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2012-09-26 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書-「京都会館を大切にする会」
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様へ「京都会館を大切にする会」より9月26日付けにて下記の意見書を送付いたしました。

京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書

2012年9月26日
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会
各位

京都会館を大切にする会
代表 吉村篤一

拝啓、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
私たちは京都会館再整備基本設計について、適切な保存改修となるよう運動をしながら、その経過を見守ってきましたが、残念ながら好ましい結果とはなりませんでした。

新聞報道等でもご存知かと思いますが、本年6月4日に京都会館の基本設計が公表された後、7月27日に、近代建築の保存を提唱する国際組織の日本支部であるDOCOMOMO Japanから鈴木博之代表名で、門川大作京都市長に別紙1のような「京都会館再整備基本設計に対する意見書」が提出されました。その結論部分は次のように記されています。

「今回発表された『京都会館再整備基本設計』には残念ながら継承されるべき建物価値は反映されておらず、新たな要求性能には応えたものの、結果として京都会館の歴史的価値を喪失する再整備基本設計となっています。

以上のことから、日本を代表する建築家である前川國男の設計によって1960年に建てられた戦後近代建築の傑作であり、近代建築と日本建築の融合を成し遂げたと近代建築史上に位置づけられ、京都の歴史的景観を構成する重要な建物である京都会館の歴史的、文化的価値を失わないためにも、2012年9月に予定されている「第一ホール解体」を中止し、『京都会館再整備基本設計』が京都会館の建物価値を継承するものになっているかを合理的方法に基づいて再検証する透明性のある委員会を設置し、計画及び基本設計の見直しを行うよう意見申し上げます。」


8月下旬には、ユネスコの諮問機関であり、世界遺産の登録の審査や監視活動を続けている国際記念物遺跡会議イコモス(ICOMOS,本部パリ)の「20世紀遺産に関する国際学術委員会(ISC20C)」において、厳格で独立した審議による評価が行われた結果、シェリダン・バーグ委員長名で、門川大作京都市長に別紙2のような「京都会館再整備基本設計に対する意見書」が提出されました。その要点は次のようになります。

「京都会館は前川國男の最も重要な作品です。このプロジェクトで彼は、近代建築運動の思想が具現化された新しい文化施設を、京都という町が今も昔もそうであるように、伝統的な歴史上のコンテキストに適合させながら作ることに成功しました。素晴らしい建築作品であり、敬意を払われ、遺されるべき文化遺産です。

ICOMOS ISC20Cは、京都会館に対する今回の改修計画を精査し、次のように懸念しています。この計画は、この非常に重要な遺産に対し、取り返しのつかない害を及ぼします。提案されている新しい舞台のサイズとデザインは、前川の設計思想と細部によって形成されている美と調和を損なうでしょう。(中略) 我々は最大級の敬意を持って、京都市に、現存する京都会館を変える現在の計画を再考し、劇場のプログラム的なニーズを満たしながらオリジナルの建築物の遺産価値を残せるような、よりよいデザインを見出すべく努力することを要求します。」


これを受けて、9月10日には、「日本イコモス国内委員会」からも別紙3のような「京都会館再整備計画に関する見解」が、西村幸夫委員長名で、京都市長宛に提出されました。そこには、次のように記されています。

「イコモス国内委員会として、国際学術委員会ISC20C委員から経緯を聴収するとともに京都市による京都会館再整備計画を省察し、以下のことを確認しました。

①京都会館は現在、国内法において文化財としての登録・指定がされていないものの、20世紀の日本を代表する建築作品のひとつであり、ある一定の文化財としての価値を有していること。

②京都会館は第一ホールを中心としてさまざまな機能上の問題が竣工当初から指摘されてきており、また、経年変化によりさまざまな物理的性状の問題も有していること。

③京都市は上記①および②の双方の問題の解決するために、慎重に検討を重ねてきたこと。

しかしながら、

④京都会館再整備基本設計において、20世紀建築のリビング・ヘリテージ(使われる建物としての継承)としての機能変化を含む改修などの変化に対して、継承すべき価値の判読が困難で、かつその資産のインテグリティ(完全性)の確保が合理的に示されていないこと。

⑤京都会館再整備基本設計における資産のインテグリティ(完全性)が保たれているかの検証と、その確保のための新たな要求性能の再検討がなされていないこと。

『京都会館の建物価値継承に係る検討委員会』提言の示す『近代建築を保存・継承する新たな道筋をつけること』に対する説明が不十分であること。

京都市は、①および②の点を止揚して、新たな京都会館のあり方を提案するのであれば、上記の④~⑥の疑問点に対処し、かつ、その解決策が京都会館の最小限の改変案であることを合理的に示すべきであると考えます。」


また、日本イコモス国内委員会は、第14小委員会「リビング・ヘリテージとしての20世紀建築保存・継承に関する課題検討(京都会館再整備計画に関する検討)」を急遽発足させています。

以上、いずれの書面も京都会館の建物価値が損なわれるので計画の見直しを求める内容となっています。

これらに対して京都市は、京都会館の建物価値継承に係る検討委員会で既に慎重に検討したうえで基本設計を取りまとめたので見直す意向がないことを示しています。

更に京都会館を大切にする会賛同人の長崎氏の質問状に対する京都市の回答書(別紙4)では「建物価値継承に係る検討委員会提言書の前後において、基本設計の内容に変更はありません」と明言しています。

こうした状況の変化を受けて、今何よりも大切なのは、貴検討委員会が京都市へ提出された「提言書」が基本設計に反映されていないものであること、そして、上記の各組織からの意見書や見解にもあるように基本設計が建物価値を損なうものであることを、貴検討委員会の貴重な議論が無に帰さないためにも、改めて京都市へ文書で伝えることだと考えます。

このような現在の状況を打開し、貴重な文化的価値を守るためにも、貴検討委員会の各位に対してご協力をお願いする次第です。何卒ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

敬具

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■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員の皆様への意見書-「京都会館を大切にする会」
◆京都会館の建物価値継承に係る検討委員会委員

石田潤一郎 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦) 副委員長に選任
伊藤久幸 財団法人新国立劇場運営財団技術部長
衛藤照夫 社団法人京都府建築士会会長
岡崎甚幸 武庫川女子大学生活環境学部建築学科教授、京都大学名誉教授 委員長に選任
澤邉吉信 岡崎自治連合会会長
道家駿太郎 社団法人日本建築家協会近畿支部京都会会長
中川理 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦)
橋本功 前川建築設計事務所所長


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2012-06-10 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(4)-「週刊京都民報」
2012-06-10 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 
石田潤一郎氏に聞く(4)


2012年6月10日
(3)のつづき

──提言では、京都会館の保存とは、どうあるべきと提起しているのでしょうか。

石田 京都会館が戦後建築のなかでも傑出した作品であり、やがては重要文化財に指定されうる存在であるととを疑う人は建築の世界では、ほとんどいません。「提言」では、これを前提にしています。その上で、基本的考え方として、「機能の向上や利便性から計画される改修であっても、歴史的な建物価値を最大限継承するため、市の『再整備基本計画』を幅広く解釈して柔軟に運用することが必要である」と述べています。
つまり、建物の歴史的価値を守らずして何のための「再整備」計画なのか、同計画にとらわれるべきではないと言っています。
──相当厳しい提起ですね。

石田 そうです。
私は文化財の保存、修復について、文化的価値と機能上の要求との単純な差し引きだけを考えてはいけないと考えます。
 文化財修復では「可逆性」という概念が強調されるようになっています。改造部分を元に戻そうと思ったら、戻せるような方法をとるべきだというのです。この視点から京都会館の改修、再整備を考えるなら、そのあり方は、現代の要請ありきではなく、その要請が変わったときには、改修以前に戻すという展開も十分視野に入れておく必要があるはずです。

