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2011-04-01 建築文化の根底が揺らいでいる:松隈洋-「建築とまちづくり」
建築文化の根底が揺らいでいる
近代建築の保存問題が問いかけるもの

松隈洋:京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授

 2011年3月11日、突知、東日本を大震災と津波が襲った。日々刻々、テレビや新聞を通じて伝えられる未曾有の被害と今なお続く福島第一原子力発電所の深刻な事態の進行を前に、誰もが混乱し、不安を抱えて戸惑っている。復興への道筋もいまだ見えず、被災地では依然として12万人を超える人々が避難所での不自由な暮らしを余儀なくされたままだ。 

 そんな中、事前に予定されていた本号の特集テーマとはいえ、雨をしのぎ、安心して日常生活を送ることさえできない膨大な数の人々の姿を目の当たりにして、今ここで近代建築の保存問題を取り上げることに果たしてどのような意味を見つけることができるのだろうか。正直、筆が重い。というのも、大げさに言ってしまえば、震災前のこの国の営みのすべてが現実との回路を断たれ、その根本を問い直されていると思うからだ。もしそうだとするならば、今一度、近代建築--より話の性格に即して言い換えればモダニズム建築--に託されたものとは何か、そして、無造作に進むその取り壊しと、それを契機に提起される保存問題が何を私たちに問いかけているのか、を謙虚に見つめ直すことから始めなければいけないと思う。そこで、ここでは、筆者が見開きしてきた限られた範囲に過ぎないけれど、この聞の状況の変化と各地で起きている取り壊し保存問題などを紹介しながら、モダニズム建築が現代へと示唆する意味とその存在価値について考えてみたい。先回りして言ってしまえば、それは、モダニズム建築に初心として込められていた意志、人々のよりどころとなる日常の生活空間を築こう、という願いをあらためて共有することへとつながっている

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「建築とまちづくり」 No.397
特集:近代建築サバイバル 2011年4月号

■建築文化の根底が揺らいでいる:松隈洋-「建築とまちづくり」
「建築とまちづくり」

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