については、施行規則が規定しているところ、建物の形態意匠については、第13条が主なところで以下のとおり規定している。

第13条 条例第5条第1項第1号ウ(カ)、第2号イ(エ)及び第3号ウ(カ)に規定する別に定める基準は、次に掲げるものとする。

(1)  建築物の屋根及び軒に関する基準
ア 勾配を有する屋根で建築物が全て覆われていること。
イ 屋根の形状が入り母屋屋根、寄せ棟屋根又は切り妻屋根のいずれかであること。
ウ 屋根の勾配(軒裏の勾配を含む。)が10分の3から10分の4.5までであること。(以下略)
エ 屋根が日本瓦、平板瓦、銅板その他これに類する金属板、平形彩色スレートその他これに類するもの又は太陽光発電装置その他これに類する太陽熱を給湯、暖房、冷房その他の用途に用いる装置(以下「太陽光発電装置等」という。)のパネルでふかれていること。(以下略)
オ (以下略)

(2)  建築物の外壁に関する基準(略)

(3)  建築物に関するその他の基準
ア 階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の部分(以下「階段室等」という。)が階段室等以外の部分の屋根面から突き出したものでないこと。

イ (以下略)

オ ここで、「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」という点であるが、上述のように、第7条は、あくまで「強化及び付加」であって「緩和」ではないのであるから、上記3箇条を適用しないというのは、それらによって守ろうとする風致景観を、それらの規定の全部を適用するということにはこだわらずに実現しようとする趣旨であって、単に上記3箇条に示す基準に満たないものでもよいというものではない。

このことは、同条項について、「建築物が新築の行われる土地及びその周辺の土地の区域における風致と著しく不調和であったり、別に定める基準が要求する水準に満たないものであってもよい。」などとするものでないことから明らかである。

したがって、たとい「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」としても、その意味は、「同条項の細目的な規定に必ずしも適合しなくても許容される場合がある」ということであって、勾配屋根を採用せず、あるいは、屋根から突出して屹立するような部分がある建物は、風致地区条例に違反するのであって、そのようなものまでも許容する趣旨ではない。
なぜなら、後述するように、勾配屋根とすること、塔屋を設けないことは、都市景観の維持に極めて重要だからである。

カ これを前提として本件建築計画を見るに、同設計は、そもそも(1)で見たとおり岡崎文化・交流地区地区計画に違反する上に、前述のとおり、建物西側(琵琶湖疏水側)に開口部が取られず、外壁面も垂直に屹立するフライタワーの設置を予定するものとなっている上に、同フライタワーは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである。

したがって、本件建築計画は、京都市風致地区条例に違反する。

キ 上記のとおり、「特別修景地域における地域別基準」に、本件敷地に「風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。」とあるのは、単にそれらの基準の適用を除外することだけを許容する規定ではない。

もし、単なる適用除外規定であるとすると、かかる規定は無効である。以下、理由を述べる。
(ア) 勾配屋根とすること、塔屋など屋上に突出部分を設けないようにすることは、都市景観を維持する上で極めて重要である。

このことは、①風致地区条例、眺望景観創生条例に基づく「別に定める基準」において、勾配屋根とすること、塔屋を設けないことが繰り返し出てくること(風致地区条例については、甲11・14頁~15頁。眺望景観創生条例については、甲12別表)、②価値継承検討委員会の提言においても、「第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うこと。」、?「フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討および歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうこと」と指摘されていること、?前川國男も、「建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成をとった。この公園のもつ水平線的性格は建物のボリウムの流れのみでなくバルコニー手摺、外壁を構成するプレキャスト版等、全館意匠の細部にまで浸透せしめ附近全域及び周囲の風光との調和を図った。」として、勾配屋根を採用しフライタワーを屹立させなかったことからも明らかである。

(イ) 告示によって、条例の趣旨を変更することは許されない。
条例は、議会が制定するものであるのに対し、告示は、市長等の公の機関が決定するものであることから、告示はあくまで条例の趣旨・目的に照らし、条例の範囲内の内容に制限される。
そうすると、上記告示は、京都市風致地区条例の趣旨・目的に反することは許されないから、上記告示は、上記キで述べたとおり、「同条項の細目的な規定に必ずしも適合しなくても許容される場合がある」という趣旨であって、勾配屋根を採用せず、あるいは、屋根から突出して屹立するような部分がある建物を許容する趣旨ではないと解すべきである。

したがって、これが単に、風致地区条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)の規定の適用を除外するだけであるとすると、かかる告示は条例違反として無効である。なぜなら、市長に認められている告示制度に関する権限は、あくまでも条例の範囲内に限定されており、条例の趣旨・目的に反する告示を定めることは、市長の告示制定に関する権限の明らかな濫用・逸脱であって、違法となるといわなければならないからである。

(3) 京都市眺望景観創生条例違反
ア 京都市眺望景観創生条例第6条第1項によれば、市長は、眺望景観を保全し、及び創出するため建築物等の建築等を制限する必要がある区域を、その建築物等に係る行為の制限の内容に応じて、次に掲げる区域(以下「眺望景観保全地域」という。)に指定することができるとされ、同項2号で視点場から視対象を眺めるとき、眺望空間にある建築物等の形態及び意匠を制限する区域として「近景デザイン保全区域」を定めることができるとされている。

そして、同条例8条1項2号によれば、近景デザイン保全区域にあっては、視点場から視認することができる建築物等の形態及び意匠は、優れた眺望景観を阻害しないものとして別に定める基準に適合するものでなければならないとされる。

イ これを受けて、平成23年京都市告示第478号(京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定等)別表23-1は、本件敷地のうち、琵琶湖疏水の疏水境からの水平距離が30メートルの範囲について、近景デザイン保全区域に指定しており、建築物等の形態意匠についての基準は以下に示すとおりである。