 ほかの委員からも、同趣旨の発言が相次ぎました。
 道家駿太郎(日本建築家協会近畿支部京都会会長)は、「機能的に最小限の、どうしても必要なもの以外のことはせずに全体の保存を考えるべき」と述べました。
 中川理委員(京都工芸繊維大学教授)も「機能的な部分よりも建物価値の方が大きい」との主調。「機能として、多少不便であっても建物価値が施設としての価値につながる」と言ってることも重要だと思います。
──今後、「提言」はどう生かされていうのでしょうか。

石田 「提言」を市がどう生かすのか、これからが山場です。
橋本功委員(前川建築設計事務所所長)が「最終的にどのように実現するのか、その道筋を市には用意してもらいたい」「我々は見守っていく義務がある」と発言しました。私も含め、大多数の委員が同じ意見だと思います。京都会館をどう改善するのかには、市民の皆さんもぜひ深い関心を持って注視していただきたいと願っています。(おわり)

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■京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(4)-「週刊京都民報」

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2012-06-22 検討委員会提言を受けた基本設計内容/景観シミュレーション-「京都市情報館」
検討委員会提言を受けた基本設計内容/景観シミュレーション

2012/06/22 「京都会館再整備工事 入札公告について」より下記を抜粋してご紹介しています。

pdf02-1 検討委員会提言を受けた基本設計内容/景観シミュレーション(1~4-2)(ファイル名:03_sekkeisetumeisho02-1.pdf サイズ:5.72 メガバイト)
pdf02-2 検討委員会提言を受けた基本設計内容/景観シミュレーション(5-1~5-10)(ファイル名:03_sekkeisetumeisho02-2.pdf サイズ:4.28 メガバイト)

口京都会館再整備(工事に関る)基本設計の総括 香山壽夫

京都会館再整備の目的は,要約すれば, 「これまで長く市民に愛され,親しまれ,また専門的にも高く評価されてきたこの建築の,優れた特質を尊重し,保ちつつ,さらに今後長く,生きて使われる建物として存続できるよう,必要な保守・改良の手を加えること」と言うことができよう。
 この目的を実現するために,京都市は平成23年3月「京都会館再整備基本計画」を策定したが,その方針の基本は,基本設計につながる問題として,次の3点にまとめられる。すなわち,
 1) 第1ホールは建て替える
 2)第2ホールおよび会議棟は保存・改修する
 3)会館全体を一体的に,そしてより活溌に,利用できるよう諸空間,諸機能を拡充・向上させる
という3つである。
 この基本設計は,いかにして,この基本方針を具体的に実行するか,そのための方法をまとめたものであるが,その検討にあたっては,先ず,平成23年10月より5回にわたって行われた「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」における議論とその提言を根底に踏まえ,そしてさらにその上で,さらに広く,多方面からの市民,専門家の意見,要望に耳を傾けつつ,建築家としての総力を注いで,まとめ上げたものである。この基本設計の要点を,「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」の提言の主要なる論点,すなわち, 1)空間構成, 2)外観意匠, 3)景観要素, 4)材料,の4つにおいて総括的に述べる。

1 )空間構成
 二条通に面するピ口ティから,中庭に入り,更に第1ホールのホワイ工を通して冷泉通を見通せる空間の流動性は,この建築の大きな特徴である。この空間の特徴は,基本設計において,十分に尊重し,保つものとする。さらに単に保つだけではなく,現在のように,通常は通り抜けることのできないホール専用のロビーを,誰もが通り抜けることのできる,共通ロビーとすることによって,現在以上にその空間の流動性は強調されることになろう。また中庭に沿って,第1ホールと第2ホールをつないでいる現在のバルコ二ーは,透明性のあるガラス皮膜で包むことによって内部化する。このことによって,現在のバルコ二ーの上と下の空間は,会館全体の一体利用のために不可欠な共通口ビーとなるが,これは,現在の「開かれた公共空間」としての中庭の特徴を,更に強化するものとなるだろう。

2 )外観意匠
 建物の上部をめぐる大庇,そしてプレキャス卜・コンクリー卜の手摺をのせた中層部をめぐるバルコ二ーも,現京都会館の好ましい特徴として,広く受け入れられているかたちであって,基本的にこれらは,すべて現状のかたちで,保存あるいは再生する。バルコ二ーを新しいガラス壁で包む場合には,ガラス壁は手摺の外側に立てることにする。
もし,内側に立てるならば,一体不可分のパルコ二ーと手摺のかたちを害うことになると判断するからである。
 大庇は,新しく建て替る第1ホール部分においても,現状と同じかたちを再現する。隅部にみられるような当初よりの構造的欠陥もあるが,これは下方からの見え方を害わないようなかたちで,改造する。この大庇を支えている下部のRCラーメン構造の柱梁の構成,その間に取り付けられているサッシ窓も,可能な限り,原型を保存あるいは再生する。柱梁の造形も大庇と一体であると判断するからである。
 第2ホールのホワイエは,この建物の二条橋からの印象を決定づける重要な空間であるから,その基本的な特徴は保つことにする。

3) 景観要素
 建築が,都市景観を決定する重要な要素であることは,改めて述べるまでもなく,設計の際にこれを考慮すべきことの大切さは,いかなる建物においても基本であるが,京都岡崎のこの地に立つ京都会館においては,とりわけ重要である。このことから,基本設計の全ての段階において,建物全てのかたちの,あらゆる方向からの見え方について検討を重ねた。
 第1ホールが,求められる機能を最小限満たすためには,すでに「再整備基本計画」が明らかにしているように,客席上部を覆う屋根の形状と,舞台上部を覆うフライタワーの形状とを,変更せざるを得ない。その変更が,周囲から見られた時に,不快感や圧迫感を与えるものであってはならない。しかし,変更がすなわち建物の特質を破壊し,周辺の景観を害うものと断ずることは正しくない。たとえ,その高さが,現状より若干高くなったとしても,その全体のシルエッ卜,その分節の比例,そしてその外装の軽快さによって,現在の建物の特質を保ちあるいはむしろ更に強調し,そして又,周辺からの見え方をより心地よいものにすることが可能だからである。この基本設計は,そのようなかたちが実現されるよう,数多くの検討を重ねた上で,決定された。

4) 材料
 この建物には,外壁の重厚な煉瓦タイル, ピ口ティや中庭,ロビーの床に楕円形に敷かれたピンコロ石,あるいは内装の重厚な木仕上等々,空間を特徴づける独自の素材が使われている。そのような材料は,できるだけ生かして,保存・再生していく。しかし,後に詳述する如く,素材によっては,維持保存に困難が生じているもの,あるいは,利用者にとって危険なものもある。これらについては,かたちの特質を上手に保ちつつ,改善していく道を探る。
 個々の項目については,続いて詳しく具体的に述べることにするが,それら細部全てにおいて,この基本設計が,実施設計そして工事施工において完全に遂行されることを,強く期待するものである。そしてその結果,ここに示された理念が,正しく実現するならば,「近代建築の保存は,何のために,そしていかになされるべきか」という,今日多くの市民,専門家の関心を集め,かつ,その論点と方法が必ずしも明確でない課題に,ひとつの確固とした筋道が導き出されるものとなろう。そのことは,とりもなおさず,日本の近代建築の出発の時代に,この建築が切り拓いた,先導的な役割が,建設後50年を経て今一度新たなものとされることに他ならない。

