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2012-03-06 京都会館建物価値継承委員会 第4回会議 傍聴メモ(5) 増設予定の共通ロビー 各委員の意見1
※京都市の第4回京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 摘録が03/27に公開されましたので、下記にあわせて掲載させていただいています。(2012/03/27記)

京都会館建物価値継承委員会 第4回会議 傍聴メモ(5) 増設予定の共通ロビー 各委員の意見1

(4)のつづき
共通ロビーと景観検討写真についてはこちらもご覧ください
(敬称略)

衛藤委員:

この前改めて京都会館をもう一度、見てきたのですが、その前は夜にコンサートのときにいったのですが、随分印象が違って、現在の京都会館はサッシの割付、光というのが非常に重要なんだなと、あらためて思いました。そういう中で、いろいろ考えていきまして、いろんなところを変える、あらためて更新、変更していくというときに一体その基準はどこにあるのかということを考えてきますと、やはり今回はこの京都会館を再整備するんだ、今、香山先生が枠の中でするんだとおっしゃられた、、、やはり今現在の前川建築をできる限り尊重して残すというのがまず大前提にあって、残すというのは材料その他を含めたものですね。その上でどうしてもそこに新しいものを加えなければ現在の機能が果たされないような、香山先生がおっしゃられたようなことになるのかなと、そのように理解をしました。そういう気持ちの中で、ずっと見回っていますと、委員長が西側とおっしゃって、確かに西側も気になるのですが、やはり僕自身がサッシは努力をされて、現在のサッシを残すという風に言われた、これ非常に朗報だなと思っております。ピンコロ石など、その他もできるだけ変えないで機能を満たすというところもすばらしいと思います。そういう中でちょっとどうしても気になりますのが、香山先生には申し訳ないのですが、共通ロビーのところです。


共通ロビーのところがですね、いろんなことを考えて香山先生が、既存のサッシの割付に合わせたというのは非常によいなと思いました、が、前回、2階の手すりを覆ってしまうのは2階の手すりの冒涜だとおっしゃられたと思うのですが、やはり、この全体の雰囲気を残すということを考えると、多少機能的な不便さはありますが、上下階を分けて手すりの内側になんとかガラスが入れられないかと、、、要するに1階は庇のすぐ下にガラスが入るとしても、2階は手すりから内側に建築基準法上必要な通路幅をとって、そうすると、2階の共通ロビーが狭くなることはよくわかります。よくわかりますが、、、そのあたりについてのお考えを再度お聞かせいただければと思います。

福島(事務局):

衛藤委員のほうから手すりを内側にというお話しをお聞きしたのですが、京都市側としましては、基本上、共通ロビーは第1ホール、第2ホール、会議棟をつなげる重要な要素だと思っております。それで実際資料5の共通ロビーの断面図を出しておりますが、内部に入れた場合の検討も実際は行っております。その場合、共通ロビーとかかれております、人が立っておられる部分ですが、このあたりにサッシを取り付けることになるのですが、今、通路幅が3.5mとかかれていますが、実際2mくらいしか通路幅しか確保できないということが検討した中、出ております。バルコニー部分なんですが、サッシを取り付けることになりますと、構造的な梁を設けたり、今の手すりの下あたりにそれを受ける柱を設ける必要が出てきます。それもありまして、現在の形のようなものを提案させていただいているということです。

衛藤委員:

荷重がかかるということですか?


福島(事務局):

そうです、検討させていただいているのは、なるべく建物に荷重をかけない方法でさしていただいているというのが今の現状です。


石田委員:

部材の残せる範囲を最大限に確保していただいていることについてはよかったなと、あと、景観のシミュレーションですが、当否の判断は別として大きな判断材料を与えてくださって感謝しております。
私も、共通ロビーの中庭側の見えが、私どもの歴史的価値の継承ということでは一番気になる点です。建築学会の保存要望書でも「手すりと庇の水平線のラインがもたらす伝統との共通性、親和性」ということ書いております。やはり京都会館が何か寺院建築でありますとか、日本の伝統建築と重ね合わせて語られるのは結局、庇と、縁と高覧との相似形のものとして捉えられているからであろうと思われます。
特に2階の手すりを覆う形での共通ロビーというのは、その、私どもが建築の価値としての一番重要な部分として認識している伝統との近さというものをかなり阻害にしているように思えてなりません。
いくらかキツイたとえを使うとすればですね、桂離宮の縁先に屏風か何かを建ててしまったかのような印象をもつのです。特にテラスのところが囲われた形になっている。
これは重大な問題ではないかという気がしてなりません。