【種別】
水辺の眺め
【対象地】
23-1 琵琶湖疏水
【視点場の位置または範囲】
川端通から疏水記念館前までの琵琶湖疏水に架かる橋(秋月橋、熊野橋、徳成橋、冷泉橋、二条橋、慶流橋及び広道橋)
【眺望景観保全地域の区域の種別】
近景デザイン保全区域(約16.0ヘクタール)
【眺望景観保全地域の区域の範囲】
川端通から疏水記念館までの琵琶湖疏水の疏水界又は当該疏水沿いの道路の境界線からの水平距離が20メートル又は30メートル以内の別図23に示す範囲

【基準】
1 建築物等は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成される良好な景観を阻害してはならない。

2 建築物等は、次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1)  建築物の屋根は、勾配屋根又は屋上緑化等により良好な屋上の景観に配慮されたものとすること。
(2)  塔屋を設けないこと。
(3)  建築物等の各部は、河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和し、良好な水辺の眺めを形成するものとすること。
(4)  建築物等の外壁、屋根等の色彩は、禁止色を用いないこととし、河川沿いの樹木等や東山の山並みとの調和に配慮したものとすること。
(5)  良好な水辺の眺めの保全及び形成に支障となる建築設備、工作物等を設けないこと。

ウ 上記基準に違反する点
(ア) 上記基準1について
上記基準1は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成させる良好な景観を阻害してはならないと定める。

本件建築計画では、本件建物について、建物西側には開口部がなく、外壁面も垂直に高くそびえたつ舞台フライが設置されることになっており、当該舞台フライは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである。

本件建築計画における舞台フライは、勾配屋根によって琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等と調和していた現状の良好な景観を大きく変えるものであり、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成させる良好な景観を阻害することは明らかである。

すなわち、本件建築計画は、上記基準1及び2(2)に違反する。

(イ) 上記基準2(1)について
旧京都会館第一ホールは、当初よりホール部分の屋根が勾配屋根とされ、最も高い部分(27.5メートル)が疏水側(西側)地上からは見えにくいように設計されており、圧迫感を感じさせにくい構造となっていた。
しかも、旧京都会館第一ホールは、庇に近づくにつれて屋根の幅を狭める巧みな設計により、疏水側(西側)からは第一ホールの屋根と第二ホールの屋根がほぼ一直線上の同程度の高さ(約18メートル)に見えるなど連坦する第二ホールの屋根ともみごとな調和を見せており、京都会館の他の建物及び近隣の建物とも調和が保たれていた。

これに対し、本件建築計画は、現状の勾配屋根を陸屋根に変更するものであるうえ、上記イのとおり、高さ30メートルの突出した舞台フライの部分を有する長大な箱形建築物が立ち上がることになり、疎水沿いからの景観は一変する。

もちろん上記基準2(1)は、陸屋根であっても屋上緑化等によって良好な屋上の景観に配慮できる場合もあることを想定している。

しかしながら、本件建築計画は外観上極めて重大な変化をきたすものであり、良好な屋上の景観に配慮されたものでないことは明らかである。

したがって、本件建築計画は、上記基準2(1)に違反する。

(ウ) 上記基準2(2)について
上記基準2(2)では、塔屋を設けないことが基準として定められている。

その趣旨は、建物から突出する形状の構築物は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等や東山の山並みと調和せず、良好な景観を阻害するものであることから、これを許さないとするところにある。

この点、本件建築計画では、本件建物には、外壁面に垂直に高くそびえたつ舞台フライが設置されることになっている。当該舞台フライは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものであることから、かかる舞台フライは、その大きさ、形状に照らして、勾配屋根によって、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等及び東山の山並みと調和していた現状の良好な景観を大きく阻害する。

そうすると、本件建築計画における舞台フライは、「塔屋を設けないこと」とした上記基準2(2)に違反する。


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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:06 | 2013/12
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
第5 高度地区違反
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4のつづき
1、はじめに
本件建築計画が憲法14条に違反し、違法無効であることは第1で述べたところであるが、本件建築計画は次の通り、都市計画法上の高度地区制限にも適合していないため、本件建築確認は取消しを免れない。

2、地区計画の内容
本件建築計画では、建替後の京都会館第一ホールの高さは、最高部で約31mとなっている。
このような高さが許されるのは、本件敷地が都市計画法上15mの高度地区(都計法8条1項3号)に指定されていたのを、2012(平成24)年2月1日に計画決定された岡崎文化・交流地区地区計画により、建築物の高さの最高限度を31メートルとするように変更されたことによる。

3、地区計画の違法性
しかしながら、本件敷地にあっては、地区計画の策定によって建築物の高さの最高限度を緩和することは違法である。以下、理由を述べる。

(1)新景観政策の実施
京都市は2007(平成19)年9月1日、それまでの景観政策を大きく転換する「新景観政策」を施行して市街地について高さ規制を強化し、思い切った高さ・景観規制の強化を実施した。

すなわち、都市計画の変更により、高度地区の変更(高度地区の計画書の策定)(以下「同計画書」という。)を行い、「歴史的市街地」「山すそ部の住宅地」「市街地西部および南部の工業地域」の3エリアを中心に高さ規制を強化、あるいは新規に実施し、高さ規制の段階についても、従来の10/15/20/31/45mの5段階から10/12/15/20/25/31mの6段階に変更した。特に、歴史的市街地については、ほぼその全域で高さが引き下げられ、わけても都心部の幹線道路沿道については45mから31m、その内部地区については31m(マンションでは11階建て程度)から15m(同5階建て程度)に引き下げた。

このことは、新景観政策において、建築物の高さが都市景観に及ぼす影響が極めて重大であるとの認識を示し、これまでの景観政策が不十分であったとの反省の下に、市および市民が、将来の京都の景観を保全・再生するために、建築物の高さを低く抑えていくという決意を示したものと評価できる。

