2012-08-13 京都会館第一ホール解体問題に関するメモ-弁護士 玉村匡
このメモ書きは8月13日京都会館解体工事差止を請求する住民訴訟の提訴、記者会見上にて発表されたものです。ご了解を得て、掲載させていただきました。尚、本件については8月26日 第4回緊急シンポジウム 「京都会館のより良き明日を考える」にて詳細を発表していただく予定です。

京都会館第一ホール解体問題に関するメモ

弁護士 玉  村   匡

 解決策が、京都会館の改修の必要性から、建て替えに直結されている。
 → 改修・補強で存続可能。

 建てかえの必要性に、合理的な根拠がない。
→ オペラの上演には、不十分。そうすると、建物フライを高くする必要性があるのか。

 価値検討委員会を設置して諮問をしておきながら、結局何も変わっていない。
 → 建て替え案単なるエクスキューズだと言われても仕方がない。

以下の価値承継検討委員会の提言は、極めて重要である。
a 空間構成の継承
① ピロティによって中庭に導く「開かれた公共空間」の特質を守ること。
② 中庭から第一ホールのホワイエを透過して冷泉通まで見通せる空間の流動性を保つこと。
③ ホワイエ、ロビー空間を拡充しようとする際には、現建物の持つ全体の空間構成や外観意匠の価値を十分に尊重して行うべきである。
b 外観意匠の継承
① 現京都会館の外観意匠における特質は日本の建築的伝統との近さである。この印象は、大庇・手すり・バルコニーによって形成される立面が、日本建築における軒・縁・高欄による立面と似通うことから与えられる。こうした立面構成の価値を維持継承できるようにしなければならない。
② 現京都会館の上記の特質をとりわけ明瞭に感じさせる中庭に面した外観については、特にこのことが求められる。
③ サッシ割りなど細部の形状について可能なかぎり原型を保つこと。
④ 第二ホールのホワイエはガラス面を透過して外観と一体化している部分であるから、その空間構成の継承に対しては十分な配慮を払うこと。陶壁画についてもその芸術性に敬意を払いつつ、継承に努めること。
⑤ 第一ホールのフライタワーの形姿については、大庇で表現された大屋根の下に諸々の空間を抱込み、大屋根の上のマスは空や山並みに融け込むという原設計の外観意匠の全体的統一性の上からも十分な配慮を払うこと。
c 景観構成要素としての意義の継承
① フライタワーの高さ・形状については、岡崎地域、ひいては東山山麓の風致を損なわないよう最大限の配慮を払い、現在、進められている重要文化的景観の調査検討および歴史的風致維持向上計画の策定との整合に留意しつつ、十分な検証をおこなうこと。
② 景観シミュレーションを見ても、舞台内高さ27mを確保した基本設計案のフライタワーが周辺の風致に与える影響に配慮することが必要であることは明らかである。いかにフライタワーの高さとボリュームを抑えていくかがデザインの要であり、慎重なデザイン処理を行うべきである。
③ 新築される第一ホール部分の形状・色彩・素材についても、岡崎地域の風致を損なわないよう精緻な景観シミュレーションを行うなど最大限の配慮を払うこと。

 「何が何でも、当初案どおりに行く」「そのためには、制限までも変える」というのでは、何のための「新景観政策」か。
 → 今回、市が行った制限の変更はつぎのとおり。

 
 (1) 【地区計画】H24/2/1 岡崎文化・交流地区地区計画策定
 京都市および平安神宮の敷地のみを対象にして(実質的な一人)地区計画を策定し、その中で、第一ホール部分の建物高さを31mに緩和(甲8)

  (2) 【風致地区】H24/2/1(同年告示395号)
 京都会館地域について、それまでの岡崎・南禅寺特別修景地域(H19/9/3)から切り捨てて、岡崎公園特別修景地域(B地区)に指定替え(甲17)