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京都会館検討委員会 異例の「提言」の真相
石田潤一氏に聞く(3)建物の価値


2012年6月3日
(2)のつづき

──建て替え計画で、京都会館の特質、建物価値が守れるのか大議論になったと聞いています。京都会館の特質とは何でしょうか。

石田
日本の建築的伝統との近さです。大庇、手すり、バルコニーの3つの造りが、日本建築の軒、縁、高欄による造りと相似しています。これが、コンクリートの打ち放しにもかかわらず、日本らしい伝統を発揮ている大きな要因であり、京都会館の一番の魅力です。
──基本設計案では、この建物の特質をどう替えようとしているのでしょうか。

石田
建物の特質をはっきり感じさせるのが、中庭に面した外観部分です。ところが、設計案では、ここにかなりの手を加えようとしています。第1ホールと第2ホールが共に使用できる「共通ロビー」を設置し、手すりの外側からバルコニー全体をガラスで覆う計画(図参照)です。
 私は、京都会館の価値とは違うものだと思っています。「建物の歴史的価値としての重要な部分を阻害している」と述べました。建築関係のほかの委員も同様の意見を述べています。
 中川理(京都工芸繊維大学教授)は「ガラスで覆うことが、中庭の建物価値を壊さずに可能かどうか」と指摘し、「建物価値の継承であれば、今ある形、今ある空間の質をそのまま維持するような方針で行ってほしい」と注文をつけました。 橋本功委員(前川建築設計事務所所長〉は「一番気になるのは、前川建築の意匠的な継承は素材」にあると指摘し、「前川はガラスの危さといったものに危惧を感じており、ガラスを前川の建物につけるのはいかがなものか」と述べました。
 岡崎甚幸委員長(京都大学名誉教授)も、「前川先生のデザインを残すための再検討を」と求めました。
──こうした議論は提言にどう反映されたのでしょうか。

石田
提言では、大庇・手すり・バルコニーによって形成される「立面構成の価値を維持継承できるようにしなければならない」と指摘。特に、中庭に面した外観についてはそのことが求められる」と強調しました。加えて「建物価値の本質とも言える外観の部位については、とりわけ慎重な保存・再利用が求められる」としました。
 つまり、ガラスで覆う共通ロビー案には言外に再考を求めるという内容です。
 前回ご紹介した様に、提言では、建物の高さ、ボリュームを抑えることも求めました。再整備基本計画と基本設計案に対して、委員会がどういう姿勢であったか、どういう答えを出したか、お分かりになるかと思います。(つづく)
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■京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(3)-「週刊京都民報」

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京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(2)

2012年5月26日 09:00
(1)のつづき

 
京都市が進める京都会館(左京区岡崎)の全面建て替え計画を検討してきた市の諮問機関「京都会館の建物価値継承に係わる検討委員会」(岡﨑甚幸・武庫川女子大学教授)は、「建物の歴史的な価値や周辺の風致を損なわないよう」、高さを抑えることなど異例の14項目の提言を発表(4月23日)しました。同委員会副委員長を務めた石田潤一郎・京都工芸繊維大学教授に、委員会の議論や提言の内容について聞きました。

──「京都会館建物価値継承に係わる検討委員会」での議論の中身を教えて下さい。

石田 
高さと景観問題が大論議となりました。岡崎一帯の建物の高さ規制は15メートルです。ところが、京都会館再整備基本計画では、建物を高さ約31メートル(現行27.5メートル)にするもので、景観への影響が市民的にも問題となっていました。
 委員会では、そのことが一層明白となりました。同計画に基づくシミュレーション(図参照)を市が委員会で公開したからです。委員の求めでようやく提出されましたが、これを見たら多くの市民が驚くのではないでしょうか。
 東山を借景に広がる岡崎地域に、高さにすれば8階建てマンションが屹立(きつりつ)しているイメージです。ボリュームも、最頂部が疏水側に現在よりも20メートルもせり出してくるので、相当あります。
 なぜこれだけのものが必要か。市は、現在のホールの標準が、舞台の天井の高さ27㍍(現行12~15.5メートル)であり、これを下回ると使ってもらえないというのです。これまで、世界的オペラ誘致のためにもこの高さが必要と言ってきました。ところが、委員会では、改築の狙いが、ポピュラー音楽の巨大コンサートと大型のミュージカルにあると説明しました。

──これでは、大議論になるのも当然ですね。

石田 
そうです。景観面の配慮が必要であるという意見が強く出されました。
 例えば、道家駿太郎委員(日本建築家協会近畿支部京都会会長)は、京都の多くの建築家や設計者が京都の将来を考え、高さ制限を守る努力をしてきたことを強調し、再考を求めました。それでも、市がいう「舞台内の天井の高さ27メートル程度」という再整備基本計画をくつがえすにはいたりませんでした。
 シミュレーションにしても、判断材料としては不十分だと私やほかの委員からも指摘がありました。

──こうした論議を踏まえ、どんな提言になったのでしょうか。

石田 
市の諮問機関としては、相当踏み込んだ提言となりました。
 このままの計画であれば、岡崎地域の風致に重大な影響を与えると指摘し、「高さとボリュームを抑えるべき」と提起しました。計画の根本にかかわる重要な内容です。
 委員が提言の実行を強く迫ったことも大事です。中川理委員(京都工芸繊維大学教授)は「提言に従って設計案の検証が必要だ」と述べ、設計のやり直しを求めました。橋本功委員(前川建築設計事務所所長)も「提言を重く受け止めるべきだ」と指摘しました。
 これに対して、平竹文化芸術担当局長文化市民局が「提言をより生かしていけるようにしていく」と答えたことも重要です。
 また、提言では、精緻(せいち)な景観シミュレーションを行うことを求めました。私は、シミュレーションについては、少なくともやり直すべきだと考えます。その上で、ヨーロッパでは一般的に行われている様に、シミュレーションや設計模型、CGを市民に公開し、再度市民の意見を聞き直すべきだと思っています。
(「週刊しんぶん京都民報」2012年5月27日付掲載)

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2012-01-16 京都会館建物価値継承委員会 第3回会議 傍聴メモ(4)意見交換:フライタワー高さについて
2012-03-28 京都会館建物価値継承委員会 第5回会議 傍聴メモ(6) 提言案について、委員会総括
2012-03-06 京都会館建物価値継承委員会 第4回会議 傍聴メモ(5) 景観検討写真 石田氏発言
2011-03-08 第20回 くらし環境委員会記録-その3-「京都市会会議録」 高さ規制の解除について
2011-02-18 新・京都会館 高さネック 規制は15メートル、オペラ上演30メートル必要-「京都新聞
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by 2011-kyoto | 2012-05-26 00:00 | 2012/05
2012-05-17 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く -「京都民報web」
 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く
 京都市が進める京都会館(左京区岡崎)の全面建て替え計画を検討してきた市の諮問機関「京都会館の建物価値継承に係わる検討委員会」(岡﨑甚幸・武庫川女子大学教授)は、「建物の歴史的な価値や周辺の風致を損なわないよう」、高さを抑えることなど異例の14項目の提言を発表(4月23日)しました。同委員会副委員長を務めた石田潤一郎・京都工芸繊維大学教授に、委員会の議論や提言の内容について聞きました。
――諮問を受けた委員会が、市の計画に数多くの注文をつけることはめったにないですね。どんな委員会だったのでしょうか。