(2)特例許可制度
その上で、同計画書において、①すぐれた形態・意匠を有する建築物、②公共性の高い建築物などで、市長が当該建築物が存する地域の良好な景観の形成及び周囲の市街地の環境に支障がないと認めて許可したものは、その許可の範囲内において、同計画書の規定による建築物の高さの最高限度を超えることができるとする「許可による特例」の制度(特例許可制度)を認めた。

そして、特例許可制度の手続について、「京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例」(特例許可手続条例)を制定した。

この特例許可制度においては、建築主は市長との事前協議を義務づけられ(3条)、協議が整った時は、建築計画書および概要書を市長に提出しなければならない(4条)とされる。また、市長は建築計画の概要を公告して、3週間縦覧に供しなければならず(6条)、建築主は、建築計画にかかる建築物の敷地の周辺住民に周知させる説明会を開催しなければならない(7条)とされている。そして、建築計画について意見を有する者は意見書を提出することができ、建築主にはこれに対する応答義務が課せられている(8条)。

更に、市長の諮問機関として景観審査会が置かれ(13条)、景観審査会は、利害関係人に公開による意見の聴取を行うことができるとされる(19条)。

(3)本件敷地において、特例許可制度の手続を経ずに高さ規制を緩和することの違法性
 本件建築計画は、(2)記載の特例許可制度手続を経ることなく、地区計画の指定によって、従来の建築物等の高さの最高限度(15メートル)を緩和(31メートル)したことによるものである。

しかし、以下の理由から、本件において、高さ規制の緩和を京都市および平安神宮の所有地において地区計画によって行うことは、違法である。

 地区計画(都計法12条の4第1項1号)は、「建築物の建築形態、公共施設その他の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画」(同法12条の5第1項本文)として、都市の広域的な観点からの計画とは別に、それぞれの地域的特性を活かし、居住環境の整備を図ることを目的とした計画である。

また、地区計画は、地域住民のまちづくりについての発意を契機として、市と市民が協働して勉強会を開催するなどして地区の問題点・課題を探り、それをもとに市民がまちづくりの具体的な内容の提案・要望をまとめ、そこから市民と市が協働で「地区計画の案の検討素案」を作成し、市民が合意形成をはかって「地区計画の素案」を作成するものである。市はこれをもとに「地区計画の原案」を作成して公告・縦覧に供する。これに対する関係権利者からの意見を踏まえて、市は「地区計画の案」を作成し、これを再度公告・縦覧に供する。これに住民および利害関係人は意見を提出することができる。その後都市計画審議会で審議し、都市計画決定がなされ、条例化もなされる。

このように、地区計画は、地域住民の合意に基づいて、それぞれの地区の特性にふさわしい良好で質の高いまちづくりを誘導するための計画であり、「住民の合意」に基づいて作成されるべきものである。

実際のこれまでの京都市の制度運用においても、事実上、当該地区の敷地の所有者の大多数(7割ないし8割)の合意が必要とされており、地区計画の作成過程において、地域住民の大多数によって、まちづくりの方向性が十分に議論され、高さ等の規制緩和の必要性と合理性が十分に吟味される。

以上のとおり、地区計画においては、まちづくりの枠組みや具体的な規制内容について、地域住民の間で十分に議論がなされることにより、意見のすりあわせや利益調整がおこなわれることから、高さ規制についての特例許可制度を用いることが不要とされていたものである。

 しかしながら、本件敷地に関して、京都市が地区計画を指定する範囲は、地域住民が居住している地域を敢えて外して、京都市所有地および平安神宮の所有地に限定して指定していることから、京都市は地域住民の意見を聴取する機会を持たずとも地区計画を策定することができることになる。しかしながら、地域住民の居住している区域を敢えてはずして、地区計画を策定するという手法は、地域的特性を活かすという同制度の目的に明らかに反し、かつ、手続的にも地域住民の合意を経て制定されるというプロセスにも明らかに反している。

このような当該地区を所有する所有者(=京都市)の意のままに建築物の高さ等の規制の緩和が許される地区計画が特例許可制度の適用を受けることなく認められれば、新景観政策の生命線である高さ制限は意味をなさなくなり、新景観政策の趣旨を没却させることとなる。

 特に京都市は、現在、「新景観政策の進化」をめざしており、現状では、公共施設について、建築計画の概要の公告・縦覧や説明会の開催等は免除されているのを、公共施設についても必要とするよう手続の見直しを図ろうとしており、京都市の所有地や一人地区における地区計画による高さ規制の緩和は、このような新景観政策の進化の流れに明らかに逆行するものである。

 よって、本件敷地において、地区計画の指定による方法で建物の高さの最高限度を緩和することは手続法上許されないといわなければならないから、岡崎文化・交流地区地区計画のうち、高さの最高限度を定める部分は無効である。

 上記に加え、本件建築確認は、第4で述べた通り、イコモス20世紀遺産委員会、日本イコモス国内委員会、ドコモモジャパンなどの勧告意見にも違反しており、その違法・無効は顕著なものである。

4、結論
したがって、本件敷地における建築物の高さの最高限度は、当初の高度地区の指定通り15mに制限されているというべきであるから、本件建築計画は高度地区(都計法8条1項3号)に違反するため、建築基準法6条1項の「建築物の敷地に関する法律」に適合するものとは言えないことより、本件建築確認は取消しを免れない。
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6へつづく

京都会館建築確認処分取消審査請求書-5

2012-02-01 岡崎地域における都市計画の見直しについて-「京都市情報館」
新景観政策 リーフレット-「京都市情報館」
時を超え光り輝く京都の景観づくり - 京都市
2012-01-20 岡崎地域の高さ規制緩和を決定 京都市都計審、京都会館再整備へ-「京都新聞」
京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例施行規則
都市計画法
京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例
京都市景観審査会-「京都市情報館」
建築基準法

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:05 | 2013/12
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
第4 不合理な再整備計画に至る経過

