人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2013-09-23 「神宮の森 美観壊す」 20年五輪 新国立競技場巨大すぎる-「東京新聞」
「神宮の森 美観壊す」 20年五輪 新国立競技場巨大すぎる 
2013年9月23日 朝刊

二〇二〇年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場をめぐり、世界的建築家の槇文彦さん(85)が計画の大幅な見直しを求める論文を発表した。新競技場は自然の美観が保存されている東京・明治神宮外苑の風致地区に立地する。槇さんは、現計画では巨大すぎて歴史のある景観を壊すと懸念。莫大(ばくだい)なコストがかかる恐れもあるのに、関連した情報が知らされていないと指摘する。  (森本智之)

 「新競技場は数字(延べ床面積)だけ大きくて、必要かどうか疑わしい機能が多い」

 槇さんが異議を唱える最大の理由は、新競技場の巨大さにある。先月、日本建築家協会の機関誌『JIAマガジン』に問題を指摘する論文を発表した。

 文部科学省所管の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)によると、「世界一のスタジアム」を目指した新競技場は、新宿区霞ケ丘町の現国立競技場を取り壊して建て替える予定だ。施設を大幅に拡充。開閉式の屋根を備え、観客席を五万四千席から八万席に増やすほか、スポーツ関連の商業施設や博物館・図書館などを加え、延べ床面積は五・六倍の二十九万平方メートルにふくらんだ。

 神宮外苑は崩御した明治天皇をたたえようと、内苑(ないえん)である明治神宮とともに整備され、一九二六(大正十五)年に完成。東京で初の風致地区に指定され、景観を守るため開発が規制されてきた。

 ところが、高いところで高さ七十メートルに達する巨大な競技場を建てるため、都は今年六月に高さ規制を緩和。十五メートルから七十五メートルへと五倍に緩めた。

 これに対し、槇さんは「外観上、新競技場は大部分がコンクリートの壁になる。これでは単なる土木加工物。歴史的に濃密な地域の美観を壊してしまう」と危惧。「景観を守るために作ったルールを自ら否定した」と、都を批判する。

 二十九万平方メートルの床面積は、昨年のロンドン五輪のメーンスタジアムと比べ約三倍の特大サイズ。しかし、敷地面積はロンドンの七割しかない。

 槇さんは、コストの問題も指摘する。

 国際基準では、五輪の主会場に使う競技場は観客席が六万人以上必要だ。だが槇さんによると、ロンドン五輪では八万席のうち六割以上は仮設だった。

 「全て本設にしなくても五輪はできる。終わった後、八万人もの観客席がどれだけ使われるのか。十七日間の祭典に最も魅力的な施設は次の五十年、百年後、都民にとって理想的とは限らない」

 試算したところ、観客席の一部を仮設にし、過剰な駐車スペースや余分な関連施設を減らすだけで、少なくとも数百億円のコストが削れるという。

 槇さんは「必要な情報が事前に十分に公開されず、国民が計画の是非を判断する機会が与えられていないことが問題」と指摘。有志の建築家らとシンポジウムを開いたり、要望書を提出したりすることを検討している。

 JSCの担当者は「各界の代表にお願いした有識者会議で、必要な意見は吸い上げている。計画は確定というわけではなく、必要なら見直す可能性はある」と話している。

<まき・ふみひこ> 東京都出身。東京大で故丹下健三氏に師事。米ハーバード大大学院修了。「モダニズム建築」の旗手として知られ、主な作品は東京・代官山の複合施設ヒルサイドテラス、幕張メッセ、名古屋大豊田講堂など。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を師の丹下氏に続き、日本人として2人目の受賞。イスラエルのウルフ賞や米建築家協会ゴールドメダルなど受賞多数。

<国立競技場の建て替え計画> 1958年に完成した現競技場は老朽化が進み、五輪会場の基準を満たしていない。2016年五輪の招致では晴海地区にメーンスタジアムを新設する計画だったが、交通アクセスの悪さなどが指摘され、現在地に建て替えることが決まった。新競技場には、VIP席・個室席(2万5000平方メートル)、スポーツ博物館・商業施設(計2万1000平方メートル)、地下駐車場(900台分)なども計画。15年秋の着工、19年春の完成を見込む。総工事費は少なくとも1300億円かかる見通し。

■「神宮の森 美観壊す」 20年五輪 新国立競技場巨大すぎる-「東京新聞」

2013-10-11 シンポジウム 「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」開催のお知らせ
2013-08-01 新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える:槇文彦-「JIA MAGAZIN vol295」
by 2011-kyoto | 2013-09-23 00:00 | 2013/09
<< 2013-09-23  ローム... 2013-09-22 旧ジョネ... >>