 石田 
 一言で言えば、異例づくめの委員会でした。
 1つ目は、設置の経過とメンバーです。
 既に、日本建築学会京都府建築士会日本建築家協会近畿支部京都会など建築に係わる職能団体はそれぞれ、市に京都会館保存の要望書を提出していました。これに応えて、市が委員会を発足させたもので、画期的なことです。
 しかも、委員を決めるに当たり、各団体に委員の推薦と参加を要請してきました。これを受け、私は日本建築学会の推薦で委員となりました。
 建築家協会近畿支部京都会や京都府建築士会などには、当初委員要請は1人でしたが、それでは少ないとの要望を団体が主張され、各1人ずつ計2人が委員となりました。各界を代表する委員で委員会が構成されたことは大きな意義を持ちます。
 市がこうまでして、委員会を設置した背景には、京都会館を守れとの大きな世論、現在の会館の建築に対する高い評価があったことは言うまでもないと思います。

――このほかにも、どんなことが異例だったのでしょうか。

 石田 
 市の姿勢の問題です。委員会を設置して、保存の要望に応えたいという思いがある一方、市が策定した、建物の高さを約31㍍(現行27・5㍍)にして、第1ホールを建て替える再整備基本計画の根幹は変えられたくない、この姿勢が貫かれた委員会でした。
 本来、委員会は、同計画策定の前に設置すべきです。ところが、市はすでに基本設計を香山壽夫建築研究所に委託し、5月までにまとめることを決めていました。そのため、委員会の論議と同時進行で、基本設計の作業が進むという、あり得ない事態になりました。
 しかも、市は同計画を前提に、「ロームと命名権の契約締結をしている」と述べ、委員会での議論に枠をはめてきました。当然、委員会の議論は紛糾しました。これも異例です。
第1回目に委員から「ガス抜きの会にしてはならない」と釘を刺す発言が出たほどです。私も「1センチも計画を動かせないというのなら、一体何のためにここにいるのか分からない」と市に抗議しました。
 当初委員会は、4回で終了予定でしたが、5回目を開き審議をつくしました。
 次回、委員会が提言した具体的内容を解説、紹介しましょう。(「週刊しんぶん京都民報」2012年5月20日付掲載)
その2へつづく
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■京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く-「京都民報web」


2012-06-10 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(4)-「週刊京都民報」

2012-06-03 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(3)-「週刊京都民報」
2012-05-26 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(2)-「京都民報web」
2012-05-17 京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く -「京都民報web」

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2011-03-18 京都会館保存要望書-「社団法人日本建築学会」
2012-01-24 京都会館再整備基本計画ならびに基本設計に対する要望書-「日本建築家協会近畿支部京都会」
2011-02-04 建築学会近畿支部メンバーが京都会館に要望-「KBS NEWS」
2011-06-24 「京都会館再整備基本計画」の策定について-「京都市情報館」
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2012-01-16 京都会館建物価値継承委員会 第3回会議 傍聴メモ(4)ローム社との契約についての発言(京都市:平竹氏)
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2011-11-19 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第2回会議 傍聴メモ(3)石田氏発言
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by 2011-kyoto | 2012-05-20 10:50 | 2012/05
2012-05-17 京都市長宛に公開質問状を提出いたしました-「京都会館を大切にする会」
  
 
「京都会館を大切にする会」では5月17日、京都市長宛に公開質問状を提出いたしました。(回答要望期限:5月末日)
京都市長
門川 大作殿

2012年5月17日

公開質問状
 
2011年末から2012年3月末まで計5回に亘って開催された、京都会館の基本設計に対する「建物価値継承に係る検討委員会」は、京都会館再整備計画の最終的な方向性を決定する重要な委員会であり、学識経験者や専門家等8名の委員の方々の構成により行われ、一般市民にも公開され大変有意義であったと理解しております。そして第5回終了後に提出された「提言」は、京都会館の将来、ひいては京都市の将来を真摯に考えるという見地からすると非常に意義深いものであると高く評価しております。そこで、それを要約すると下記の内容になりますが、これらの項目について御市ではどのように理解して基本設計に反映されているか(特に、疏水側から見た場合の建物の形状について、どのような配慮が必要であるとお考えか)を具体的に分かりやすくご回答くださるよう5月末日までにお願いいたします。
 

1.基本的な考え方

 歴史的な建築の価値を保存しながら、一方で現状では不十分となった機能を加える改修となるため保存と改変のバランスを考えなければならない。岡崎地区は景観上重要な位置づけを持つ地域である。機能の向上や利便性から計画される改修であってもそれが歴史的価値を損なうことがないよう取り組まなければならない。
2.空間構成の継承

 ピロティによって中庭に導く「開かれた公共空間」の特質を守り、中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通りまで見通せる空間の流動性を保つこと。ホワイエ、ロビー空間を拡充する際には、現建物の持つ全体の空間構成や外観意匠の価値を十分尊重して行う。
3.外観意匠の継承

 現京都会館の外観意匠の特質は、大庇・手すり・バルコニー等によって形成される立面が、日本の伝統建築における軒・縁・高欄等による立面構成に通じているところにある。この特質は中庭の外観に明瞭に現れている。サッシ割りなどの形状は原型を保ち、第二ホールのホワイエはガラス面を透過して外観と一体化する空間構成であり、陶壁画についてもその芸術性に敬意を払い継承に努めること。
 第一ホールのフライタワー形姿について大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根上部のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠に十分な配慮を払うこと
4.景観構成要素としての意義の継承

 フライタワーの高さ、形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、重要文化的景観、歴史的風致維持向上計画との整合と、十分な検証を行うこと。基本設計案のフライタワーの高さとボリュームがデザインの要であり慎重なデザイン処理を行うべきである。新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材についても最大限の配慮を払うこと。
5.材料の継承

 京都会館の建物価値の本質ともいえる外観にかかわる部位、内部の構成要素について慎重な保存再利用をすべきである。
6.京都会館の建物価値を最大限継承するための対応

 京都会館の建物価値を最大限生かした再整備となるよう、再整備基本計画で言及されていない空間利用についても検討が必要である。

以上


■京都市長宛に公開質問状を提出いたしました-「京都会館を大切にする会」

2012-05-17 京都市に京都市職員措置請求(監査請求)、要望書、署名等を提出してきました
2012-06-02 第3回緊急シンポジウム開催のご案内-「京都会館を大切にする会」
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会関連記事

 
 
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by 2011-kyoto | 2012-05-18 00:00 | 2012/05
2012-05-17 京都会館第一ホールの改修及び岡崎地域の景観保全に関する意見書-「京都弁護士会」
2012年5月17日京都弁護士会会長名にて下記の意見書が京都市に提出されました。
※意見書最終行に添付資料をリンクしました(5/25/2012)
(尚、意見書参照資料等は現在問い合わせ中です、あらためて再掲載する予定です。)
2012年(平成24年)5月18日

京都市長 門 川 大 作 殿

京 都 弁 護 士 会

会長 吉 川 哲 朗

京都会館第一ホールの改修及び岡崎地域の景観保全に関する意見書

 京都市は、平成23年秋、「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」(以下「価値検討委員会」という。)を立ち上げ、同年10月4日に第1回の会合を開いた。そして京都市は、価値検討委員会に対し、第一ホールについては建て替えるべしとして、基本設計案(以下「現在の建替案」という。)を提出した。
これに対し、価値検討委員会は、現在の建替案を含めて、京都会館の承継すべき価値について検討し、予定された4回の会合を超え、5回の会合を経て、本年4月23日、提言をまとめた。これを受けて京都市は、本年5月中に基本設計を決定し、年内には実施設計等を行う方針を明らかにしている。
そこで当会は、価値検討委員会の提言等を踏まえ、京都会館第一ホールの改修計画及び岡崎地域の景観保全について、以下のとおり意見を述べる。
意見の趣旨