京都会館建築確認処分取消審査請求書-3のつづき

1、はじめに
京都会館は,市民の文化芸術の振興を図るための拠点施設として,1960年4月にオープンし、長年、コンサート、集会、講演会や映画の上映会などに活用され,長年にわたり市民から親しまれてきた市民の共有財産である。したがって、一部企業のためにこれが利用されることはあってはならないし、その利益のために京都市が便宜を図ることも許されない。地元岡崎地域の住民はもとより、広く市民において議論を尽くし、その活用方法が決められなければならない。

また、京都会館は、モダニズム建築における日本を代表する建築家・前川國男が設計監理を行った建築物である。建物は,日本建築学会賞,建築業協会賞,建築年鑑賞を受賞しており,京都市内に現存する貴重なモダニズム建築でもある。

かかる京都会館は、現在、京都市の不合理な再整備計画により一部が破壊され、その文化的価値は著しく棄損されてしまった。また、新たな再整備計画は市民不在のまま一部企業からの意見により進められようとしている。

ここでは、このような事態に至るまでの経緯について、国内外からの批判を無視して一部解体に至ったこと、また「世界水準のオペラ上演」という不合理な目的のために進められてきたことについて述べる。

2、文化遺産としての価値を有する京都会館再整備計画の不合理性
(1)京都会館の文化財的価値
 ア 「DOCOMOMO100選」に選定される
 京都会館については、近年、再評価の動きが顕著となり、2003(平成15)年には、戦後日本のモダニズム建築を代表する建築物として、「DOCOMOMO Japan100選」に選ばれた。

DOCOMOMO Japan100選とは、DOCOMOMO Japan日本建築学会という大きな組織により選定されたものであり、いずれも団体の長が名前を列記している。DOCOMOMO Japanは、近代建築の文化遺産としての価値と保存を提唱する国際的な非政府組織「DOCOMOMO」の日本支部である。

DOCOMOMO Japan100選は、もともと1999(平成11)年にDOCOMOMO Japan20選からスタートし、2003(平成15)年に80個の建物を追加し、100選にしたものである。

このうち8番の宇部市民館は、20選に選定された後、重要文化財に指定された。また、14番の広島ピースセンター、45番の世界平和記念聖堂も戦後近代建築で初めて重要文化財に指定された。59番の国立西洋美術館、15番の日土小学校についても、DOCOMOMO Japan20選、100選に選定された後に、重要文化財に指定された。

以上のとおり、重要文化財は、DOCOMOMO Japan20選、100選の中から順次指定されている。したがって、DOCOMOMO Japan20選、100選は、重要文化財になるための暫定リストという扱いを受けている。とすれば、DOCOMOMO Japan20選、100選に選定された建物はいずれも重要文化財の暫定リストにふさわしい建築物であり、DOCOMOMO Japan20選、100選において62番の京都会館も、重要文化財に選定される可能性が非常に高い。このことは、平成23年6月3日付京都新聞において京都市の文化財の審議会委員・京都工芸繊維大学の石田潤一郎先生が、京都会館が将来的に国の重要文化財になることを疑う建築関係者は一人もいない旨明言されていることからも明らかである。

イ イコモス20世紀遺産に関する委員会警告予告
2012年8月13日付で、イコモス20世紀遺産委員会は、京都市長に対し、京都会館再整備計画に関する意見書を送付した。

イコモス20世紀遺産委員会意見書は、20世紀の日本における最も重要な建築家のひとりである前川國男の代表作品の一つとして京都会館の文化財としての重要性を位置付けたうえで、現在、京都市が再整備計画に示す建て替えは、文化財としての価値に対して「取り返しのつかない害を及ぼし、美と調和を破壊する」として危機遺産警告の発令を予告し、計画の見直しを求めた(「イコモス20世紀遺産に関する委員会警告予告」)。

同警告予告は、京都会館の価値につき、京都会館を、20世紀の最も重要な日本人建築家の一人である前川の最も重要な作品であり、日本の近代建築のもっとも重要な作品の一つであり、京都会館が将来にわたって遺されるべき「文化遺産」であると評価し、第1ホールの解体についての警告予告を行った(甲8,9)。

ウ 日本イコモス国内委員会による京都会館再整備計画に関する見解
日本イコモス国内委員会(委員長 西村幸夫  東京大学副学長)は、平成24年9月8日の拡大理事会で審議のうえ、9月10付で、京都市長に対し、「京都会館再整備計画に関する見解」書を送付した(日本イコモス見解」、甲10)。日本イコモス見解も、京都会館が20世紀の日本を代表する建築作品の一つであると評価し、計画の見直しを求めた。

イコモスはユネスコの世界文化遺産に関する諮問機関として周知の世界的NGOであり、20世紀委員会は、イコモスの中で、20世紀の建築物についても、きちんと評価しなければならないということで、設立されたものである。世界遺産との関係で言えば、既に20世紀遺産としては15件の登録例があり、シドニーのオペラハウスは1973(昭和48)年の建築で、京都会館(1960(昭和35)年)よりも13年も新しい建築である。先述のとおり、マドリッド・ドキュメントを2011(平成23)年6月に採択している。

エ 日本建築学会による保存要望書
日本建築学会が、2011(平成23)年3月11日付けで、最高責任者である学会長名で保存要望書を提出している(甲13)。日本建築学会が学会長名で保存要望書を出すのは、取り壊しの問題が生じた東京都千代田区の明石小学校という建物に続き、二例目という異例のことである。

また、当該保存要望書の内容としても、京都市長に対して、京都会館という貴重な建物の持つ高い建築的価値・歴史的価値・都市環境的価値を十分尊重することを求め、かけがえのない文化遺産が永く後世に継承されるよう、格別の配慮を求めるというものである。

