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2012-11-04 「世界遺産条約40周年及び日本の条約批准20周年記念市民シンポジウム」アピール-「新建京都」
「世界遺産条約40周年及び日本の条約批准20周年記念市民シンポジウム」アピール

1972年11月、パリで開催された第17回会期ユネスコ総会において、世界遺産条約(正式名称「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)が採択されてから今年で40年を迎えます。また、日本政府がこの条約を批准してから20年を迎えます

我が国における世界遺産条約への加盟や各地の遺産登録の経過を見ると、その背景には、日本自然保護協会をはじめ、多くの市民の自主的な取り組みと運動があったことを見逃す事はできません。

例えば、1990(平成2)年10月、京都で、「古都・歴史都市 奈良・京都・鎌倉の歴史的遺産と景観を守る三都市民共同フォーラム」が開催され、そこで採択された「京都宣言1990」の中で、日本政府に対して、「世界遺産条約」を早期に批准するとともに、奈良・京都・鎌倉の三都を「世界遺産」として認め、その保全のために最大の努力をすることを求めています。

こうした取り組みのうねりに押されるように、日本は1992(平成4)年6月に125番目の条約締結国となり、これまで日本国内では、16件(文化遺産12件、自然遺産4件)が世界遺産に登録され、現在、「武家の古都・鎌倉」などが世界遺産登録に向けて推薦書を提出し、市民と行政が一体となって作業を進めているところです。

以上の経過から明らかなように、世界遺産条約が目的とする、人類の共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ遺産の保護・保全と、これらの遺産を将来の世代に伝達していくためには、市民の自主的、主体的な取り組みと運動が不可欠であり、それを抜きにして、世界遺産条約がその目的を達成し、実効を確保することはできないといっても過言ではありません。

私たちは、今回京都で開催される条約40周年を記念した国際会合(11月6日~8日)に先立って、この会合が市民に開かれたものとなることを願い、また市民の自主的な取り組みが不可欠であるという視点から、私たち市民の手で条約40周年と日本の批准20周年を記念して、本日、市民シンポジウムを開催いたしました。

本日のシンポジウムの議論を通して、国内外のさまざまな地域で、顕著な普遍的価値を持つ遺産の保全と、これを将来の世代に伝えるために、多くの人々が多様な取り組みと努力を積み重ねていること、また、その一方で、こうしたかけがえのない遺産が開発などによる破壊の危機にさらされていることが明らかになりました。本日報告された広島県福山市の「鞆の浦」の埋め立て架橋計画は、その典型的事例であり、この計画を撤回させ、世界遺産に値するすぐれた景観を守り抜いた住民のねばり強い取り組みは高く評価されるべきものです。

こうした鞆の浦の事例に示されているように、現に世界遺産として登録されているか否かにかかわりなく、人類にとって顕著な普遍的価値を持つ遺産を保全し、これを将来の世代に伝えるうえで、市民・住民の取り組みは決定的に重要であり、こうした住民の意思と運動をよりどころとして、後世に伝えるべき遺産と景観の保全を図ることは、国と地方自治体の基本的な責務だといわなければなりません。

しかし、奈良や京都などでは、こうした遺産と景観の保全に逆行する動きが見られることが報告されています。例えば奈良では、(1)高速道路計画や (2)1300年祭の現状変更の放置 (3)国営公園整備事業の名による遺産破壊など、世界遺産登録後の遺産の保全と継承・活用等で、遺産そのものが危機におかれています。また京都では、岡崎公園の京都会館について、ユネスコの諮問機関であり世界遺産の登録審査を担当する国際記念物遺跡会議イコモスの「20世紀遺産に関する国際学術委員会」が京都市の建て替え計画に懸念を表明し、「遺産危機警告」の発令にも言及して、計画の再考を求めています。しかし、京都市はイコモスの警告を無視して、岡崎公園と疏水を含む東山のすぐれた景観の破壊につながる現在の計画を強行しようとしています。さらに京都市は、数年前に市内全域で建物の高さ規制を強化したにもかかわらず、最近地区計画などにより、高さ規制を緩和するなど景観保全に逆行する動きも始まっています。条約40周年を記念する最終の国際会合が開催される京都で、こうした遺産と景観の危機が進行していることはきわめて深刻です。

私たちは、あらためて、京都市をはじめ、国と関係する地方自治体に対して、後世に引き継ぐべき、かけがえのない遺産と景観の破壊を直ちに中止するよう強く求めるとともに、イコモスをはじめユネスコなどの国際機関が、これに対して必要な監視と適切な警告をすることを求めるものです。

私たちは、市民の自主的、主体的な取り組みと運動こそ、将来世代に引き継ぐべき遺産と景観を破壊の危機から救ううえで必要不可欠であることを確認し、そのために広範な世論と運動をつくりあげるために一層の努力を重ねる決意を表明するとともに、遺産と景観破壊にストップをかけるために、多くの市民の皆さんがともに力を合わせて運動の輪を広げられるよう心から訴えるものです。

2012(平成24)年11月4日

世界遺産条約40周年及び日本の条約批准20周年記念市民シンポジウム参加者一同

■「世界遺産条約40周年及び日本の条約批准20周年記念市民シンポジウム」アピール-「新建京都」

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by 2011-kyoto | 2012-11-04 00:01 | 2012/11
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