前回も共通ロビーのありようというのはそもそも設計での計画の段階での問題があるのではないかということを申し上げていたのですが、それはなかなか今日のお話では譲れないということではありますが、しかし、どう考えてもこのガラス面は透けて見えるとおっしゃいましたが、現実にはですね、夜景ではいざしらず冷たいガラスの面が反射するわけで、むしろ黒みかげの壁が立っているような印象を与えるのではないでしょうか。建築デザインとしては美しいものではあるかもしれませんが、それは私どもが求めている歴史的価値の継承とは全然違うものであると私には思えます。

道家委員:

私も香山先生がデザインをお考えになるというその点については建築家として尊重しなくてはいけないと考えていますが、石田先生と基本的には同じ意見です。これだけ残る部分が多くなってきて、均整がとれてきまして、そう考えると、一番最初のときは香山先生のデザインという考えで見せていただきましたが、ちょっと全体のバランスが石田先生のお考えになるほうが現在は妥当かなと考えております。

中川委員:

私も同じように思います。香山先生のデザインがどうかという問題ではなくてですね、建物価値の継承という点についていうと、前川建築というか、この京都会館の、初回の頃にも繰り返し指摘されてきましたようにこの京都会館の魅力の一番大きなところとして中庭のデザインがあるわけですね、そうするとこの中庭のデザインをどう維持できるのかというのが建物価値の継承ということの非常に大きなテーマになってくる。

それと今おっしゃったことと同じことになるのですが、スチールサッシの問題とか、前回指摘させていただいてそれに対応していただいて非常に我々が歴史的建築を扱う場合の保存の扱い方をですね、ご努力されて、スチールサッシもそのまま残そうとなった。第1ホールも南側壁面を残すということになってくる、そういうことになりますと、やはり中庭のデザインが維持されるということが非常に重要になってきたのだろうと思います。その点でいうと、ガラスの壁面を後退させるというよりも、それ以前に共通ロビーという考えがどこまで必要なのかということですよね。もちろん機能改修が含まれるわけですから、どこまで新しく機能的なものを作るかというのは重要な課題になるわけですが、、、

たとえば、客待ちの人が雨が降っているから待っていてもらうのは申し訳ないと、だからちゃんとした屋根をかけてあげる、もちろんそうだと思うのですが、もちろんそういう機能改修上の欲求と歴史的な価値をどこまで残すのかということのバランスを考えなくてはならないということになると思うんですよね。そう考えた場合、やはり石田先生がおっしゃったような中庭を面する面がちゃんとそのまま維持されていくことのほうが、それにそこに加えることによって歴史的建物価値が減じてしまうことの方が大きいように思います。

ですので、たとえば、レストランのところをやめてそこを大きな吹き抜けにするという、そこはすばらしい提案だと思います。そういう風に第1ホールと第2ホールを結ぶ空間をより人が行き来しやすいように工夫していただくことはすばらしいと思いますが、そこから先、中庭のデザインを変えてしまうような改変が行われるということは建物の歴史的価値を継承するという点ではまずいのではないかと思います。

橋本委員

私も基本的に同じことで、香山チームに対してはここまで随分やっていただいたなという中で、やはり価値継承という目でみると、一番最後に気になったのはこの点なんですね。防水の問題とか、庇の先端のところにサッシを上下に分断して、なおかつそれを一連に見せるということ、技術的なデザイン的な難しさ。そういうディテールにわたって考えると、確かにくくってしまうというのは一つの手法かなと技術的な観点からは理解できるのですけれども、やはり前回メモという中で発言させていただきました手すりという考え方ではなくて、欄干という考え方なんですね、お寺さんの大庇の下に内部の仕様として欄干が回ってる、そういう欄干が回っているという仕様は外部の使用で、コンクリートの荒々しいアーチ型の手を開いたような荒々しさが欄干の意匠として大庇の下に伴って、突き出ているというところがこの京都会館の大庇と欄干の外部の意匠を構成している、それが全体の水平を維持している。