1 京都会館第一ホールの改修に関する基本設計については、価値検討委員会が本年4月23日に提出した提言を実現し、京都市眺望景観創生条例及び岡崎文化・交流地区地区計画に適合する内容とすべきである。

2 基本設計を含め、京都会館第一ホールの改修については、拙速を慎み、徹底した市民参加と建築・景観・都市計画・法律等各分野の専門家の関与のもとで慎重に合意形成が図られるべきであって、少なくとも、当該合意形成が図られないままで解体工事に着手すべきでない。

3 岡崎地区の景観保全を十全あらしめるため、岡崎公園地区特別修景地域内の琵琶湖疏水右岸についても、景観地区として、岸辺型美観地区(一般地区)に指定すべきである。

意見の理由
1 京都会館の立地の法的状況

(1) 京都会館の立地(以下「本件敷地」という。)の用途地域は、第二種住居地域であり、容積率200%、建ぺい率60%であって、15メートルの高度地区に指定されている。
他方、本件敷地は、平成24年2月1日に計画決定された岡崎文化・交流地区地区計画区域内にある。この地区計画により、本件敷地部分は、建築物の高さの最高限度を31メートルとするように変更された。

(2) 本件敷地の景観保全に関しては、風致地区第5種地域であり、本年2月1日に規定された「岡崎公園地区特別修景地域」に指定されている。

(3) 本件敷地の眺望景観の保全については、琵琶湖疏水の疏水界からの水平距離が30メートルの範囲は「近景デザイン保全区域」、それ以外は「遠景デザイン保全区域」に指定されている(後掲⑭)。
2 京都会館の現状及び現在の建替案

(1) 京都会館の現状
京都会館第一ホールの現状は、建物の高さこそ約27メートルあるものの、最高部は建物の中心部分のみで壁面に近づくにしたがってなだらかな勾配を描いて低くなるとともに、幅も狭くなってボリュームが小さくなっていくことから、周りの建物や東山連峰の山並みともよく調和している。

(2) 現在の建替案
他方、現在の建替案は、建物西側(琵琶湖疏水側)に開口部が取られず、外壁面も垂直に屹立する舞台フライの設置を予定するものとなっている。
とりわけ、後掲○a①③⑤⑩⑪⑫の写真のとおり、現在の建替案における舞台フライは、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである(ちなみに、高さ30メートルは、10階建てのビルの大きさにも相当する。)。
3 価値検討委員会提言の内容

(1) 価値検討委員会はまず「基本的な考え方」として、「岡崎地域は景観上重要な位置づけをもつ地域であり、本年3月には「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴まち法)」の重点区域に指定されるとともに、「文化的景観」の指定も計画されるなど、京都会館の歴史的な建物価値はますます重視されることになるのは明らかである。したがって、機能の向上や利便性から計画される改修であっても、それが歴史的な建物価値を損なうことのないよう取り組まなければならない。」との認識を示した。

(2) その上で、「外観意匠の継承」について、

①現在の京都会館の外観意匠における特質は、大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられることから、こうした立面構成の価値を維持継承すべき(以下「承継価値1」という。)。

②第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うべき(以下「承継価値2」という。)としている。

(3) そして、「景観構成要素としての意義の継承」について、

①フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討及び歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうべき(以下「承継価値3」という。)。

②景観シミュレーションを見ても、舞台内高さ27メートルを確保した現在の建替案のフライタワーが周辺の風致に与える影響に配慮することが必要であることは明らかである。いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うべき(以下「承継価値4」という。)。

③新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材についても、岡崎地域の風致を損なわないよう精緻な景観シミュレーションを行うなど最大限の配慮を払うべきである(以下「承継価値5」という。)としている。
4 価値検討委員会提言の評価(改修計画のあり方)

 京都市は、京都会館第一ホールを改修する目的の一つとして、「世界水準の総合舞台芸術」の上演を掲げる(京都会館再整備基本計画)。また、京都市の説明においても、びわ湖ホール等に奪われてしまったオペラ等の公演を呼び戻したいとの意向が散見される(価値検討委員会の各回の摘録)。

 しかし、現在の建替案は、奥舞台及び袖舞台がなく、日本でも数か所しかない四面舞台を備えたびわ湖ホールに到底及ばない。

他方、京都会館を設計した前川國男の設計説明書(別紙補足説明参照)には、「東山一帯に囲まれた平面的な岡崎公園と、その水平的性格を象徴するが如き疏水の流れ、それに既存の建物、公会堂、勧業館、美術館等の中層建物の高さなどを考え合わせ」た上でもたらされる「周辺地域環境との調和」の思想が示されていた。

とすれば、京都会館を規模や舞台機能の面から単純に他と比較し、その点で他と劣るから建て替えてしまおうという発想で本当に正しいのかどうか、他のホールにはない京都会館独自の価値が何であるのかを今一度冷静かつ慎重に見極める必要がある。

そうすると、価値検討員会が示した「基本的な考え方」は至当であって、京都会館の改修計画にあたっては、同委員会提言に基づく承継価値1ないし5を承継することが強く求められる。現に同委員会は、提言前文の締めくくりにおいて、「提言が実現された暁には、機能向上を図りつつ建物価値を継承するという近代建築再整備の観点に立って、近代建築を保存・継承する新たな道筋をつけることができると確信する」と述べているところである。
5 現在の建替案の不十分性

(1) ところが、以下に述べるとおり、現在の建替案は、承継価値1ないし5を承継しているとは言い難い上、京都市眺望景観創生条例との適合性、さらには岡崎文化・交流地区地区計画との適合性にも問題がある。

(2) 承継価値1ないし5について
現在の建替案の建屋形状の舞台フライは、日本建築における軒・縁・高欄による立面とは似通わず、立面構成の価値を維持するに至っていないことから、承継価値1を承継するものとは言い難い。
また、現在の京都会館第一ホールが、勾配屋根でかつ先すぼみの形状をしていることから東山連峰の形状と調和しているのに対して、現在の建替案は、巨大な建屋で空と山並みを無遠慮に断ち切ってしまう建造物であって、高さとボリュームのいずれもが巨大であることから、承継価値2ないし4を承継するものとも言い難い。
さらに、景観保全にとって建物の形状・色彩・素材は極めて重要であるところ、後掲○a①③⑤⑩⑪⑫の写真のとおり、現在の建替案に基づいて新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材は判然とせず、岡崎地域の風致を損なわないよう精緻な景観シミュレーションを行ったとは認められないことから、承継価値5に述べられたような考察が十分なされたとは言い難い。
  以上のとおり、現在の建替案は、承継価値1ないし5を承継しているとは言い難い。

(3) 京都市眺望景観創生条例適合性について

ア 本件敷地のうち、琵琶湖疏水の疏水境からの水平距離が30メートルの範囲は、京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定についての別表により、次のとおり定められている。

【種別】水辺の眺め
【対象地】23-1 琵琶湖疏水
【視点場の位置または範囲】川端通から疏水記念館前までの琵琶湖疏水に架かる橋(秋月橋、熊野橋、徳成橋、冷泉橋、二条橋、慶流橋及び広道橋)
【眺望景観保全地域の区域の種別】近景デザイン保全区域(約16.0ヘクタール)
【眺望景観保全地域の区域の範囲】川端通から疏水記念館までの琵琶湖疏水の疏水界又は当該疏水沿いの道路の境界線からの水平距離が20メートル又は30メートル以内の別図23(後掲⑭)に示す範囲

