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2013-06-10 歴史的校舎守りたい 各地で「耐震補強」運動-「読売新聞」
歴史的校舎守りたい 各地で「耐震補強」運動-「読売新聞」

歴史ある校舎や講堂を、耐震補強して保存しようという動きが広がっている。老朽化で解体の危機にさらされながら歴史的価値が見直された建物もあり、安全性との両立に向けた模索が各地で起きている。

  「約3万人の卒業生にとって、母校のシンボルだ」

 愛知県立瑞陵高校(名古屋市瑞穂区)の同窓会が先月、こう保存を求めたのは1924年(大正13年)建設の旧講堂「感喜堂」。名古屋市内に残る最古の講堂で、戦火を免れ、現在は定時制生徒の食堂となっている。

 県教委の耐震診断で「耐震性が極めて低い」と判定され、取り壊しが検討されていた。しかし、同窓会事務局の森重統(しげのり)さん(63)は「古い建物を大切にし、伝統を体感してもらうことは、在校生の教育効果も高める」と、耐震補強して使用していく必要性を訴える。

感喜堂は鉄筋コンクリート造りだが、屋根は木造瓦ぶきで、瀬口哲夫・名古屋市立大名誉教授(近代建築史)は「大正時代の県営繕課設計の特徴を残している。講堂を広く使うため柱が建物外にあるなど、機能性も高い」と評価する。

 1903年(明治36年)に建てられた同県立安城農林高校(安城市)の開校記念館は、同窓会が費用を出して改修工事が行われているが、県教委は「税金を使う場合、改修より新築の方が安ければ取り壊さざるを得ない」とする。しかし、保存要請を受け、感喜堂の耐震補強が可能か調査することにした。

 文部科学省は東日本大震災を受け、2015年度までに全国の学校施設の耐震化を完了させる方針を示した。自治体には「歴史的価値に十分留意する」よう求めているが、どのように留意するかは、自治体の判断に委ねられている。

国の重文指定の例も

 地元の建築家・松村正恒(1913~93)が設計した愛媛県八幡浜市立日土(ひづち)小の木造校舎は、同市教委が約2億6000万円をかけて筋交いで壁を補強するなどし、昨年12月、国の重要文化財に指定された。

 地元住民の意見は保存か建て替えかで割れたが、市教委は、別の校舎を新築するなどして安全性を懸念する住民に配慮した。

 10年前、解体か保存かを巡って訴訟になった滋賀県豊郷町の旧豊郷小校舎は、町が約5億5000万円をかけて耐震補強した。人気アニメ「けいおん!」の舞台のモデルと言われ、年間5万人が訪れる観光スポットとなり、今年3月に国の登録有形文化財にもなった。

 一方、関東大震災後の復興事業の一環として建てられた「復興小学校」の一つ、東京都千代田区立九段小では、現校舎の特徴的なデザインを改築後の建物に反映する「復元的保存」を行う方向で、区教委が地元住民らと協議している。

 京都府立鴨沂(おうき)高校は今年度、校舎(1936年築)の解体が行われる。前身の「新英学校及び女紅場」は日本最初の公立女学校で、新島八重も勤務した。府教委は保存を求める声に配慮し、新校舎の外観に現校舎のデザインを残すほか、正門を保存する方針という。

 日土小の保存にも関わった神戸芸術工科大の花田佳明教授(近代建築史)は「市民の暮らしを支える建物を、もっと評価しようというのは世界的な流れだ。学校は地域や卒業生の記憶の収蔵庫で、技術的にも耐震補強によって残すことは可能」と話している。
(2013年6月10日 読売新聞)

■歴史的校舎守りたい 各地で「耐震補強」運動-「読売新聞」
by 2011-kyoto | 2013-06-30 23:52 | 2013/06
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