オ 京都弁護士会による意見書
 京都弁護士会(吉川哲郎会長)は、既に、「岡崎地域活性化ビジョンの実現に向けた都市計画制限等の見直し素案」に対する意見書(2011(平成23)年10月21日、甲22)、及び「京都会館第一ホールの改修及び岡崎地域の景観保全に関する意見書」(2012(平成24)年5月18日、甲23)を公表し、また2012(平成24)年9月7日、「京都会館第一ホールの解体工事の着手中止を求める会長声明」を出すに至った(甲24)。同会長声明は、京都会館の建物価値を評価し、京都会館の解体工事の着手中止を強く求めている。

(2)国際的警告をも蹂躙した第1ホール解体工事の強行
ア DOCOMOMOJapanの再度の意見書
 新たな第1ホールに関する基本設計が京都市自身が設置した「建物価値継承検討員会」の提言さえ無視して、変更なく公表されたことに対し、DOCOMOMOJapanは、改めて第1ホール解体を中止することを求め、加えて基本設計が京都会館の建物価値を継承するものになっているかを合理的方法に基づいて再検証する透明性のある委員会を設置して、計画及び基本設計の見なおしを行うことを求める意見書を2012(平成24)年7月27日に京都市長に提出した(甲17)。

同意見書の中では、2011(平成23)年6月にイコモスの20世紀遺産に関する学術委員会において採択された近代建築物保存についての国際的ガイドラインです示されているマドリッド・ドキュメントの遵守を強く求めている。

そこでは、生きている文化遺産・使われる建物(リビング・ヘリテージ)として、歴史的建造物遺産の文化的価値を継承することを目的に、機能変化を含む改修などの変化も視野に入れながら、その資産のインテグリティ(完全性)を喪失させないことのガイドラインが示されている。

手続的には、まず、継承しようとする建物の価値を明らかにしたうえで、新たな要求性能を検討し、それが継承すべき価値を損なわないかの確認を具体的かつ精緻に行いながら、最小限の改修を施す計画を合理的方法論に基づいて策定することが改修を伴うリビング・ヘリテージにおいて重要である。

インテグリティ(完全性)とは、その建物がその建物であることに必要な統一性のことであり、京都会館第に当てはめれば、寺院建築を思わせる勾配屋根と水平の大庇、そしてそれが、疏水沿い(西側)からの景観や、武徳殿側(北側)からの景観を始め、周囲の景観と調和していることである。

イ イコモスの20世紀遺産に関する学術委員会の警告予告の発令
上記のとおり、同年8月13日付で、イコモスの20世紀遺産に関する学術委員会(以下、「20世紀遺産委員会」という)から京都市長宛に警告予告の文書が出されるに至った。

20世紀委員会はこれまで、2007(平成21)年のストックホルム図書館、2012(平成24)年に入って香港政庁についで、3例目の遺産危機警告(ヘリテージ・アラート)の予告を発令した。

同委員会は、京都会館の価値について精査したうえ、「前川國男の素晴らしい建築作品であり、敬意を払われ、遺されるべき文化遺産です」と認定し、今回の計画自体がその美を破壊するものであると警告している。
これまで、ストックホルム図書館の件ではストックホルム市は取り壊し計画を取りやめ、保存・改修に変更している。

ウ 日本イコモス国内委員会からの見解書及び質問書
これを受けて日本イコモス国内委員会(委員長は西村幸夫東京大学副学長)からも同年9月10日には見解書(甲10)が、9月24日には質問書(甲11)が提出されている。

ところで、インテグリティに関し、京都会館の再整備については、第1ホールの形状に大きな変更を加えるものであるが、京都市はインテグリティ確保のための検討自体をそもそもしていないのである。

日本イコモス国内委員会が、京都市に対し、インテグリティの確保に関し、強い懸念を示す質問書を送付したことは当然である。

エ 第1ホール解体の強行
京都市は、これらの世界的な権威ある専門家集団の警告を受けて、京都会館第1ホールの解体を中止し、日本イコモス国内委員会などのサポートを受けて保存・改修案の再検討を行うべき注意義務があった。

しかしながら、京都市は、同年9月10日の解体工事の着手にとどまらず、10月26日からは京都会館第1ホールの躯体解体工事を強行するという、EU諸国を初め発達した文明国においては到底考えられない文化財の破壊を強行したのである。

(3)日本イコモス国内委員会からの新たな意見書の送付 文化遺産喪失の危機
日本イコモス国内委員会は、2013(平成23)年6月15日付けで、京都市長に対して、新たな意見書を送付している(甲7)。

ここでは、この間の議論を踏まえ、日本イコモス国内委員会が、「京都会館再整備の議論を始めるまえに、その価値の所在を具体的に明示しなかったことに起因していると判断するに至りました」と述べ、京都会館再整備計画に対して、根本的かつ本質的な問題を提起している。

そして、京都会館の建物価値について、「継承すべき価値が部分的なものに留まり、京都会館のインテグリティ、総体としての価値継承の議論が不明瞭なものとなっています。」「マドリッド・ドキュメントに照らし合わせてみても、京都会館のインテグリティ、総体としての価値の担保は経緯を精査する限り証明されているとは言い難いものとなっています」と述べている。

これは、現在の京都会館再整備計画が、京都会館の建物価値・インテグリティを喪失させるものであることについての強い懸念が示されたものであり、京都会館がリビング・ヘリテージとしての価値を喪失する危機に直面していることを警告するものである。

まさに、世界的な文化遺産の喪失の瀬戸際にあるというべきなのである。

(4)小括
以上のとおり、現在の京都会館再整備計画(本件建築計画)が、京都会館の建物価値を継承し、世界に誇るべきリビング・ヘリテージとして残していくに足りるものではないことは、一層明らかになっている。
かかる不合理な再整備計画をそのまま進めることは、文化・歴史都市としての京都市の品格を自ら貶める行為であり、恥ずべき行為であると言わなければならない。

