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2011-10-04 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第1回会議 傍聴メモ(4)中川氏発言
(3)のつづき

2011-10-04 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第1回会議 傍聴メモ(4)


(敬称略)

■中川氏
日本建築学会推薦ということを簡単にご説明させていただきます。
日本建築学会は会員数が3万2千人くらいの日本の建築家を代表する唯一の非常に大きな団体です。京都会館は日本建築学会賞を受賞しています。日本建築学会としても非常に評価してきたものです。われわれが評価してきたものを大切に使っていただきたいということで保存要望書というものを出してきたわけですけれども、しかも、これは建築学会長名で出していただきました。

なおかつ建築学会の要望書というのは、最後に当然のことですが、学会としてお手伝いすることがあればお手伝いします。ということで、それで京都市のほうからこういう検討委員会から申し出がありました。それに対して建築学会のほうから、推薦してくれという申し出がありました。それに対して建築学会のほうで建築意匠委員会というのがありまして、私と石田先生が推薦されました。どういう立場で発言させていただいたらいいのか、微妙な立場ですが、とはいえ、建築学会を全体を代表する意見というわけにもいきませんので、近代建築の歴史を研究する研究者として述べさせていただきたいと思います。

近代建築というのは新聞にも書かせていただきましたけど、それまでの明治や大正のいわゆる洋式建築などとこういうモダニズムの建築というのは、何を保存するのかという価値が違うところがあるんです。それは古い建物の場合はオーナメントだったり、たとえば装飾がついていたり、様式をなにか象徴するようなものが大きなウエイトを占めるのですが、モダニズムの場合はモノをつくるというよりは、そのモノによって囲まれた空間をつくるというのでしょうか、先ほどお話にありましたように人の動きがデザインされていく。そういう空間のすばらしさというものがモダニズムの価値というものなんです。

そういうことでいいますと、京都会館は、たとえば中庭の空間、近代建築の魅力としてみたときおそらく最大の魅力は中庭だろうと思うのですが、中庭の空間のすばらしさというのをどうやって継承できるのか。といったことがおそらく大きなポイントになってくるのではと個人的には思っております。で、モダニズムは、与えられた機能をうまく全うするように作るわけですが、その求められる機能が変わったときに、今回でいえば具体的にいえば第一ホールの改修ですが、そうするともともと持っていた機能で設計された空間を、その機能をかえるということは、これはもう、相当な矛盾を起こしてくることは確かなんですね。どうやって解決するかということは、これは大変むずかしい問題だろうと思います。

 これまでの近代建築の保存改修にくらべて、今回のケースはおそらく日本で一番最初に直面する大変困難な改修になるんではないかと。ただそれはどこかでチャレンジしていかなければならない。わたしにとっても大変重い場に引きずり出されてしまったなという、ただ、誰かが引き受けないといけない。使命感をもっています。以上です。

中川理 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦)


■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第1回会議 傍聴メモ(4)
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2011-05-30 京都会館保存訴え 左京、再整備計画で専門家ら催し-「京都新聞」
2011-05-29 京都会館・ウオッチング-「岡崎公園と疏水を考える会」

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中川 理 / 淡交社

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中川 理 / 彰国社





京都会館の建物価値継承に係る検討委員会第1回会議摘録より
中川委員
・ 本日,紹介いただいた際に,日本建築学会からの推薦と紹介されたが,その点について簡単に説明をさせていただく。
京都会館は日本建築学会賞を受賞した,建築学会としても非常に評価してきた建物である。
日本建築学会は会員数が3万2千人ほどおり,日本の建築を唯一代表する非常に大きな学会である。京都会館の整備計画が示された後,建築学会としては是非,学会が評価してきた建物を大切に使っていただきたいと学会長名で保存要望書を提出したが,それに対して京都市から,再整備に当たって建築価値を継承してくことを考えており,なおかつ建築学会の要望書には,学会として協力できることがあれば協力する旨を記載されていることから,京都市から今回のような価値を維持するための検討委員会を立ち上げるため,建築学会から委員を推薦してほしいとの申し出があった。
それを受けて建築学会で担当している建築歴史意匠委員会で議論をし,市の申出に対して委員を推薦することを決定した結果,私と石田先生が推薦されることになった。
こういった経緯があり,私と石田先生は,どういった価値があるかを発言する際には少し微妙な点があり,建築学会の推選ではあるが,学会で議論をしたのは歴史意匠委員会であり,主に建築の歴史を研究されている先生方を中心として議論をしてきたことから,近代建築史の研究者として,どういったことができるかということを発言させていただきたいと考えている。
・ 近代建築というのは,新聞にも書いたが,これまでの明治や大正の様式建築の保存とは根本的に異なり,モダニズム建築の何を保存するかについては価値が全然違ってくる。古い建物の場合は,例えば象徴する何かの様式がある場合,それが大きな価値を占めることになるが,モダニズム建築の場合は,ものをつくるというのではなく,ものによって囲まれた空間をつくるということが大切で,人の動きというものがうまくデザインされている。
そういった空間の素晴らしさがモダニズム建築の価値ということでいうと,例えば,京都会館をモダニズム建築という意味で見たときの最大の魅力は恐らく中庭だと思うが,中庭の空間の素晴らしさをいかに継承していくかということが,大きなポイントになるのではないかと個人的に思っている。
・ モダニズム建築は機能的につくる,与えられた機能をうまくまとめるためにつくられるのであるが,その機能が時代によって求められるものが変わった時に,今回も具体的にいえば第一ホールの収容人数や,ホールの機能をより良く今の時代に合うように変えるとすると,元々持っていた機能で形成されていた空間を,新たな機能に変えることになり,相当矛盾を起こしてくるということは確かであると考えている。
そのことをどうやって解決していくかというと,これは大変難しい問題であると思う。
・ これまでの近代建築の保存・改修に比べ,今回のケースは,恐らく日本で一番最初に直面する大変困難な改修であると考えている。

pdf第1回京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 摘録(ファイル名:09_tekiroku.pdf サイズ:337.41 キロバイト)
2011-10-24 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会第1回会議資料と摘録-「京都市情報館」

by 2011-kyoto | 2011-10-04 00:06 | 2011/10
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