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2012-11-01 東北大の卒業設計は「京都会館」を参考に-小田和正-「建築ジャーナル11月号」
東北大の卒業設計は「京都会館」を参考に-小田和正
 京都会館の思い出というと、まずライブのステージで転んで、とても痛かったのを覚えてる(笑)。もうひとつは、東北大学の卒業設計のときに、「ホール」をテーマにした。イメージはかつてヤマハが経営していた「合歓の郷」(三重県志摩市)にあるような、自然豊かな場所に音楽ホールをメインに美術なども楽しめ、そこで合宿もできる複合型施設にしようと。敷地は伊豆を想定していたかな。多くの学生は卒業設計では集合住宅、病院、幼稚園などを選んでいたから、何か参考になる資料を探そうと『建築設計資料集成』を手に入れた。そこに京都会館の図面が掲載されていて、大ホール、小ホールの各情成や両ホルのつながりなど、見れば見るほどよくできていた。いざ、オリジナルのホールをつくろうと設計図を描いてみるのだけれど、どうしても京都会館に寄ってきて、そのたびにいじってみるのだけれど、いじるほどよくない設計になってくる。
 最近は音楽機材が発達して、「転がし」と呼ばれるモニタースピーカーを舞台に置かなくても、イヤホンから必要な音を聴くことができる。東京ドームのような巨大な空間でも音の反響を受けないので演奏しやすいし、MCでぼそぼそしゃべってもみんなに伝わる。音響と空間の大小はあまり影響しない。ただ、できるだけみんなと相対している場をつくりたいから、一生懸命花道をつくって、ステージから飛び出しているけど、みんなからは「小さなホールでやってほしい」と必ず言われるね。

東北に下宿して京都会館を意識しながら卒業設計に取り組んでいた頃は、まさかその数年後に京都会館で演奏している自分がいるとは思いもしなかった。また、先生に酷評された卒業設計が、『東北大学の卒業設計印年間のアーカイブス』として、同期の藤森(照信)と俺の2名が優秀作品に選ばれてマイクロ保存されていると聞いたとき、今さらじゃないけど、決着がついたという思いはある。
デビュー間もなくしてツアーが組まれ、各会場どこもが大ホールでコンサー卜を行っている若いミュージシャンと比べれば、とてもアナログだったけど、その一つ一つが自信につながっている。

 卒業設計に取り組んでいたとき、図面を書いていると、ここを端折ってはいけないというのが分かるじゃない。俺の中ではトイレと階段っていうのが面倒なんだけど、それを適当に済ましておくと、いずれその大事な部分を埋めなくちゃいけない。(京都会館のスケッチを見ながら)この一本の線はゼロから生まれて、プラスの方向にエネルギを出しているじゃない。音楽も同じなんだよ。雰囲気だけでつくっていると後で不具合が出るし、それに飽きちゃう。曲全体を支配する何かがないとね。

 丹下健三は建築家になっていなかったら、指揮者になりたかったと聞いたことがある。男のロマンとして、指揮者と映画監督と建築家は憧れの職業にあがるようだけど、俺は映画監督も経験あるし、指揮者は今と似たようなことだし、建築もかじった。3つの職業をかじった男はそうそういないかもね(笑)。

特集「京都会館を守りたい」-「建築ジャーナル2012年11月号」より
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■東北大の卒業設計は「京都会館」を参考に-小田和正-「建築ジャーナル11月号」
建築ジャーナル

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by 2011-kyoto | 2012-12-13 15:41 | 2012/11
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