2 実現不可能な「世界水準のオペラ上演」を目的として再整備計画が作成された経緯
(1)京都会館再整備の基本的な方向性に関する意見書(2006(平成18)年12月策定、甲18)において、保存の方針が示されていたこと
京都市は、2004(平成16)年度に策定した京都市基本計画第2次推進プランにおいて「京都会館の再整備構想の策定」を政策項目として掲げ、同年7月には、年次計画を策定した。

そして、平成17年度に、京都会館再整備検討委員会設置要綱を策定し、「京都会館再整備検討委員会」を設置した。

同委員会では、京都会館の建物の歴史的価値、現在の稼働状況や利用用途、ハード面の劣化の状況、他事例との比較調査、機能面における利用者及びプロモーターからのニーズ調査等を踏まえ、【A(地上躯体部分の増築なしの回収)】、【B(舞台部分等を拡張する改修)】、【C(建替え)】の各案を比較検討した。なお、B案の増築も、第1ホールの舞台・楽屋部分、第2ホールの舞台袖・ロビー部分に一部増築する程度の想定であった。

そして、平成18年12月に同委員会が策定した「京都会館再整備の基本的な方向性に関する意見書」(以下、「平成18年意見書」という)においては、「総合評価」として、「以上の事項を総合的に勘案した結果、委員会としては、現在の京都会館の建物を保存・継承しながら、施設水準の向上のために必要となる機能の再整備を行う【A】案もしくは【B】案を中心として、今後詳細な再整備の構想・計画を立案していくべきと判断する。」と結論付け、保存の方針が示されていた。

(2)岡崎地域活性化ビジョン検討委員会において、突如、「世界水準のオペラ上演」を実現する再整備計画を進める方向性が示されたこと

ところが、2010(平成22)年7月、京都市が設置した「岡崎地域活性化ビジョン検討委員会」が、「京都会館で世界水準のオペラ上演」を実現できるように再整備する方針を示した。「岡崎地域活性化ビジョン検討委員会」では、京都会館の再整備を中心に議論はなされておらず、上記平成18年意見書を踏まえたものではなかった。

そして、2011(平成23)年5月、京都市は、「岡崎地域活性化ビジョン」において、「「京都会館」は,岡崎地域活性化の核として,世界一流のオペラの開催が可能となる舞台機能の強化をはじめ,会議棟や中庭,二条通沿いをお洒落なカフェ・レストランなど賑わい空間とするための再整備を進める。」との方針を示したのである。
(3)京都会館再整備基本計画において、「世界水準のオペラ上演」を実現することを基準にして、舞台内高さ、舞台奥行きが定められ、第1ホールの建て替え案を決定したこと

そして、同年6月には、京都市は、「京都会館再整備基本計画」(甲19)を策定し、「第1 ホールについては,オペラ,バレエなどに代表される総合舞台芸術も可能な舞台を備えた多目的ホールとして整備する。」と決定した。

同「基本計画」36頁の表が、極めてわかりやすく示しているが、

舞台奥行
15m 吹奏楽やポピュラー音楽の公演が可能な水準
18m オペラの上演が可能な舞台水準
20m 世界水準のオペラが巡回する日本のホールとほぼ同程度の舞台水準
舞台内高さ
20m 多目的ホールの最低水準
24m オペラの公演も可能な舞台水準
27m 世界水準のオペラが巡回する日本のホールとほぼ同程度の舞台水準

との整理がされており、舞台内高さ及び舞台奥行を決定したのは、「世界水準の」オペラ上演という基準である。

37頁のA案B案の比較においても、舞台奥行20m、舞台内高さ27mを実現できるのは改修案Bであることが示され、結局B案が採用さており、世界水準のオペラ上演を目的として建て替え案が採用されたことは明らかである。

そして、京都市は、「世界水準のオペラ」の定義については、「海外では、ミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラ、フィレンツェ歌劇場、メトロポリタンオペラ、ベルリン歌劇場、パリオペラ座、及びウィーン国立歌劇場など、歌劇場自らが制作を行い、海外から招聘され、引越し公演を行っているオペラを想定。 国内ではは新国立劇場制作のオペラのように恒常的に自主制作され、公演を行っているオペラを世界水準と考えている」と説明している。

(4)「世界水準のオペラ上演」が敷地条件から困難であること
しかし、京都市は、平成22年3月、「京都会館再整備基本構想素案報告書」(以下、「平成22年素案」という。甲20)には、明らかにこれと矛盾する内容が記載されている。

すなわち、オペラやバレエの来日公演は「大規模多面舞台を備えたホールに集中」していると指摘し、大規模多面舞台については「オペラ等の上演が可能な、主舞台の袖や奥に舞台転換可能な大型の舞台を備えたホール」と説明をしたうえ、「オペラは、京都会館では敷地条件から、最新ホールのような大規模多面舞台の確保は困難である。バレエやミュージカルでの利用を中心に、第1/第2ホールそれぞれ可能な範囲でニーズに応えていく必要がある。」(16頁)と記載しているのである。

したがって、京都会館における世界水準のオペラ上演は、第1ホールの形状如何に関わらず、「敷地条件」から困難であり、また他の大規模多面舞台を有するホールとの競合の観点から、ニーズに応えられないことが指摘されていたのである。

このことは、住民らの京都会館の解体差止請求を退けた不当な京都地裁判決(平成24年(行ウ)第33号)においても、「世界水準のオペラなるものが実施できない舞台規模である」と指摘されているところであり、京都市も訴訟を含め正式な場面においては、オペラ上演目的の再整備であるとは主張できなくなっている。
しかし、この「オペラ上演」については、マスコミでも報道され、現在もなお市民の中ではその印象が強く残っている。京都市は、あたかも「世界水準のオペラ上演」が可能なホールを整備するかのうように、市民を騙して再整備計画を進めたのである。

(5)小括
以上のとおり、本件建築計画は、合理的な検討を経ずに策定されたものであり、上記建物価値の喪失に見合うだけの利益が得られることもなく、極めて不合理なものであると言わざるを得ない。