【基準】1 建築物等は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成される良好な景観を阻害してはならない。

2 建築物等は、次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1) 建築物の屋根は、勾配屋根又は屋上緑化等により良好な屋上の景観に配慮されたものとすること。
(2) 塔屋を設けないこと。
(3) 建築物等の各部は、河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和し、良好な水辺の眺めを形成するものとすること。
(4) 建築物等の外壁、屋根等の色彩は、禁止色を用いないこととし、河川沿いの樹木等や東山の山並みとの調和に配慮したものとすること。
(5) 良好な水辺の眺めの保全及び形成に支障となる建築設備、工作物等を設けないこと。

イ 上記基準1及び2(2)について
現在の建替案では、建物西側には開口部がなく、外壁面も垂直に屹立する舞台フライが設置されることになっており、後掲○a①③⑤⑩⑪⑫の写真のとおり、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものである。
現在の建替案における舞台フライは、勾配屋根によって琵琶湖疏水及びその周辺の樹木等と調和していた現状の良好な景観を大きく変えるものであり、その大きさ、形状に照らせば、上記基準2(2)が禁じる「塔屋」に該当する可能性が極めて高いといわざるを得ない。
すなわち、現在の建替案は、上記基準1及び2(2)に適合しない可能性が高い。

ウ 上記基準2(1)について
現在の京都会館第一ホールは、当初よりホール部分の屋根が勾配屋根とされ、最高高さ(27.5メートル)のところが疎水側(西側)地上からは見えにくいように設計されており、圧迫感を感じさせにくい構造となっている。
しかも、庇に近づくにつれて屋根の幅を狭める巧みな設計により、連坦する第二ホールの屋根ともみごとな調和を見せており、京都会館の他の建物及び近隣の建物とも調和が保たれている(後掲○b及び⑥の写真)。
これに対し、現在の建替案は、現状の勾配屋根を陸屋根に変更するものであるうえ、上記イのとおり、高さ30メートルの突出した舞台フライの部分を有する長大な箱形建築物が立ち上がることになり、疎水沿いからの景観は一変する。
もちろん上記基準2(1)は、陸屋根であっても屋上緑化等によって良好な屋上の景観に配慮できる場合もあることを想定している。
しかしながら、現在の建替案は外観上極めて重大な変化をきたすものであることからすれば(後掲○a○b①ないし⑥の写真を比較参照)、現在の建替案は、上記基準2(1)に適合しない可能性が高い。

エ 上記基準2(3)(5)について
現在の建替案における建物西側の建物フライの大部分は、琵琶湖疏水の疏水界からの水平距離が30メートル(ただしどの範囲が該当するかについては、価値検討委員会に提出された建物平面図にも明示されていないことから、詳細は不明である)以内の近景デザイン保全区域内にあるところ、後掲○a○b及び①ないし⑥の写真のとおり、「河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和」し「良好な水辺の眺めを形成するもの」であるか疑問がある上、「良好な水辺の眺めの保全及び形成に支障となる」可能性がある。
したがって、本件建替案は、上記基準2(3)(5)に適合しない可能性が高い。

オ 今後の景観政策に与える影響について
上述のように、京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域等の指定についての別表23-1 琵琶湖疏水についての【基準】1では「建築物等は、琵琶湖疏水及びその周辺の樹木、建築物等によって一体的に構成される良好な景観を阻害してはならない。」とされ、【基準】2の(3)では、「河川沿いの樹木等や東山の山並みと調和し、良好な水辺の眺めを形成するものとすること」、(4)では「河川沿いの樹木等や東山の山並みとの調和に配慮したものとすること。」、(5)では「良好な水辺の眺めの保全及び形成」というように、「良好」や「調和」の概念が基準として多数用いられている。
しかるに、京都市は基本設計の決定にあたっては、上記各基準適合性について自ら重要な先例を示すことになるところ、現在の建替案について上記各基準適合性に関し疑義があることは既に述べたとおりである。
また、後記のとおり、現在の建替案が提示されるまでの市民参加ないし市民意見の聴取は決して十分とはいえない。
とすれば、今後の景観政策に与える影響の大きさに鑑みても、基本設計の決定を含む改修計画にあたり、拙速は厳に慎まなければならない。

(4) 岡崎文化・交流地区地区計画適合性について

ア 岡崎文化・交流地区地区計画においては、本件敷地の建築物等の形態または色彩その他意匠の制限として、「京都会館の近代性と伝統の融合を感じさせる風格と魅力ある建築物と調和すること」と規定されている。

イ そうであれば、京都会館第一ホールを建て替えるにあたっては、第二ホール及び議場その他の従前の京都会館の建築物と調和しなければならない。
別紙補足説明3で述べたとおり、京都会館の近代性と伝統は、建物の水平基調、すなわち「建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成」にある。
これに対し、現在の建替案は、後掲写真○aその他から明らかなように、舞台フライが、幅35メートル、奥行き23メートル、高さ30メートルにも及ぶ巨大なものであって、上記水平基調とは異質のものを含む。

ウ したがって、現在の建替案は岡崎文化・交流地区地区計画との適合性にも大きな疑問がある。

 (5) 以上のとおり、現在の建替案には数々の問題点が指摘できるものであって、京都会館の改修に関する基本設計については、価値検討委員会の提言を実現し、京都市眺望景観創生条例及び岡崎文化・交流地区地区計画に適合する内容とするべきである。
6 徹底した市民への情報提供、市民参加と慎重な合意形成の必要性

(1) 市民に対する情報提供

ア 京都市は、価値検討委員会に対して、現在の建替案の内容を説明する資料を提出した。
しかし、その資料には以下のような問題点があり、市民が本件建替案の内容を正しく把握できるものとは言い難い。

イ 第2回価値検討委員会における資料の問題点
価値検討委員会には建築の専門家が多数委員として参加しているにもかかわらず、そこに提供された図面は、建物の平面図、立面図ばかりで、断面図がわずか1面しか示されておらず(後掲⑨参照)、具体的な数値もほとんど示されていない(第2回資料4)。
京都会館の現況に関しては、第1回価値検討委員会で6面の断面図(第1回資料4)が示されているのと比べても、圧倒的に乏しい情報のもとでの検討を余儀なくされており、これでは、いくら専門家といえども現在の建替案の全体像を正確に把握することは困難であり、一般市民であれば尚更である。

ウ 第3回価値検討委員会における資料の問題点
京都市は、第3回価値検討委員会において、現在の建替案の詳細な立面図(第3回資料6)を提出するとともに、模型写真(第3回資料7)を提出した。
しかし、模型写真に写っている模型(後掲⑩⑪⑫参照)は、全体が真っ白で現実にどのような色調になるか判然としない上に、疏水側からの景観に直截大きな影響を与えるとみられるトラックからの荷物の搬入口上の巨大な庇に取り付けられる予定の合計24本のステー(第4回資料3・2枚目と3枚目の立面図。後掲⑦⑧参照)が取り付けられておらず、再現性が不十分である。
模型は本来、建物の実際を容易にイメージできる媒体なのであるから、写真で特定の方向から撮影したものだけを提供するのではなく、精緻に再現した上で、模型そのものを価値検討委員会に提出するとともに、市民にも公開すべきであった。