一番大事なことは京都会館はすごく前川の建物にとっても特異な大事な建物であるということは、それまでのヨーロッパ的なボリューム感のあるブルータルなコンクリートのマスの意匠はあるんですけれども、日本的な要素、、日本的な風景、日本的なたたづまい、そういうものをはじめてこの京都会館で実現した、日本的なモダニズムなんですね。日本らしいモダニズムというのをここで発揮している。その要素が工法であり、素材であり、お寺さんなんかに見られる伽藍の風景を、となりの市の美術館にも屋根の下に欄干があるような、お寺のただずまいを共通項として、この京都会館をもちこんでいる。そういう外部の要素が水平構成をつくって大庇と一連のものとして、欄干があるという。しかも欄干の中には照明が入っていて、照明から大庇を照らすような風景を実はつくっているという、夜間になってあまり使われていないのですが、そういう趣旨のものでデザインされている。

そういうことをつらつら考えていると、内部に取り込むというのも一つの見え方としては確かにあるんですけれども、実際に先ほど副委員長もおっしゃったように、ガラスのサッシとガラスのカーテンウォールというものができた場合に、たとえば二重ガラスにしたり、場合によっては透明性はあるといえども、熱遮断のフィルムを貼ったり、あるいはいろんな要素がでてきたときに、どこまで透明感がホントに果たせるのかという、環境負荷の問題から考えると非常に難しい局面が出てくるのではなかろうか。なおかつ、内部に取り込んだ場合外の欄干が室内の廊下の中にコンクリートの打ち放しの外部の欄干が内部に一緒に廊下の側にあるという風景もこれまた違和感が感じられる、むしろ内部に取り込むのであれば、人が触って優しい木製とか、そういうものであるべき姿であって、この欄干の姿がそもそも内部にある、取り込む要素ではなくて、外部にあるべき素材の構成になっているのではなかろうかという思いがあります。ちょっと長くなりましたが、私自身としても香山チームにはいろいろご努力いただいて、随分よくなったなという思いの中で、大変なことだとは理解しつつも、ちょっと気になるなぁ、出来上がったらどうなるのだろうなぁ、と唯一気になるのはこの欄干を内部化することへの懸念がどうしても拭い去れないのが実情です。

石田潤一郎 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦) 副委員長に選任
衛藤照夫 社団法人京都府建築士会会長
道家駿太郎 社団法人日本建築家協会近畿支部京都会会長
中川理 京都工芸繊維大学工芸科学研究科教授(日本建築学会推薦)
橋本功 前川建築設計事務所所長
福島正俊 建築担当課長 都市計画局公共建築部事務局員


■京都会館建物価値継承委員会 第4回会議 傍聴メモ(5) 増設予定の共通ロビー 各委員の意見1

■京都会館の建物価値継承に係る検討委員会関連記事

2012-03-06 京都会館建物価値継承委員会 第4回会議 傍聴メモ(3) 増築予定の共通ロビーと景観検討写真

共通ロビーについて 前回までの委員の主な発言

2012-01-16 京都会館建物価値継承委員会 第3回会議 傍聴メモ(5)意見交換:共通ロビー他について
2012-01-16 京都会館建物価値継承委員会 第3回会議 傍聴メモ(3) 橋本氏考察
2011-11-19 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第2回会議 傍聴メモ(6)全体討論
2011-11-19 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 第2回会議 傍聴メモ(7)全体討論



第4回京都会館の建物価値継承に係る検討委員会 摘録より
pdfダウンロード

衛藤委員

・ 先日,改めて京都会館を見てきた。
その直前に行ったのは,夜のコンサートのときであるが,その時と随分と印象が違い,京都会館においてサッシの割付け,そして光が非常に重要であると改めて感じられた。
・ そういう中で考えると,先ほど香山先生のお話にもあったが,古くなったところを更新していくとした場合に,価値判断基準がどこにあるのか考えたい。香山先生がおっしゃった「枠の中でやる」ということを自分なりに解釈すると,現在の前川建築をできる限り尊重し,残すことが大前提であり,どうしてもそこに新しいものを加えなければ,現在の機能が満たされないときに,香山先生がおっしゃったようなことが必要になるのだと考えた。
・ そういう気持ちで改めて考えてみると,委員長は西側立面を例に出されたが,私自身は何とか努力いただいて,現在のスチールサッシが残せるということは非常に朗報であると感じている。
・ このサッシ割が変わると,大きな影響があったと思うので,よかったと感じている。また,床のピンコロ石などについても,材料をできるだけ変えずに機能を満たしていく努力には賛同したい。
・ その中で,やはり少し気になるのが,共通ロビーのところである。
共通ロビーのところで新しいカーテンウォールの割付けを既存のサッシの割付けに合わされたことは非常に良い点であると感じた。
・ とはいうものの,前回の会議で香山先生は,2階の手摺を外に出すようなことは,前川先生が設計された手摺に対する冒涜であるとも言われたが,全体の雰囲気を残すということを考えると,多少,機能的な不便さはあるが,上下階を分けて手摺の内側にガラスを入れられないだろうかと思う。
・ 1階は手摺の直下にガラスが入れられるが,2階は手摺よりも内側に必要な通路幅を取って設置すると,2階の共通ロビーが狭くなることはよく分かる。
この辺りについての考え方を再度お聞かせいただければと思う。