京都会館建築確認処分取消審査請求書-5へつづく 

京都会館建築確認処分取消審査請求書-4

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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:04 | 2013/12
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3

京都会館建築確認処分取消審査請求書-2のつづき

第3 審査請求人の利害関係(不服申し立ての利益ないし適格)

1、はじめに

本件審査請求人には、下記のとおり、不服申し立ての利益ないし適格がある。


2、本件敷地周辺地域に居住する者

本件敷地周辺地域は、都市計画法上15メートルの高度地区(都市計画法8条1項3号)に指定されており、また、新景観政策は、景観利益の重要性にかんがみ、将来の京都の景観を保全・再生するために、建築物の高さを低く抑えることを目的として施行されている。本件敷地周辺地域に居住する者は、建築物の高度制限を自ら遵守することにより、東山の眺望や岡崎地域の豊かな景観を守り、日常的に享受することを実現してきた。

しかし、本件建築確認により、本件敷地には、高さ31メートルの直方体が建築されることとなり、豊かな眺望や景観が阻害されることとなる。

また、本件建築計画に基づく建築工事による騒音や振動、工事車両による交通量の増加等の生活環境への影響を受ける立場にあり、また建物完成後は来館者の増加、交通量の増加、中庭での屋外イベントによる騒音などの生活環境への影響を受ける立場にある。

したがって、本件敷地周辺の地域に居住する地域住民は、本件建築確認により、現在享受する景観利益や生活環境に多大の不利益を受ける者であるため、不服申し立ての利益ないし適格がある。


3、そのほかの京都市住民
新景観政策により強化された高度規制が課されている京都市に居住する住民は、その高度規制を守り、自らの財産権制限を受忍することによって、京都市の豊かな景観に対する利益を享受するという互換的利害関係を有している。そして、不合理な理由により、また恣意的な判断により規制を逃れる者がいると、景観政策に対する信頼は容易に破壊されてしまうために、規制を受ける者が景観を維持する意欲を失い、景観破壊が促進される結果を生じやすい。すなわち、規制を受ける者の景観に対する利益を十分に保護しなければ、景観の維持という目的の達成自体が困難になるため、特定の景観を享受する利益については、個々人の個別的利益としても保護されるべきである(互換的利害関係)。

したがって、本件敷地周辺に居住する住民でなくとも、京都市に居住する住民については、公平に規制を受ける権利があり、やはり岡崎地域の景観に対する利益を有しており、これが保護されなければならず、同住民は、本件建築確認により、景観利益に多大の不利益を受ける者であるため、不服申し立ての利益ないし適格がある。


4、小括
 以上のとおり、本件審査請求人に、不服申し立ての利益ないし適格があることは明らかである。

京都会館建築確認処分取消審査請求書-4へつづく

京都会館建築確認処分取消審査請求書-3

京みやこの景観ガイドライン
2012-06-05 京都会館再整備工事に係る基本設計について-「京都市情報館」
京都市の新景観政策 特例の公平・公正、議論を-「京都新聞」
事件報告 京都会館と新景観政策を守れ!-まきえや2012年秋号
新景観政策 リーフレット-「京都市情報館」

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:03 | 2013/12
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
2013-12-05 京都会館建築確認処分取消審査請求書-2

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1のつづき

第2 請求人の想い

1、はじめに  
 京都会館は、長年にわたり市民の文化ホールとして親しまれて来たものであり、東山の景観とよく調和した建築物として歴史的文化的価値が極めて高いことは京都市自身が認めているところである。そうした極めて価値の高い京都会館第一ホールの解体強行の上に成り立つ「新京都会館」の建築にあたり、「京都会館の保存・改修」を望んできた地域住民、京都市民、日本全国から寄せられた1万2千筆を超す署名に込められた声が反映される形で、その建築計画に生かされるべきであり、多様な声に応えないまま建築確認がなされたことに対して、審査請求を行うものである。

 京都会館を含む岡崎公園一帯は近隣住民にとっては、豊かな自然と触れ合える場であり、公園から眺める伸びやかな東山の景観とともに日々の生活を送ることによって心の安らぎ、生活の充実感を覚える場である。また、近隣の保育園、幼児園の園児たちにとっては、安心・安全な散歩道や自然と触れ合える遊びの場としても活用されている。さらに、学齢期の子どもにとっては、緑豊かな放課後を過ごし東山の眺望のもとでのびのびと成長できる場である。市民にとっても、疏水小道の散策、文化・スポーツ施設を訪ねる中で出会う豊かな自然と東山の眺望は、心癒され明日への活力につながる。国内外から観光に訪れる人々のとっても、豊かな自然と伸びやかな景観は大きな魅力であり、テレビのインタビューに対して「ここは見晴らしがよくてとてもいい」と述べているのは象徴的であり、高く評価されるところである。

 京都会館は岡崎公園と一体化した建築空間を形成することで、公園一帯の眺望・景観や自然と調和した価値の向上に寄与してきた。

 こうした岡崎公園一帯のかけがえのない価値を守り、次の世代に残していくのが私達の願いであり、今を生きる私たちに課せられた使命でもあると考える。

2、京都市は住民、市民への説明責任を果たしてきたか
 京都市は今年7月31日「新京都会館(ロームシアター京都)建築工事説明会」を行ったが、あくまで「工事説明」が目的であり、「新京都会館」が一体どのようなものになっていくかについては、冒頭の概要説明のみにとどまり「新京都会館」についての説明会は行わないと表明した。これをもって住民、市民への十分な説明がなされたとは到底いえるものではない。

