2012-03-20 ヨーロッパからの手紙 その2-「第4回価値継承委員会会議傍聴メモについて」
ヨーロッパからの手紙 その2-「第4回価値継承委員会会議傍聴メモについて」

Subject:第4回会議傍聴メモのアップデート、ご苦労様です
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〇〇さま

数週間前の-10℃がうそのように、春の気配で眩しい中欧です。
京都会館建物価値継承委員会第4回会議傍聴メモのアップデートを拝読しました。

会議はあと一回開かれるということですが、大詰めを迎えて起こるべきことがやはり起きはじめたという印象です。
委員の人たちが指摘する、中庭の空間と既存建物の建築構成要素に対する配慮の必要性
それに対して「基本設計受託者」が示す苛立ち
その合間で、のらりくらりと身をかわす事務局の担当者。
驚きだったのは、建築そのものの価値とその保存が課題なのに、建築の内部にあってすでにそのアイデンティティーの一部となっているであろうタイルのレリーフなどがテーマとして上がっていなかったことです。
建物の外観を云々することのみで建築の価値が語りつくされるとでもいうのでしょうか。

私が「起こるべき」と言ったのは次のような理由からです。

まず「委員会」、これは事務局によってことが運ばれたあとで「あとづけ」的にイニシエートされた審査の機関ですから、事務局から与えられたインプットの量と質に応じた対応しか出来ません。審査の過程で与条件自体に問題のあることが判明すれば、「事務局」に対してその見直しを迫りたくなります。

「基本設計受託者」にすれば、事務局との打ち合わせを踏まえて進めた計画の、たとえばコンベンション機能の拡充などの出発点が疑に付されるとなると、それはいい迷惑でしょう。

そして「事務局(=市当局)」
高さ制限を緩和しておいて「建蔽率があるからきつい…」と意味のある提案をブロックしようとしたり、老化で剥離が起こり危険だからと、焼き物のレリーフの撤去を何の配慮もなく決めてしまうとか、時間切れで押し切ろうということでしょうね。

「委員会」が基本設計受託者が事務局との打ち合わせに基づいて出してくる対応案に不満を表明し、受託建築家がそれを腹に据えかねて応酬するという構図。

理解はできますし、また必要なことでもありましょう。でもそれは、この期に及んで為されるべきことではありません。
というのも、こういう論議を経てはじめて問題点が浮かび上がり、意見が調整され、本格的に設計をはじめるための出発点(たとえばコンペ公示の要項)が 形成されるのですから。
 そういう意見の調整と、実施にむけての設計とを同時に済ませてしまおうと する無理な相談に乗せられて、その無条理のなかで、建築に対する思いを一にしつつも、学者とか自負のある建築家とかのプライドを主張することのみで終わってしまう、とすれば不毛だし遺憾でもあります。

でも軽言ではなく、自分の望みが満たされないと判断した場合にスポンサーが寄付を減額できるというのが本当なら、市当局は危ない橋を渡ろうとしているのではないでしょうか。
スポンサーの望む「一流オペラ上演劇場」と、市が望むコンベンション機能。新築であっても難しい課題を、既存の建物の改築の枠内で満たそうというもくろみ。

途方もない天災・人災から一年が経ち、欧州の放送局では日本とは異なった視点から、特集番組がいろいろと放映されましたが、そういう兼ね合いもあって、このブログと同時にYouTubeで『たね蒔きジャーナル』のバックナンバー2012年3月12日放送分を聞く機会がありました。
http://www.youtube.com/watch?v=VEZAJ8JGBdo&feature=channel 
その後半で京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が、完成した原発に火を入れることなく廃炉にしたヨーロッパの国の、市民運動に触れておられました。

それは、カルチャーとしての抗議のあり方を示唆しています。そしてその国の人たちは建築に関しても、納得が行かなければ同じようにデモをするでしょう。建築が文化として根付いていることの証です。役所の主導が間違っているというのではありません。今回のような混乱が起こらないように、押さえて置くべきことは押さえておく必要があるということです。


そろそろ桜のつぼみが膨らみ始めるころでしょうか。
新入生歓迎コンパの翌日に楽しむどころか、その下で一日中ダウンしていたことを思いだしました。
最終回の成り行きに注目したいと思います。

2012年3月20日
xx


■ヨーロッパからの手紙 その2-「第4回価値敬称委員会会議傍聴メモについて」

2012-02-27 ヨーロッパからの手紙-「I love Kyoto-Kaikan」読みました

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by 2011-kyoto | 2012-03-20 00:00 | 2012/03
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