エ 第4回価値検討委員会における資料の問題点
京都市は、第4回価値検討委員会において、12葉の景観検討写真(第4回資料6)を提出した。
しかし、これら12葉の景観検討写真(後掲○a①③⑤参照)は、前記模型写真同様ステーが描かれていないばかりか、建替えによって従前と景観上変化する部分が半透明に描かれており、これでは実際にどのような外観に変化するのか具体的なイメージを持つことは困難である。
とりわけ、前述のように、京都会館の西側側面付近は、京都市眺望景観創生条例に基づく眺望空間保全区域に指定されており、前記基準1ないし2の適合性が厳正に審査されなければならないところ、前提となる資料としては不十分といわざるを得ない。

オ 以上のとおり、現在の建替案に関して、これまでの市民に対する情報提供は、正確性を欠く不十分なものである。

(2) 市民意見の聴取状況

ア 京都会館は京都市の資産であるが、その建替等の変更については、実質的所有者ともいいうる市民に対し、広く意見を聴取してそれを提案に反映させなければならないのは当然である。
京都市は、従前の再整備検討委員会では、京都会館の改修について、最低限の修復案(A案)も含めて検討していた。
しかし、その後の市民への説明においては、修復案については何ら触れられず、京都会館の建築物としての歴史的、文化的価値や、建替による東山を背景とする景観への影響等についても、ほとんど説明することなく、価値検討委員会発足前に作成された現在の建替案を価値検討委員会に諮るに留まった。

イ また、京都市では、2007年にいわゆる新景観政策を施行し、高さ規制の例外手続は、「特例許可制度」(「京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)高度地区の計画書の規定による特例許可の手続に関する条例」)によるものとした。
この手続においては、高さ制限を超える建物の建設については、周辺住民に周知させる説明会の開催(7条)や景観審査会への意見聴取(13条)の手続等が義務づけられていることから、今回のように、京都市が単独で建替案を策定することはできなかった。
今回、京都市は、京都会館の建替えのために、地域住民のいない自らの所有地において「地区計画」制度を使って高さ規制を緩和するという手法をとり、住民の意見に耳を傾けることもなく、また景観の観点から景観審査会の検証を受ける機会をも自ら放棄してしまった。
特例許可制度利用を敢えて避けたともいうべきこの京都市の対応は、市民に対する背信ともいうべき所為であり、厳しく反省されなければならない。

(3) 慎重な合意形成の必要性

京都市では、琵琶湖疏水の開削によって形成された岡崎地区の優れた景観 を次の世代に継承することを目的として、同地区の文化財保護法に基づく重要文化的景観への選定を目指した調査検討事業を、平成22年度から実施している。
上述のように、京都会館第一ホールは、東山一帯に囲まれた平面的な岡崎公園と、その水平的な性格を象徴するが如き疏水の流れ、それに既存の建物、公会堂、勧業館、美術館等の中層建物の高さなどを考慮して、建物全体を中層の建物の高さに収め水平に延びた屋根面から大ホールの屋根、小ホールの舞台フライの部分のみを突出せしめる水平線的な構成をとられており、これによって、永きに亘って岡崎地区の優れた景観を形成してきたことは、疑う余地がない。
そうであるとすると、京都市が拙速に現在の建替案どおりの改修計画を断行することは、岡崎地区を文化財保護法に基づく重要文化的景観に選定することとも整合せず、自己矛盾の行動であるとの誹りを免れない。
京都市は既に本年4月1日から京都会館の市民の利用を中止しており、基本計画の決定を経て、近く京都市議会で京都会館の解体工事に伴う予算の議決を受け、同工事への着手を計画している。しかしながら、京都会館の景観は失われてしまえば二度と戻らない。ましてや、京都会館と岡崎疏水の景観は、市民・国民の共有財産であり、これを、行政自らが破壊することに拙速であることは、厳につつしむべきである。
とすれば尚更京都市は、拙速に現在の建替案どおりの改修計画を断行するのではなく、徹底した住民・市民参加と建築・景観・都市計画・法律等各分野の専門家の関与のもとに、慎重に合意形成を図るべきである。


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by 2011-kyoto | 2012-05-17 00:00 | 2012/05
2012-04-30 ヨーロッパからの手紙 その3 「みなさんへ」
ヨーロッパからの手紙 その3-「みなさんへ」

Subject:みなさんへ
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XX XX 様

最終回の成り行きに興味を持っていたのですが、期待に反して委員会はあっけなく終わってしまいました。そして沈黙。
そういうすっきりしないところへ、日経アーキテクチュアの記事
ニュートラルな体裁を保ってはいますが、この記事には京都市と基本設計受託者に、追い風を与えるベクトルが含まれています。

建築が利害と思惑が絡みあう中で翻弄されるものであることは、洋の東西を問いません。たとえば近代建築史のなかに特別な位置を与えられたウィーンのロースハウス、建設にあたって色々と物議を醸しました。
では、今回の京都会館を巡る展開はどうでしょうか。同じように物議を醸していますが、文化というフィルターにかけてみると、ポジティブなものはほとんど残りません。

正否の問題ではありません。建築の捉え方とその評価の基準です。
たとえばロースハウスに反対した人たちは、建築が解っていなかったのでしょうか。また建築家ロースは、広場のアンサンブルに配慮しなかったのでしょうか。

学生時代を京都で過ごし、そのあと長年ヨーロッパに暮らす私には、いい意味における京都の自負心・独自性といったものの大切さを痛感します。でもそれはもう、今回の市当局の対応には窺えません。関西の経済的地盤沈下と共にもぬけの殻となってしまったのでしょうか。

日本の文化の二極構造が内実を伴って機能していた時代の京都。その土壌を尊重しながら設計された近代建築たる京都会館。
それは、ヨーロッパ的精神の洗礼を受けた日本人建築家が、戦災を免れた京都という土地に、一個の人間としてアウトプットとした「時代のイコン」とでもいうべき存在なのです。

建築というのは、うまく使えたり斬新であったりすることも必要でしょうが、ある時代に生きた人間としての建築家のアウトプットが、その仕事に込められているということ、これが建築が広く社会に受け入れられるための前提条件ではないでしょうか。それが人の心の琴線に触れて共感を呼び起こし、愛着が生まれて保存が望まれる所以だと思います。
つまり、建築にそのような非定量的な建物の価値が認知されないかぎり、日本中で危機に晒されている近代建築の保存は叶わないでしょう。取り壊しを数値で正当化することは容易いのですから。

これは文化の問題です。京都市は人の生活の一部となった建築の価値を認めようとしない。いわゆる知識人を多く擁する京都でさえこうなのですから、「問題建築」の建つ地方の自治体における困難さは、推して知るべしです。

だからこそ、多くの言説が飛び交った今回の京都会館を巡る顛末は、客観的に分析される必要があります。地域振興の参考書は本屋の棚にあふれているけれど、建築保存のそれは無に等しいのではないでしょうか。
専門的立場からの歴史的位置付けは大切ですが、それを語りなおして、当該自治体担当者の手引きとなるようすることが急務です。

京都会館改修に関与する、当事者たちの立場は明らかになりました。
残念ながらそれ自体は、市当局のシナリオに基づいて展開することになりそうですが、それとは別に、建築とその保存を巡る基本的議論は、始まったばかりなのです。


ブログ「I Love Kyoto Kaikan」から、考えるためのヒントを抜粋してみます。

まずは市当局の採った施策から。

1.市当局が京都会館改修の検討を始め、各界の有識者を集めて再整備委員会を設置

2.「京都会館再整備基本計画」で市当局は独自で大枠を決定し、「…今後、基本設計を進めてまいりたいと考えております。…」(建築学会宛京都市長返答

3.それを踏まえ市当局は基本設計のプロポーザルを公募、その審査に当たるのは当局者のみ。

4.なぜか必要が生じた再公募に対するエントリーは2者のみ。

5.業務受託者の選定その挨拶より:「京都会館という…すぐれた日本近代建築の保存再生の設計者に指名され…。委員の先生をはじめ多くの方のお力をいただきながら、ぜひこの大役を全力をつくしてやり遂げたいと思っております…」