岡﨑委員長

・ 事務局の考えを聞かせていただきたい。


事務局(福島都市計画局公共建築部企画設計課建築担当課長)

・ 衛藤委員から手摺を外部に出すような納め方は出来ないのかとのことであったが,京都市としては,この共通ロビーは第一ホール,第二ホールそして会議棟をつなぐ機能上重要な要素であると考えている。
・ 資料5で断面をお示ししているもの以外にも,手摺よりも内側にガラスを入れた場合の検討も行っている。
その場合は図面で人が立っている位置辺りにガラスが来ることになるが,その際は通路幅を約2m程度しか確保できないということになる。
・ また,このバルコニー部分については構造的には片持ちで支えられており,手摺より内側にサッシを取り付けると,その荷重を受けるため,新たに構造的な柱や梁を設ける必要があるため,手摺を取り込んだ提案をさせていただいている


衛藤委員

・ それは荷重条件が変わってくるからか。


事務局(福島都市計画局公共建築部企画設計課建築担当課長)

・ そのとおりであり,できるだけ既存躯体に新たな荷重を掛けないことを念頭に置いている。


石田副委員長

・ 建物構成する部材ごとに残せる範囲について検討されていることはありがたいことだと考えている。
また,景観シミュレーションについても非常に行き届いたものであり,その当否の判断は別でされるのかもしれないが,大きな判断ができる材料をお示しいただいたことは感謝している。
・ 私も共通ロビーの中庭からの見え方について,歴史的価値の継承をお願いしている立場としては気になる点である。
日本建築学会の要望書においても,庇と手摺の水平線がもたらす伝統建築との共通性,親和性をうたっている。
・ 今の京都会館がしばしば日本の伝統的な建築物と重ね合わせて語られるのは,庇下のPC手摺が高欄との相似形として捉えられるからであろうと思っている。
その中で,2階の手摺を覆ってしまう形の共通ロビーは,建築の歴史的価値として重要な部分であるとして認識している「伝統との近さ」というものを阻害しているように思えてならない。
・ きつい例えとして言うと,桂離宮の軒先に屏風を立ててしまったかのような印象を受け,特に2階のテラスを囲った形になっているということは,かなり重大な問題はでないかと思う。
・ 前回,共通ロビーの必要性については,設計や計画の段階では譲れないとおっしゃっていたが,このガラス面は透けて見えると事務局からは説明があったが,冷たいガラスの面が見えて,反射により,むしろ黒御影の壁が建っているような印象を与えてしまうのではないか。
・ 建築デザインとしては美しいものだとは思うが,それは建築学会が求めているような歴史的価値とはイメージが違うものであると考えざるを得ない。


道家委員

・ 基本的には香山先生がデザインをされるに当たって,先生の考えは尊重しないといけないと思うが,これだけ色々な形で残る部分が多くなってきて,それが均整のとれた形で残ってくることになると,一番最初に見せていただいた時には香山先生のデザインであると理解できたのだが,全体のバランスを通して見ると,石田副委員長の御意見と同様の意見をもっている。


