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2011-10-12 京都会館建て替えに異論続出。シンポジウム開く(1)堀内隆喜-「JANJANブログ」
京都会館建て替えに異論続出。シンポジウム開く(1)
2011年 10月 12日 18:39 
堀内隆喜

京都市左京区岡崎にある京都会館を今年になって突然、「解体して建て替える」と6月に市が発表した。すでに施工までの日程も決まった。あまりの秘密主義と日程の過密化に対して市民の異論が続出している。この2月には改修としていたものが解体建て替えに変わったことによるものだ。京都会館は1960年竣工の日本を代表するモダニズム建築で設計は戦前・戦後の建築界をリードした前川國男(1986年没・81歳)。透けた空間を体現した建物で二条通りから第一ホールの向うの通りまでが見通せる。さらにホールの入口までは中庭が広がり大文字山が見える絶好の景観を作っている。

計画案によると二条通り側入り口と中庭は部分的に保存されるものの第一ホールの舞台と客席回りなどが建て替えられる。またオペラなどが公演できるようにと舞台奥行きと高さが高くなる。これによって会館の第一の特徴とも言える建物と透けた空間が見事形をなしていたものがなくなる可能性が大きい。

10月10日午後にその京都会館会議室で「京都会館を大切にする会」「京都会館整備をじっくり考える会」とが合同で主催したシンポジュウム「京都会館のより良き明日を考えるー会館の適切な保存改修のために」が開かれた。会場には約100人近くの市民が集まった。パネラーには上西明、鰺坂徹、吉村篤一、前田忠直、山崎泰孝の建築家とオペラ愛好家西本裕美さんが出席した。

多面舞台を作ることは再整備では不可能
基調報告を行った上西さんは建築学会の文化施設の委員で「都市文化遺産としての劇場建築」の報告の中で2月に市が募集したパブリックコメントに応募したことを明らかにして、そのコメントを発表した。その中で『京都会館は、岡崎公園という立地を生かし、公共建築が供えなければならない公共空間を「大きな庇」、中庭空間、ピロティなどを通して実現した、優れた建築ということができると思います。京都会館の再整備は、今立っている建築の、それらの優れた点を損なわないように、整備されるべきです。』『多面舞台を持つ水準の舞台空間を作ることは、現在の京都会館の再整備では不可能です。また、世界的なオペラやバレエをできるための舞台を備えた劇場建築を今後作り維持することーそれだけの投資をすることがー市レベルのホールが目指すこととは思えません』とした。

ホールには、その目指す主目的、主用途がある。ホール設計を行うにはその主目的をはっきりさせる必要がある。第一ホールは、音楽会を主目的に設計されたホールであるために「京都コンサートホール」竣工後は音楽会が主目的のホールではなくなってきている。舞台回りに何らかの改修は必要なだろう。しかし、世界水準のオペラが巡回できるように改築(全面建て替え)するべきか?すでに建築がそこにあることを前提としたときに、それは適切な回答か?と疑問を提言された。

12の注意点を明解述べた西本さん。作っても巡回オペラはできない
オペラ愛好家の西本さんは利用者ではなく観客としての立場から異論をぶつけた。これは昨年12月に突然オペラハウスにすると報道されたこと、2月に議会にも説明することなくロームとの話を新聞発表が先行したこともあっての説明となった。*ロームと京都会館第一、第二ホール、会議場の命名権売買を52億5千万円、50年間で9月14日に正式契約。一括支払いとなった。
(1)建て替え後も世界のオペラはできない(2)多面舞台が必要なので高さを高くしても無駄。オペラは料金が5万~7万円近くのチケット代がいる(3)オペラの可能なホールは作ってもオペラはやらないことになる(4)文化財の建築がだいなしになり、付近の景観を無視することにもなる(5)構造体などは良好なのに解体することは強引すぎる(6)2月の時点では「改築」といってコメントを募り5月には「解体」と発表した(7)*過去検討委員会が提言したにもかかわらず、その結論をなしにして違う案をだすなど隠すことが多すぎる(8)市の理由は嘘が多い(9)オペラ全体の評判を悪くする(10)地元アーチストの公演を無視する姿勢だ(11)計画自体の後にまだ何かあるのではないかと思ってします(12)やったもん勝を許すことになる。などと批判した。
*05~06年に再整備検討委員会が6回開かれて「保存一部増築で検討」の結論を提出。委員長の松隈工繊大教授が委員長。今回の基本計画は「前日にいきなり説明を受けた」と話す。

会館が建築学会賞を受けた時前川國男が述べたこととは
(1961年建築雑誌」)
『建築ができたあとも、この会館を京都市民のあるいは京都の青少年の、ひとつの「生活道場」として活用していくという市長をはじめ当局者の熱意には、正直のところ甚だ心をうたれた次第ですが更に設計から施工の実務に際しての、市の建築担当のK(もともとは実名記載)氏をはじめとする建築家の諸氏の御協力はこの建築の成功に特質大書して記さねばならない貢献をしておられるという事をこの際明らかにしたいと思います。』
『私たちが貴重な市民の金を自信を持って無駄なく使い得たと公言で得る直接最大の功労者はこの方々であったといっても過言ではないと思います』
と書いている。そこで建設当時の市職員との信頼関係が今回はどのようになっているのか。議会を通して市側と議員は何を聞き、どう答えたのかを次回報告する。(続く)

関連記事 http://www.janjanblog.com/archives/44414 京都会館改修で景観規制はずす


堀内隆喜記者のプロフィール

京都在住。京都の伝統行事、文化、風景を発信。主に写真撮影取材で市内を動き回る。京都の最新写真ニュースはhttp://kyopht.staff-forone.com/ でご覧下さい。なおアーカイブはhttp://kyoto-shashin.blog.so-net.ne.jp/ をご利用ください。



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