自由、孤立、伝統の問題 日本における建築的自由というのは、本質的に建築的孤立を意味するのであり、加えて環境的制約の中で、建築家は一つないし二つの挑戦、あるいは選択をすることになるのである。その選択の一つは、周囲の環境を無視して、設計の初期の段階から建築物の孤立性を強調するということだ。そしてもう一つは、その建築を含む小規模の都市景観をつくり出してしまうことだ。 日本の建築家における二番目の方法は、ミニチュアの都市をつくることである。孤立した作品をつくらざるをえないと感じた建築家は、与えられた空間内にいくつかの建築的要素を配置する。それは建築と周囲の環境との間に、部分的にはであるが関係をつくることである種の解決を図ろうとする、いわばこだわりの態度である。前川國男(1905-1986年)は、そうした態度を保った建築家である。20代の一時期にル・コルビュジェのもとで学び、機能主義を標榜した前川の第一の方法は、比較的整然とした環境をできうるかぎり選んで、その中に建築を置くというものだ。前川の作品の多く、とくにコンサートホールや美術館といった公共建築は公園内に建てられている。 よりより立地を選んでそれを利用する、広場を設ける、建築内に中庭や沈床部分を設けるという前川國男の三つの手法は、東京よりもいっそう条件に恵まれた京都の平安神宮近くの《京都会館》(1960年)で鮮やかに活かされた。回廊に囲まれた中庭は通りから出入りができ、東山を借景として眺めることができる。西に面した大きな壁面を疎水が映し、この建築を特徴づけている水平方向の線を強調する。これは、戦後日本の近代建築におけるひとつの到達点であると言えるだろう。
by 2011-kyoto
| 2005-07-31 00:00
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