6.市当局は「京都会館の建物価値継承に係る検討委員会」を設置、当局はそれを「… 外観デザイン等について検討を行っていただくもの…」と定義。

市当局と建築としての京都会館

1.から3.は日本における役所の標準的実務の流れなのでしょう。ただそこにには、建築に職能として携わる建築家が不在です。言い方を変えれば建築家、ひいてはその職能自体が不必要なものと看做されています。
事業主体である市当局が、自分の都合にあわせて計画要綱を作成し、基本設計の担当者を客観性排除の下に選出してプロジェクトを進めるのは、いわゆる「ゴリ押し」に他なりません。

それはもちろん、ある意味ではOKです。

しかしそれならそれで、民意とか知識人とかを持ち出してカモフラージュしてはいけません。「後付け」で設置した委員会に諮ったという事実のみをもって公共建築をのもつ文化的側面に配慮したという、そういう誤魔化しは許されません。

プロポーザルの再公募が必要となったこと、そして応じたのは二者に過ぎなかったこと、これも建築を文化として考える上で、重要なポイントです。

他の設計者たちは、基本設計業務受託者とは違って、この課題へ挑戦することに職能者として興味を示さなかったのでしょうか。あるいは、当プロジェクトを巡る論争に尻込みして、参加を遠慮したのでしょうか。

つぎに、委員会での議論から

一委員:「…ここでは建物価値継承ということを考える委員会ですので、…条件が違うところでつくられたホールの標準的な高さをここで実現しなくてはならないということにはならない。」

舞台廻り専門家:「今世間相場はやはり、30m必要なんであって、…残念ながら27しか抜けないんです、いかがでしょうかというような理論に行かない限りは、やれるものがなくなってしまうと。」

委員長:「…もとの中庭がなくなってしまったような気がしまして、やはりある程度外観は継承していただきたいという気がしています。」

基本設計業務受託者:「…触れないでそれをこうしたほうがいいと判断したわけで、…一遍やってみろとおっしゃいますが、一遍どころか何十回もやっていますよ。」

事務局担当員:「…今後の劣化を最小限にとどめるために内部化することにしました。…バルコニー部分の欄干を内部に取り込むことが最善の方法であると考えたのであります。」

委員会提言:「ホワイエ、ロビー空間を拡充しようとする際には、現建物の持つ全体の空間構成や外観意匠の価値を十分に尊重して行うべきである。」

事務局長:「…この提言について消化をしてですね、より生かしていけるようにしてまいりたいと思っております。」

建築に携わる者と建築としての京都会館

当件には、市当局の建築を学んだであろう職員、建築職能者、建築研究者、実践的教育者といった役職の諸氏が登場します。そして、独自の見識と位置付けに応じた役割を演じておられます。
そして京都会館を巡る議論は、残念ながら自由闊達な意見の交換とは程遠いものになってしまいました。

当然といえば当然。建物の外観を、機能の翻訳たる平面と分けて論ずること自体が不可能だからです。外観の議論は、必然的に平面・機能に飛び火します。
だからプラグマティックに市の要綱を受けいれ、それを出発点として請けた仕事をすすめる基本設計受託者が不快感を示すのも、不思議ではありません。
また、市当局のやり方に批判的な委員たちが、そういう受託者に再考を促そうとするのも、自然です。

こうして両者は京都市当局によって、不条理な対立的構造に縛られてしまったのでした。
でも、対立していて済むような話なのでしょうか。本館設計者のあとを継いだ事務所長の言葉には、一番の当事者でありながら「あるべき」発言をしなければならない職能者の葛藤が、如実にうかがわれます。

各人各様の立場と動機。個別に見るかぎり、そこにはそれなりの整合性が認められます。しかし全体として眺めた場合、問題が存在することは否めないでしょう。
どうしたらいいのか。建築に係わる者の職能を、価値観をも含めて照射し直すことが必要です。

キーワード「職能」

たとえば、建築家の職能が日本ではまだ一般に認識されるに至っていない、という言い方があります。
医者は弱い人が生存を続けるのに必要な職能で、弁護士は弱い人が社会を生き抜くのに必要な職能、これは洋の東西を問いません。でも建築は?
たとえば、JIAの方々がそのホームページで並べて語るのとは裏腹に、建築家の職能を日本の社会はそれほど必要としていません。大工さんがいるし、ゼネコンもいるし。
しかし建築家は、数量では収まらない側面をも司るのです。しかもその判断は役所や組織などの意向に影響されることがない、それが自由業たる所以です。そういった認識が定着していないところでは、建築の保存はテーマになり得ません。

長くなりました。
そういった一般論ではなく、最後に職能の理解と直接関連する事項に触れておきたいと思います。

思うが侭に振舞うかのような市当局。でも最終的には京都市民に懸かっているのです。まさか、京都の町衆がそのキャラクターを自ら放棄してしまった、なんてことはないですよね。
研究者の方々にはDOCOMOMOに止まらず、保存の所以をわかりやすく説き、文化としての側面に対する市民の意識を高めるように勤めていただきたい。
建築家の方々には、自己の実現のみを目指すのではなく、職能を全建築的に生きる人間として日々の設計業務に携わり、その存在理由を示していただきたい。

そして、建築としての課題に興味を持ちながらも、別の理由からプロポーザルに参加しなかった設計者の方々。
皆さんが参加しなかったその弊害が明らかとなりました。そういう状況に責任を感じること、そしてなんらかの声を上げること、これも広い意味での職能の一部です。ちょうどアドルフ・ロースが「虚空に吼えた」ように。


状況の好転を願いつつ、
2012年4月末日 ウィーンにて。
三谷 克人


■ヨーロッパからの手紙 その3 「みなさんへ」

2012-03-20 ヨーロッパからの手紙 その2-「第4回価値継承委員会会議傍聴メモについて」

2012-02-27 ヨーロッパからの手紙-「I love Kyoto-Kaikan」読みました

■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会関連記事
日経アーキテクチュア 2012年4月25日号 内容紹介
2007-11-08 京都会館再整備検討委員会-「京都市情報館」
2011-06-24 「京都会館再整備基本計画」の策定について-「京都市情報館」
2011-07-22 京都会館の保存要望書(回答)-「京都市長 門川大作」
2011-06-27 「京都会館再整備工事設計業務委託...」のプロポーザル参加者募集について-「京都市情報館」
2011-08-05 「京都会館再整備工事設計業務委託...プロポーザル参加者募集について 【再公募】  
2011-09-12 京都会館基本設計業務受託者(香山壽夫建築研究所)技術提案書(閲覧用)-「京都市」
2011-09-13 門川市長記者会見(2011年9月13日)-「京都市情報館」
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by 2011-kyoto | 2012-05-09 12:11 | 2012/04
2012-04-27 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会提言と提言(案)を比較してみました
3月28日第五回京都会館の建物価値継承に係る検討委員会に提案された検討(案)と4月27日に正式発表された提言を比較してみましたので、参考までに掲載いたします。


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■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会提言と提言(案)を比較してみました

2011-04-27 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会提言について-「京都市情報館」

2012-03-28 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会提言(案)


■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会関連記事
京都会館の建物価値継承に係る検討委員会-「京都市情報館」
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by 2011-kyoto | 2012-04-27 00:01 | 2012/04