2012-04-01 建築人 吉村篤一-「建築人4月号 No.574」
建築人 吉村篤一
京都会館保存運動

河野
 「京都会館」(前川國男設計一九六〇年)の第一ホール建替えについて、どのように思われていますか?

吉村
 京都会館再整備基本計画が、第一ホールを全部取り壊して新しく建て替えることになっていて、その要求内容が過剰なんです。オペラができるようにするとか、二千人は収容するようにとか・・・。それらすべてを計画内容に取り込むと、今までと全然違う空間になってしまう。それはよくないということで京都市へ要望書を提出したり、賛同署名を集めたりする運動を行っています。シンポジウムも二回やりました。

河野
 賛同メッセージや署名運動などの盛り上がりに対して、今後の展開はどうなんですか?

吉村
 先日、行われた京都市長選挙で、保存賛成派の候補者が落選してしまいました。保存は、厳しいのかもしれません。

森本
 坂倉準三が設計した建築で保存運動といえば、「伊賀市庁舎(旧上野市庁舎)」(一九六四年)があります。建築史家や坂倉関係の方々が集まって地元で保存シンポジウムを何回か行ったようですが、残念ながらすべて取り壊した上で新しい庁舎を建設することが発表されました。この建物は全体で城下町に融け込ませるように設計していますから、残念です。保存運動は、建築関係の人間はその価値を訴えますが、一般の市民に広がらないのが現状です。

吉村
 確かにそれはありますね。伊賀市庁舎は残念ですね。何とかならないのでしょうか。「京都会館」の場合も一般市民はほとんど無関心で、今回の計画で良くなるんだと思っている人が多いですが、実はその逆なんですけどね。

森本 
 古いものは一度取り壊されると、同じものをつくることができないことが多々あります。京都会館のタイルも、同じものが張れるかどうかという話もありますしね。似たようなものはできるかもしれませんが、完全に同じではないことが考えられます。

吉村 
 その話はオーセンティシティ(真実性)の問題ですね。先日に京都工芸繊維大学で行われた建築の保存についてのシンポジウム(注11)で、例えば建物に使われているガラスを修繕する際、その当時のガラスを再現しないとオーセンティシティはないが、どうしてもできないときにどうするかという議論がありました。

森本
 残すことは当然のこととして、その上での話ですね。

吉村
 そうそう。ル・コルビュジェの「サヴォア邸」(一九三一年)でもガラスの問題はあったそうですね。材料自身が当時のものはもう無いので、それをどこまで近づけるかが問題だと。また、オランダにリートフェルトが設計した穴開きブロックと木造の軽い形態の建物(注12)があるんですが、二回再築しているらしいね。そのときに、時代が違うからどんどん材料が無くなってしまっているので、どこまでオーセンティシティを保つかとか、そもそも周りの環境が違うのにどうするんだとかといった議論があり、やっと今三回目の保存ができて、「これはオーセンティシティがあるかどうかわからない」といったことがあるらしいです。移築時には周りの環境も考えて場所を決めなければならないくらい慎重に進める必要があるということですね。現在のわが国の状況と比べると雲泥の差がありますね。

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■建築人 吉村篤一-「建築人4月号 No.574」
社団法人大阪府建築士会

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by 2011-kyoto | 2012-04-24 13:29 | 2012/04
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