岡崎・南禅寺特別修景地域
 永観堂から南禅寺の周辺では、東山の借景空間の保全を図るため、建築物は和風外観の度合いを高め、京都らしい雰囲気を保持すること。また、岡崎公園一帯や蹴上一帯では、和風要素の取り入れ、又は岡崎公園一帯における歴史の文脈を考慮した上での近代的・都市的景観の創出、蹴上一帯における京都の近代化に寄与した諸施設のデザインの継承による修景を図り、道路側に植栽、生垣、和風門、和風塀のいずれかを設けること。
南禅寺参道沿いでは、趣のある参道景観を保全するため、連続感のある和風塀と既存樹木の保全を図り、建築物は、原則として日本瓦ぶき和風外観であり、軒の連続性に配慮すること。

岡崎公園地区特別修景地域
 岡崎公園地区では、既存樹木で構成される広々として緑豊かな通り景観や都市における自然的景観を維持するため、道路及び琵琶湖疏水に面した既存樹木を保全すること。
また、京都都市計画(京都国際文化観光都市建設計画)岡崎文化・交流地区地区計画の区域のうち、地区整備計画が定められた区域(C地区を除く。)の建築物は、当該地区計画において定められた建築物等の形態又は意匠の制限に適合するものであること。この場合においては、条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しない。
注:勾配屋根とすることや塔屋を設けることの禁止が除外されたかに読める。


  (3) 【眺望景観創生条例関係】
 もともと、平成19年9月1日告示207号により、
 「条例第8条第1項各号に規定する別に定める標高、建築物等の形態及び意匠並びに建築物等の外壁及び屋根等の色彩の基準は、別表(い)欄の対象地ごとに条例第6条第1項により規定する同表(ろ)欄に掲げる区域に応じ、同表(は)欄に掲げるとおりとする。ただし、建築物等の形態及び意匠並びに建築物等の外壁及び屋根等の色彩の基準(以下「形態意匠基準」という。)にあっては、美観地区、美観形成地区、風致地区又は建造物修景地区内にある建築物等で、当該各地区において定められた形態意匠基準に適合し、かつ、市長が優れた眺望景観を阻害しないと認めるものについては、適用しないことができる。」
とされていた(このことは、平成23年3月28日付告示によっても変更なし。)。

 しかし、これまでは岡崎・南禅寺特別修景地域にあったことにより、条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準が適用されていた。

 ところが今回、岡崎公園地区特別修景地域 を新たに策定し、その上で岡崎文化・交流地区地区計画を策定したことから、条例第5条第1項第1号ウ(カ)、同項第2号イ(エ)及び同項第3号ウ(カ)に規定する基準を適用しなくてもよくなってしまった。

  (4) まとめ
以上の流れを見れば、京都市が京都会館第一ホールの建物フライを当初計画案どおりに建築するために、規制を外してまで強行しようとしている姿勢がよく看て取れる。

 市民の意見聴取が不十分
→ 一人地区計画では、近隣住民をはじめとする市民との意見調整の場が確保されない。

 歴史的な建物は、取り壊してしまったのでは後世に残せず、それ以後歴史的価値を紡いでいくことができなくなってしまう。
 → 京都市は、琵琶湖疏水の開削によって形成された岡崎地区の優れた景観を次の世代に継承することを目的として、同地区の文化財保護法に基づく重要文化的景観への選定を目指した調査検討事業を、平成22年度から実施している。重要文化的景観の指定と真っ向から矛盾する政策として、厳しく非難されなければならない。

以 上

■京都会館第一ホール解体問題に関するメモ-弁護士 玉村匡
渡辺・玉村法律事務所
2012-06-02 第3回緊急シンポジウム開催のご案内-「京都会館を大切にする会」
2012-05-17 京都会館第一ホールの改修及び岡崎地域の景観保全に関する意見書-「京都弁護士会」
2012-03-27 京都会館第1ホールの建替えに関する意見書-「京都会館の建替え問題を考える弁護士一同」
2011-10-21 岡崎の用途地域変更反対意見書-「京都市弁護士会」

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by 2011-kyoto | 2012-08-13 00:02 | 2012/08
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