3、京都市は住民、市民に樹木伐採の中止の声や、交通安全への懸念に対しての責任を放棄していないか
 上記「工事説明会」において、住民から京都会館東側に位置する貴重な在来種の大きな柳の木を伐採しないよう繰り返し求められたのに対し、市側は伐採予定を変更しないとの返答の上、他の既存樹木の保全についても明言しなかった。また、「新京都会館」の工事と同時に進行が想定される周辺地域でのいくつかの大規模マンションや飲食施設の新築工事等の状況把握すら行われていないことが明らかとなり、工事期間中の周辺道路の安全への懸念が高まっている。

4、建築確認手続きの問題点
 京都市は新京都会館の建築確認がおりていない9月23日に着工式を行ったと報道された。その後設置された工事現場の標識によれば、建築主が京都市長、建築確認審査を行ったのは京都市建築主事となっている。住民、市民、専門家による異論が多数ある公共建築物の建築確認手続にあたり、建築主とその審査する側が同じ京都市であることは、極めて重大な問題をはらんおり、そのチェック体制が問われる。

5、高さ31mとされる直方体の大ホールで果たして景観は守れるのか
 建築予定の大ホールは高さ31mの直方体とされている。周辺の高さ規制は15mであり、近年疏水西側に建設されたマンションなどもその規制のもとで建てられた。これは東山の景観・眺望を守り保護するための規制である。15mの高さ規制のもとに建てられたマンションの東側に建てられる大ホールの高さ31mがなぜ京都市の建物だから特別に許されるのか。そのことにより、疏水西側から望む東山の景観は阻害されないのか。

 また、直方体の形状は東山のなだらかな山並みと調和するのか。こうした配慮を欠く大ホールの設計そのものが京都市が推進すべき「景観保護」と大きく矛盾し、行政の公平性への不信が強まっている。

6、今後の「岡崎公園活性化計画」の悪しき前例となる懸念
 京都会館再整備事業を含めて、「岡崎活性化ビジョン」に基づく様々な計画が京都市により進められようとしているが、2011(平成23)年6月に地元岡崎で行われた京都市による説明会においても、住民からの「静かな岡崎を壊さないでほしい」という圧倒的多数の声が聞かれた。その不安や懸念はその頃よりさらに広がっている。美術館をはじめ岡崎公園にある京都市の所有施設が今後どのように再整備されるのか、その際今回の京都会館再整備に見られるような「環境・景観・まちづくり」への配慮を欠くやり方、住民、市民に知らされないままで進められるのではないかという不安が多数聞かれるのは当然である。この間、京都市はこうした住民、市民の不安に応える手立てをとって来なかったことを反省し、今回の京都会館の建築計画及び今後の「岡崎活性化計画」に住民、市民参加のしくみを創設した上で、その声を生かし、修正、変更すべきである。

7、賑わい施設の計画・運営を一部事業者に委ねることで周辺の店の営業はどうなるのか
 「新京都会館」の建築概要の説明にあたって、新たな「賑わい施設」の設置が含まれている。「その施設の運営を一部事業者に委託する」と伝えられているが、そうした「賑わい施設」が始動することにより、周辺の店舗にどのような影響を及ぼすのか全く考慮されていない。また、周辺店舗には何がどのようになるのか詳細が知らされないまま現在に至っている。建築概要にはレンタサイクルなどの活用が計画されているとの記載があるが、周辺道路は今でも混雑しており、住民にとって交通安全の面から大きな危険を感じている。こうした新京都会館の運営にかかわる問題も十分な情報公開が行われず、もっとも影響を受ける周辺店舗や住民の声を生かす場も保障されていない。新京都会館の運営にあたっても情報公開と周辺店舗、住民参加の場が望まれる。

6、住民、市民、専門家の声を広く生かした「新京都会館」の建築を
 私達はこの間の経過の中で、「京都会館」が東山のなだらかな山並みや周辺の自然・景観との調和を図った前川國男の名建築であり、その価値は保存・継承されるべきものとしてイコモス20世紀遺産委員会日本イコモスドコモモジャパンなど権威ある団体からも京都市への厳しい警告や指摘があったことを知った。こうした国際的にも国内的にも保全を求められた建物価値の可能な限りの復元や、大切にすべき自然保護、景観保全との整合性のある方向で、京都会館再整備事業の見直しが行われるべきである。

 以上述べてきたように、「新京都会館」建築には重大な問題点が多数あるのは明らかであり、「憲法に定められた法の下での平等」の原則、さらにその下で定められた法令をもとに適切な審査の上で、京都市長による計画通知に対しては、建築確認がなされるべきではないと考える。

京都会館建築確認処分取消審査請求書-2

2013-07-31 『京都会館再整備工事』工事説明会の開催について-「京都市」
2013-07-31 『京都会館再整備工事』工事説明会 配布資料-「京都市」
2012-06-05 京都会館再整備工事に係る基本設計について-「京都市情報館」
2011-06-24 「京都会館再整備基本計画」の策定について-「京都市情報館」
2013-09-23  ロームシアター京都再生へ起工式 16年オープン-「京都新聞」
2011-06-29 市の岡崎地区活性化ビジョン 住民「静けさ維持を」-「京都新聞」
2011-05-02 「岡崎地域活性化ビジョン」ができました!-「京都市情報館」
2012-08-26 京都市長宛:「イコモス意見書」京都会館再整備基本設計に対する意見書-「ICOMOS ISC20C」
2013-06-15 京都市長宛ての意見書(日本ICOMS第14小委員会)-「JAPAN ICOMOS INFORMATION no.3/2013」
2012-08-08 京都会館再整備基本設計に対する意見書-「DOCOMOMO Japan」 

2014-05-09 京都会館審査請求裁決書-京都市建築審査会

京都会館建築確認処分取消審査請求書-1
京都会館建築確認処分取消審査請求書-2
京都会館建築確認処分取消審査請求書-3
京都会館建築確認処分取消審査請求書-4
京都会館建築確認処分取消審査請求書-5
京都会館建築確認処分取消審査請求書-6
京都会館建築確認処分取消審査請求書-7
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by 2011-kyoto | 2013-12-05 00:02 | 2013/12