2013-02-19 建築は誰のものか-京都会館は問い続ける 松隈洋-「住宅建築2013年4月号」
建築は誰のものか-京都会館は問い続ける 松隈洋

 2012年12月、京都会館は、過半を占める第1ホールがすべて取り壊されて建築としての統一感を失い、その生命を絶たれた。これは、2011年6月に京都市が策定した再整備基本計画の基本方針、「多様な要望に応えるための舞台機能の向上」による増改築のために先行して行われた解体工事の結果である。しかし、基本方針には、「既存の建物価値の継承」とも謳われていた。はたして、半分以上を取り壊しても、建物の価値は継承できるのだろうか。常識的に考えて、この論理が成り立たないことは明らかだ。もしそれで良いのなら、私たちはなぜ建築の設計にこれほどの精力を注ぎ込むのだろう。また、基本方針が策定されるまでの間に、どのような議論が尽くされ、建物価値として何が特定されたのだろうか。実際には、何ら具体的には公表されていないし、専門家と市民を交えた開かれた議論もまったく行われていない。こうして、本来、喜びをもって迎えられるはずの文化施設にもかかわらず、模型すら一般公開されない状態が続いている。このような不透明なプロセスで健全な結果が生まれると誰が期待できるのだろう。建築の創造は手品ではなし。

 ヨーロッパには、「壊す時には、壊す前にその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ」という格言があるという。そこで、ここでは、京都会館がなぜ建てられたか、そこにどんな考え方が込められていたのか、を再確認したい。その上で、今回の取り壊し問題が何を意味するのか、について書き留めておきたい。先回りして言ってしまえば、問われているのは、ひとつの建築をめぐる単なる取り壊しの是非ではないと思う。建築は誰のものか、より良き環境はどのようなコミュニケーションによって守り育てることができるのか、そして、どうしたら私たちは私たちの時代の建築文化を共有し、次の世代へ引き継ぐことができるのか、という切実な問いへとつながっている。


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■建築は誰のものか-京都会館は問い続ける 松隈洋

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住宅建築 2013年 04月 号
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