中川委員

・ 私も石田副委員長と同じように考えている。香山先生のデザインがどうかという問題ではなく,歴史家というか建物価値の継承という観点から言うと,最初の委員会でも繰り返し指摘されていたが,前川建築の京都会館の魅力として一番大きなものとして中庭のデザインがある。
・ そうすると,この中庭のデザインをどういった形で維持できるかが,建築価値の継承にとって非常に大きなテーマになってくる。
繰り返しになるが,スチールサッシについては前回の会議で指摘させていただいたが,それに対応していただき,我々が歴史的建築物を扱うような文化財的な扱い,保存の扱いについて非常に御努力されており,スチールサッシをそのまま残そうということにもつながっている。
・ 第一ホールも南側の1スパンを残すということになると,やはり中庭のデザインが維持されるということは非常に重要なことになっていると思う。
その点でいうと,ガラスの壁面を後退させるというよりも,それ以前に共通ロビーという考え方がどこまで必要なのかということになる。もちろん機能改修も含まれ,どこまで機能的に優れたものを新しくつくるかということは重要なことになる。
・ 例えば,雨の日に客待ちが発生している,濡れて待っていることが申し訳ないからきちんと屋根を掛けるということは必要なのだと思うが,こういった機能改修と歴史価値をどれだけ残すかということになると,そのバランスを考えねばならないと思う。
・ その場合,石田副委員長がおっしゃったように,中庭に面した部分がそのまま維持されていくことよりも機能改修を行うことの方が建物価値を減じてしまうと思う。
・ 例えば,現在のレストラン部分を大きな吹き抜け空間にするということは非常に素晴らしいと思うし,第一ホールと第二ホールを結ぶ空間をより人が行き来しやすいように工夫していくことは素晴らしいことではあるが,中庭のデザインを変えてしまうような改変が行われてしまうことは建物価値の継承という点ではまずいのではないかと思う。


橋本委員

・ 香山先生がここまで考えられたことについて,よくやっていただいたと思っているが,価値継承という観点で考えていくと,最後に気になったのが実はこの中庭のことである。
・ 防水の問題や庇の先端のところでサッシを上下に分断させ,なおかつ一連に見せるということの技術的,デザイン的な難しさや,足元の防水の立ち上がりやPC手摺の足元の防水部分とサッシの足元との兼ね合いなど,ディテールにわたって考えると,確かに囲ってしまうことは一つの手法であると技術的な考えとして理解できる。
・ 以前にも申し上げたが,この手摺は,「手摺」ではなく「欄干」という考え方である。
いわゆる寺院にある大庇,大屋根の下に外部の仕様として欄干があるが,これは本来外部の仕様である。コンクリートの荒々しさが欄干の意匠として大庇の下に伴って突き出ている。大庇と欄干が外部の意匠を構成し,それが京都会館の全体としての水平性を維持している。
・ 一番大事なこととして,京都会館は前川の建物の中で特異な,大事な建物であるということだ。これまでのヨーロッパ的なボリューム感のある,ブルータル(荒々しい)なコンクリートのマッス(かたまり,まとまった)の意匠はあるが,日本的な要素,風景,佇まいといったものを初めて京都会館で実現した。日本らしいモダニズムを京都会館で発揮したと言える。
・ その要素として,工法や素材を質素に使いながら,寺院で見られる伽藍の風景を,隣の美術館別館にも屋根の下に欄干があるような佇まいを,共通項として京都会館に持ちこんでいる。
そういった外部の要素で水平的に構成しており,大庇と一連のものとして欄干がある。
・ また,その欄干の中には照明が仕込まれており,そこから大庇を照らすような風景もつくるような主旨でデザインされている。
こういったことを考えると,手摺を内部に取り込むことも一つの見え方としては確かにあるが,石田副委員長がおっしゃったように,このガラスのカーテンウォールができたときに,熱負荷などで二重ガラスにしたり,熱線遮断フィルムを貼ったりした様なことになったときにどこまで透明感の確保ができるのか,環境負荷の問題から考えると難しい局面が出てくるのではないか。
・ 手摺を内部に取り込んだとき,室内の廊下の中に,コンクリート打ち放しの外部の要素としての欄干が廊下の側にあることに違和感を受ける。内部に取り込むのであれば,人が触って優しい木製などであるべきで,欄干の姿そのものは内部に取り込む要素ではなく,外部にあるべきものとしての素材になっているのではないかと思う。
・ 香山先生が非常に御努力されていることは感じつつ,テーマとして,これが大変困難なことであることは理解しつつも,出来あがった時にはどうなるかと気になる唯一の点が,この欄干を内部化するということに対する懸念であり,これを拭いきれていないのが実情である。

by 2011-kyoto | 2012-03-06 00:05 | 2012/03
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